フヴェルゲルミル伝承記 -1.4.3「街の下、川の上、狭間で蠢くスラム街」(前編)
はじめに
ヤベェ、当初のプロットに無い展開だw
という事で、水上都市編、ユミリアサイドの話です。
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では、どうぞ。
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第1章 第4話
第3節「街の下、川の上、狭間で蠢くスラム街」(前編)
アルフ達がそんなこんなで宿で騒いでいた頃、ユミリアとナナは露天の店で串焼きを買っていた。
「へぇ、たっかいなぁ」
一本2エレもする串焼きを口にくわえながら言うユミリア。
串焼きは1エレで4本は買えるので、実に8倍の額だ。
「うん、こんなの買えないよ」
ナナがユミリアに買ってもらった串焼きを持ってきょろきょろ見回す。
「仕方ないさ。いざとなりゃ奢って貰えりゃいい」
「おごってもらう?」
ユミリアがちらと後ろの路地裏に視線をやる。
黒い影が引っ込んだのが見えた。誰かに付け狙われているらしい。
「お、お姉ちゃん……」
ナナはユミリアに引っ付く。
それを見たユミリアはナナの頭を撫でる。
「こういう時は楽しむモンだぞ、坊」
「ふつう気付かないフリをするとかじゃないの?」
「んな事してどうするよ。どうせ売られるケンカだ。存分に買ってやろうぜ」
「ケンカも高くつくんじゃない」
「それも一興」
「わわ、ちょっと待って……!!」
意気揚々と路地裏に入っていくユミリア。
一人だと心細いので何だかんだでナナも付いていく。
袋小路に入ると、ボロ布を被った男達の集団が取り囲んで来た。
手にはこれまた小汚いナイフをこれみよがしに見せつけている。
「お、お姉ちゃん」
「ひーふーみー……何だたった5人しかいないのか?随分寂しいヤツらだ。もっとお友達増やせよな?」
「い、命が惜しければ金を置いていけ!」
「あ、あの、お姉ちゃんにその発言は……」
「うるせぇ!さっさとしやがれ!ぶっ殺すぞ!!」
「命? イノチ、いのち、ねぇ……惜しいのはどっちかなぁ?」
「あ、スイッチは言ったかも……」
もはや諦めムードのナナであった。
ナナもナナで何だかんだ時折見せるユミリアの戦闘狂の表情には見慣れてきていたし、特にロキの洞窟で彼女の表情を見た時は何か悟ったような気になったものだ。
「な、何だと!?」
「ヒヒ、そんなオンボロかぶってさぁ、弱弱しそうな『女の子』でも狙えばお金が手に入るし、人質にでもできりゃ入れ食い状態。あわよくば慰み者にでもできるなぁとか思っちゃったかなぁ?」
(お姉ちゃん。その格好、普通だとドン引きだし、むしろ近寄りづらいと思うんだけど……)
「う、うるせぇ、大体オンボロなのはアンタも同じだろ!」
(あ、つっこんだ)
「そりゃ、そうだ。だからさぁ、さっさと来いよ。オンボロ同士じっくりと楽しもうじゃないか。素手で遊んでやるからさぁ……それとももっと縛りプレイした方がいいかい?」
くいくいと挑発するユミリア。
「このアマ!ヤっちまえ!!」
「どっちの意味かなぁ!?」
ユミリアがナナの襟首を引っ掴む。
「えっ、ちょっ」
「ほら、ちょっと退避してろ!」
ナナを頭上高くに放り投げる。
「えええええぇぇぇぇぇぇ!!!!?!!?!」
男はナイフを構えてユミリアに突っ込んだ。
戦いのシロウト感丸出しである。
ユミリアは右足を突き出し、正面から男の腹に蹴りが炸裂する。
男のナイフはかすりもせず、手から零れ落ちた。
「がぁ!?」
そのまま地に着いた左足を軸に右方に回転。右足裏を使って男を後方に蹴り飛ばす。
後ろで待機していた男は完全に油断していたようで、ユミリアに飛ばされた男とモロに衝突する。
ユミリアは男を蹴り飛ばした勢いを利用し、左に跳躍。壁を蹴って男に突撃する。
まるでピンボールのような動きだ。
勢いのまま三人目の男にエルボー。
まるで死神が鎌を振り下ろすような軌道。
一瞬で呼吸と意識を断たれ地面に倒れる。
隣の男が怯んだ隙に頭を掴み、叩きつけるように下方に力を込める。
力に押され頭が低くなった所を思いっきり踏みつけての跳躍。
落ちてくるナナをキャッチした。
蹴飛ばされた男は顔面を地面に強打し失神。
ユミリアはナナの体重を加え加速して着地。
着地点は五人目の男。
二人分の体重を乗せた蹴りが彼の脳を揺さぶると男はそのまま倒れた。
一瞬の出来事だった。
「全く、手ごたえの無い……」
「お姉ちゃん……」
ナナが今まで見たことない表情でユミリアを睨んでいる。
彼女が投げ飛ばされたのは二度目なのだが、もうすでに慣れたのであろうか。
子供の適応能力とは恐ろしいものである。
「さーて、行こうぜ、坊」
ユミリアはそんな事気にせず、ナナの手を引き路地裏を出ようとした。
ボロマントの男達がゆらりと立ち上がる。
「お姉ちゃん!」
「へぇ、まだ起き上がる力があるのかい?」
意外にタフな男達。
ユミリアは少し見直した。
「へへ、ここまでコケにしてくれたんだ。黙って返すワケにはいかねぇ……」
「第二ラウンドと行くかい?」
少し、楽しくなってきた、いや、興味が出てきたユミリア。
指をコキコキと鳴らし、挑発する。
ユミリアの言葉を聞いた男達はマントを放り捨てた。
そして、迅速に、すばやく、その身をかがめ、姿勢を低く、大地に手を付いた。
「「「「「 弟子にしてください、姐御!!!!! 」」」」」
「は?」
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