見出し画像

木造防音では計算式至上主義は要注意

木造住宅や木造音楽室などにおいて、簡易的な計算式を持ち出して防音設計をする専門業者が多いのですが、実際の現場においては、計算式や市販の防音材のメーカー自己申告データ通りには防音効果は出ません。

それは、透過損失と質量則およびメーカーの実験値のみで計算するからです。計算式モデルや実験値(測定室)と現場と異なる構造・特性であれば、当然同じ防音効果は期待できません。

また、従来型の古い計算式は、構造体を構成する空気層や材料の特性などの要因を考慮しておらず、硬質な石膏ボード・パネルなど遮音材の面密度のみで評価します。さらに、メーカーの実験データは実際の現場の区画より小さく、材料の拘束条件も違います。小さな試験体では、実物大の木造住宅や木造音楽室における工法や空気層・吸音層および下地構造材の剛性・制振性・材料の特性を無視しています。

木造の防音設計は現場で施工前後の音測定で分析する必要がある

木造はツーバイ工法と軸組在来工法では、構造体の共振や音響・吸音性などが異なります。空気音と固体音の遮音効果が異なるのです。

このため、工法別に音測定データを比較する必要があります。また、内部の吸音断熱材や空気層の深さ・奥行き、下地構造材の工法などの条件が異なれば、防音効果も違ってきます。

木造はコンクリートや鉄骨と違って、吸音性のある素材で出来ています。これが重要です。基本的に木造軸組在来工法は柔構造です。この特徴を台無しにするような工法は、防音効果だけでなく音楽室としての音響にマイナスとなります。

そして、測定データと人間の耳で体感した状況をセットで分析することが望まれます。単純に遮音性能の数値だけでは評価できません。特に音楽室では、音響が重要であり、狭い部屋ほど、遮音にシフトした施工を行うと、音楽室としての機能が損なわれます。広い部屋とは異なる音響・防音設計が要求されます。

なので、木造は非常に奥深く難易度の高い建物なのです。遮音・制振・吸音に加えて、固体音の絶縁・減衰効果の仕組みも必要です。

木造防音は経験則と防音材の施工要領が重要

木造防音は、机上の理論を現場の効果など実践経験で補正する必要があります。合板一枚を取り上げても、針葉樹と広葉樹では吸音性が異なります。構造用合板とラワン合板では剛性補強による制振効果も違います。

防音工事に使用する防音材は、同じ製品を重ねても相乗効果は小さく、複数の特性を持った製品を設計仕様に基づいて併用することや、一般的な建築材と複合化することが必要です。

さらに、防音材の適正な施工要領によって、想定される遮音効果が担保されますので、施工要領を無視すると防音効果は小さくなります。

壁や床の構造体・防音材を含めた材料の納まりなど詳細な取り合い部の施工要領も重要です。これは共振を抑えたり、音漏れなど遮音欠損を出来るだけ小さくする工夫なのです。

新築の木造住宅や木造の音楽防音室を計画あるいはリフォームされるかたは、以上の留意点を念頭に入れて専門家・専門業者を探してください。

建築士のかたは、木造の防音設計が得意な、実績のある専門業者に依頼されることをお勧めします。木造とコンクリート構造では防音設計の仕様や施工要領が異なります。同じではないのです。「餅は餅屋に限る」というのは、どんな分野でも共通した鉄則です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?