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防音設計業務の課題(主に木造)

約28年間(会社勤め時代を含む)の防音設計業務の中で、難しかった事の一つは、防音相談者のレベル(誠実さ・考え方等)でした。

まず、業界の事情を知らない一般の相談者(施主など)は、専門業者を実績ではなく知名度で評価すること、そしてショールームなど事業所の業態で決める人が多いことが、私のような自営業者の大きな壁でした。

それを乗り越えてきたのが、自分の運営するウェブサイトに掲載している契約者の生の声と実例の解説でした。そして、セカンドオピニオンとしての相談業務に力を入れながら、防音設計の理論を粘り強く発信して、誠実な依頼者が現れるのを待ちました。

独立開業してからの防音設計業務は、今年の夏で18年以上が経過します。※準備期間中の無料相談を含めると約19年になります。

防音設計の専門家として重要なもの

最も重要なことは、真剣に相談者の悩みや課題に向き合う姿勢だったと思います。

防音職人のホームサイトのトップページには、次のような理念を掲げています。

「頭を絞っても知恵が出てこなくなったら事業を辞める。」「製品メーカーの自己申告を鵜呑みにして言い訳をしない。」「現場のフィードバック、体験を反映させる、生きた防音設計・対策を目指す。」この3つが防音職人の決意・屋台骨です。

人間の技術に完璧はありません。ですが、リスクを回避したり、費用対効果を高めることは努力することによって可能だと思います。

現在、19年前の初心に戻って、サブサイト(防音情報)のトップページや資料ページを作り直そうとしています。

製品メーカーの自己申告データと現場が乖離する要因

開業当初は、市販品の防音材のデータと現場での防音効果が乖離する現象が理解できずに悩みました。

そして、自宅マンションを実験台にして、原因を研究しました。その結果、防音材の試験データは、実際の現場と拘束状況(固定の方法や試験体の大きさなど)が異なることによって、効果が大きく左右されることに気づきました。

メーカーのデータは、小さな試験体をつなぎ目のない状況で、4辺を簡易的に固定するだけで音響測定をしているため、固定方法の異なる大きな区画(必ず材のつなぎ目が生じる)での防音施工とは条件が違うのです。

また、防音材を面的に施工する構造体の剛性や吸音性などによっても、相乗効果が異なるため、単一の試験体評価だけでは、防音設計を構築すること自体に無理があることを経験しました。

これが実務経験の少ない又は殆どない建築士には理解できない重要事項になります。もちろん、製品メーカー担当者自身が理解できないという事情もあります。

上記のサブサイトを作り直そうとしている理由が、ここにあります。古い遮音設計マニュアルやメーカーカタログなどをトレースしても仕方ないので、自分のストックしている実務経験と内部資料を中心に概要を整理することにしました。わずか5・6ページのコンテンツでも、いつ完成するかは分かりません。

契約案件の作業に追われながら、少しずつ下書きを進めていきます。

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