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コクって何よ?

 普段飲んでいる一杯分に分けられたインスタントコーヒーが切れたときに、新しいのが届くまで近所でディスカウントされたインスタントコーヒで繋ごうと話をしていた翌日、カミさんに「N社Gブレンド コク深め」をポンと渡された。

 私の母は甘い物好きである。食べすぎて入れ歯になるぐらい甘い物好きであった。ご飯に気の抜けたサイダーをかけて食べるなんてことも平気。というか好物。調子のいいときは砂糖も乗せる。法事などで封を切って気が抜けた余った炭酸ジュースを捨てると叱られるという厳しい躾をされて育った私である。何かにつけて甘いものを食べさせられる環境の中で高校のときに被せた銀歯は今なお健在。
 チョコレートは焙煎した苦いカカオを甘くし見事なバランスで世の人々を虜にしましたが、苦味+甘み=濃い甘味に気がついた母は家族でTVの映画を見る際には必ずと言っていいほど甘めのコーヒーを準備した。それまでは安い粉の大瓶の内側にコーヒーが固形化した程度の使用量から固形化する前に使い切るほどに消費は増えた。
 あるとき、Gブレンドなるインスタントコーヒーを購入してきた母。どうしたの?高いよコレ?という子供の心配を他所に甘いものには注ぎ込む姿勢を崩さない母であった。TVのCMでもお馴染みだ。頭の中に「ダバダ~♪」が流れる。そして一口飲んで驚く。今までとぜんぜん違う香りが鼻腔に広がる。さすがGブレンド。伊達ではないと小学生ながらに思った。それから高校卒業までコーヒーと言えばGブレンドな我が家であった。

 Gブレンドの英才教育を受けたと言っても過言でない自分の目の前に置かれた「コク深め」を見て思った。コクってなんだ?と。
 味の表現は感覚的なものだから正しく伝わるかどうか怪しいものである。「~の宝石箱やで~!」なんて想像もできない。人によって下地が違いすぎる。「まったり」ってなんやねん。ワインのソムリエさんクラスになると共通語としての香り表現が存在するようだが、一介のど素人にはわけがわからない。酒飲まないけど。
 味覚+臭覚+記憶+プラシーボ(知識による思い込み)の総合的な判断で決定されると思っている「味」というものの表現において「コク」とはなんぞや?と思ってしまった。思ってしまったから仕方がない。開封して確かめるしかない。幸いなことにGブレンドの味は体が覚えている。この新しい「コク深め」という存在と、記憶の味との比較によって「コク」なる存在が明らかになるであろう。

 高校時代に色々試して自分の中で美味しいと思い繰り返し飲んだ濃さ・甘さで作ってみる。カミさんに言わせると自分の作るコーヒーは濃すぎるそうだ。薄いアメリカンが良いと言われるけど、いや、アメリカのコーヒーって普通に濃いよ。エスプレッソやトルココーヒー等々欧州の濃いめのコーヒーに比べたら薄いってレベルじゃないの?と心で思いつつ華麗にスルーする大人の対応で家庭の平和を構築する。小さいことの積み重ねだよ。爆発した女性と泣く子には敵わない。
 おっと話がズレた。早速飲んでみたそれは体感的にやや深入りであった。まぁコーヒーの味の要素って限られていますし、Gブレンドを冠しているから香りと酸味は大きく変えることは難しいであろうと予想していたものの、出てきた答えは深煎りである。アイスコーヒーのコレでもか!という深煎りほどではなく、ほんの少して感じ。香りも少し苦味寄り。コーヒーにおいては深煎り=コク深いなのだろうか。いやひょっとして全体的に圧縮成分多め=味が濃いという要素もあるかもしれない。自分の中で料理で「コクがある」は大雑把にいえば「あっさりの逆」であっさり=薄めならばコク=濃いめなのではとも推し量れる。塩分量は美味しいと思える程度で、素材成分の圧縮率が高い=濃いほどコクが深いという表現になるなら、このコーヒーのコクもこれまでの成分に何かしらの成分(豆)が加えられ更に複雑な味わいを楽しんでもらおうと「コク深め」が添えられたのかもしれない。

 冗談ではなくコク=濃くなのか?

 自分ではコクが深いという表現を他人に向けて使った記憶がない。だって意味分かんないもん。出汁が効いているはカミさんとの意思疎通に役立っている。これもある意味コクなんだろうか。

 困ったときはググれと某掲示板で誰かが言っていたのでWikiってみたら
「コクに対する明確な定義はないが、甘味・うま味・苦味・塩味・酸味の五基本味の総和、さらに香りや食感などが加わり、濃厚感や広がり、複雑さなどを併せ持つと考えられている。「おいしい」と感じられる食品の中にも、果実などコク味の少ないものもあり、「おいしさ」とコク味は必ずしも同義ではない。主観的評価である「おいしさ」に対し、「コク」は客観的評価に基づく数値化が可能である。一般に好ましい感覚として捉えられ、転じて「コクのある演技」「人生のコクを感じる」などといった使い方もされる。」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%AF%E5%91%B3
とある。

 すげぇな、Wikipediaに書いた人。他の人に説明できる文章を書ける人は尊敬の対象。知識が豊富でないとツッコミをプロテクトできないもんね。でもって、これを読んでもやっぱり感覚の説明は読み手によって千差万別だから説明しきれないってことなんだろうなぁ。

 ということで、今回の検証によってN社Gブレンド コク深めは自分にとって少し深入りした豆がブレンドされたものとして捉えられた。冷やして飲むのも良いかと。むしろそっち寄りかな?

 自分はオリジナルが好きだけど。 <ぉぃ

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