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「キュビスム展—美の革命」 展覧会レポート

京都市京セラ美術館で2024年7月7日まで開催される「キュビスム展—美の革命」。
パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックをはじめとするキュビスムの画家たちは、それまでの絵画の伝統や規範から逸脱した作品を多数制作し、芸術界に新たな風を吹かせることになった。

今回は「キュビスム展—美の革命」で個人的に印象に残った作品をいくつか紹介し、キュビスムとはどのような表現であったのかについて考察していこうと思う。




立体的、多面的な視点


パブロ・ピカソ《裸婦》1909、油彩、カンヴァス


身体がいくつもの部分に分解され、幾何学的に構成されていることが分かる。
女性特有の身体的な丸みや肉感が完全に立体(キューブ)に還元されている。
色味からも、金属やアルミのような物質感を感じさせ、どこか機械的な印象を持った。

これまでの絵画で「裸婦」が描かれる場合、そのほとんどの女性は「柔らかく丸みのある肉付き」、「透き通るような白肌」、「官能さ」を持ち合わせていた。
しかしピカソの描く「裸婦」にはこれらの要素は全く含まれていない。物体をキューブに還元することで、男女の個体差を曖昧にし、人間をサイボーグ化させているかのようだった。

キュビスムと未来派

ジャン・メッツァンジェ《自転車乗り》、1911-12、油彩、砂、コラージュ キャンバス、徳島県立近代美術館

*写真撮影不可(画像は徳島県立近代美術館ホームページより引用)


ジャン・メッツァンジェ《自転車乗り》からは、キュビスムと同時期にイタリアで発達した未来派の特色が見られる。未来派は、機械文明やスピードを称賛したのが特徴で、《自転車乗り》からも自転車の車輪の回転や疾走感が伝わってくる。
キュビスム的な造形と未来派の文明の発達によるスピードへの賛美が融合した作品であることがいえる。
ロシアではフランスのキュビスムとイタリアの未来派が同時期に紹介され、それが「立体未来主義」へと展開する。まさに、キュビスム以降の絵画にもキュビスムから受けた影響が分かる作品であるといえるだろう。

躍動する身体

レイモン・デュシャン=ヴィヨン《恋人たちⅢ》1913、石膏レリーフ


マルセル・デュシャンを弟に持つレイモン・デュシャン=ヴィヨンによる《恋人たち》シリーズの作品では、男女の身体を立体的に捉え、色も白一色と抽象的でありながらも、伸び伸びとした身体の動きや恋人たちの情熱的で官能的な愛のすがたが見られる作品だ。
彫刻作品であるため、立体に自然な影がつき、キュビスムの多面的視点をもたらすという特徴に、より説得力が出ている。

さいごに

今回の展覧会はピカソやブラックをはじめとするキュビスム画家たちの表現方法、そしてキュビスムがキュビスム以降の芸術にどのような影響を与えていったのかについて理解が深まる展覧会であった。会期は7月7日まで。
本レポートでは作品のごく一部しか紹介していないので、キュビスムの革新的な表現の全容をぜひ、実際に確かめに行ってみてほしい。




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