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フヴェルゲルミル伝承記 -1.3.8「一夜明け次の町へ」(後編)

はじめに

 今回で同人ゲーム体験(試作)版の方で出していた範囲は終了です。
 次回からは未知の領域w

 明日はその前に、同人ゲーム版の方について少し語るかもです。

 では、どうぞ。

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第1章 第3話
第8節「一夜明け次の町へ」(後編)

 翌朝


 アルフとユミリアが目覚めると、イルムガルトはすでに出発の準備を整えていた。

「ああ、悪い。一晩中任せちまって」

「別にいいわ」

「ってかあのメシが無ければボクらも見張り手伝えたんじゃないか?」

 ユミリアの指摘も最もである。
 二人は眠っていたというより戦闘の後の罰ゲーム《かんづめ》で、精根気尽き果てて気絶していたようなものだ。


「……で、体調はどう?」

「って、あんな後で元気なワケ……って、アレ?」


 アルフは腕を回し、足を上げ、昨日……というより生き返ってからのダルさがだいぶ軽減されているように感じた。
 ユミリアやナナもだいぶ調子が良さそうだ。


「え、ああ、確かに問題無い……というより、動かしづらかった体が相当楽になったような……」

「なら良かった」

「あの缶詰、ニシンとドリアンの他にも何か盛ってんじゃないか?」

「秘密」

「あっそ」

「そんな事より、さっさと行きましょ。もうすぐ町に付くわ」

「町?」

「水上都市ゲムルよ。」

「ああ、あそこか。随分寂れたと聞くが」

「ええ、かなりスラムが拡大してるわ。近々私達が介入する予定もあるし、できれば近寄りたくなかったのだけれど……」

「『私達』って……」

「ええ、『セティ派』の介入よ」

 フォルナール教会その一部門セティ派。

 彼女の教会『フォルナール教会』とは、かつて魔王を倒し、人類を救った『勇者フォルナール』を起源とする教会。
 彼らが信奉するのは『神々』ではなく『力』であり、その主目的は『魔』の脅威から『人類』を守る事である。

 その為か、教会の権威は絶大で、この世界のほぼ全ての国家を掌握している。

 教会には大きく二つの派閥、いや無派閥を含めれば三つの派閥がある。
 無派閥は教会の大半が所属している一般信徒。

 そして、次に多いのが『ニル派求道宣教師』と呼ばれる派閥。
 人々に教会の教えや技術を広め、また新たな技術を探求し研究開発する事を活動目的としている。

 最後に、イルムガルトが束ねる異端審問集団――正式名称『セティ派戒律巡教師』。
 数こそ二つの派閥に比べ圧倒的に劣っているが、教会の権威を体現したような集団で、『異端審問』をはじめ、捜査権と裁判権を各国に対して独自で行使できる。
(その分、教会内で最も厳しい戒律を課される派閥でもある)

「アンタらが介入するレベルで、治安が悪いのか?」

「そりゃもう。特に今の領主は酷いものらしいわ。無駄に重税を課すわ、変な自治法を作るわでやりたい放題。古い貴族の出だから帝国も手を焼いてるみたい」

「でも、いくらなんでも教会はそんな理由じゃ動かないだろ?」

 国家に対し、捜査権や裁判権を持つといっても、それは、それが教会の教義に抵触する場合。
 すなわち、そこに『魔』が関わるかどうかという事である。

「ええ、あくまで私達の仕事……『退魔』に影響が無い範囲ならね」

「って事は影響が出てるって事か?」

「そういう事」

 イルムガルトは目を伏せて応える。
 心なしどす黒いオーラが漂っている気がする。

「折角だし、私が……」

 などと物騒な事を呟いている。

「と、とにかく街に着いたら必要なものだけ買ってさっさとおさらばしようぜ」

「えー、折角だから楽しもうぜ。路地裏とか」

「お前は何処のアウトローだ!?」

「ここの」

 ドヤ顔で答えるユミリア

「くそっ、コイツに常識を語るのが間違いだった!」

「アナタも人の事言えないわよ」

「くっ……!」

(……ていうよりここにいる人達って、みんな常識はずれだよね?)

と、ナナが珍しく呆れた目で三人を見ていた。

「ほら行くぞ、坊」

「あ、うん」

 何だかんだで慌しいここの人達といると、おちおち落ち込んでいる暇も無いなぁと思うナナだった。

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