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制約の多い木造ピアノ室の防音リフォーム

この現場は、先行して複数のピアノ防音室の専門業者が提案書と見積書を出していた木造住宅(神奈川県)の一室です。現状は普通の洋間であり、特段の床補強もされていない約5帖弱の部屋です。

計画図(私に提案書)のように、設置予定のグランドピアノが既存のクローゼットの扉ギリギリの配置になり、空間的な余裕はなく、天井高も約2300と低く、通常の防音室の仕様で構築するとピアノが置けなくなります。

他の業者は、まるで申し合わせたかのような類似の提案で、「既存のクローゼットを柱ごと撤去する」「天井と床の防音構造は合わせて厚さ20センチ以上」「防音壁は厚さ18センチから20センチ」というものでした。

検証したところ、クローゼットを撤去しても、ピアノの配置は自由度が全く無く、掃除する隙間もないくらい狭くなる提案でした。

このため、施主(依頼者)が、このような条件下でも音響・防音設計および防音リフォームを可能とする専門業者をネットで探したそうです。

クローゼットの構造柱

クローゼットの柱は「二階の床を支える構造柱」と考え、私の提案では、この柱はそのまま残す計画です。提携先の建築士が後日、現場と竣工図をチェックしたところ、私の予想通り「構造柱は撤去できない」ということが判明しました。

他の専門業者の提案は、構造計算上も大きな問題であり、新築会社の10年保証も担保できない危険な計画だったのです。

私は他の現場で、リフォーム業者が勝手に物入れの構造柱を切断していた事例を知っており、ピアノ室を造る時に、構造柱と二階の床梁を支える新規の梁材を増設することを施主に提案して補強したことがあります。

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構造的・空間的制約を熟慮した防音計画

計画図の現場は、木造軸組在来工法であり、ピアノ教室として来年の開業を目指しています。

施主は、焦る気持ちを抑えながら、他の専門業者を探すという安全策を取られたのは良かったと思います。

木造を余り知らないリフォーム業者や防音会社は、既存構造を無理な改造で防音室にしようとすることが多く、部屋を無駄に非常に狭くする防音設計・施工をします。

最終的に、狭い空間でも最大限に有効活用できる、構造的な安全性を重視した私の防音計画が支持されました。クローゼットの扉は撤去して内部にPCデスク・棚を作るオプション提案も付加しました。

床は、既存の下地が緩んでいる箇所をビスで締め直し、さらに重ねて構造用合板で補強する。複数の防音材を敷いて、最後に施主様がDIYでタイルカーペットを敷くことで、床対策(固体伝播音の減衰など)を薄くしながら経費を節約する計画としました。

防音リフォームは、11月頃までに完成する予定で、現在調整中です。

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