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私の中の柔らかい場所 7

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軽くシャワーを浴びて夕食を食べた。
はじめに先日も食べた様なモロッコ風サラダが出てきた。
程なくして、お馴染みのタジン鍋が出て来た。
他のツーリストグループに比べたら一回り小さな鍋で出てきたが、一人で食べるのは寂しい。

離れた所でモハメドがリヤドのスタッフと話していた。

私と目が合うとモハメドは近づいてきた。

明日はお昼にスークに行って、お昼はベルベルピザを食べる。

夕方から砂漠のキャンプだと伝えてきた。


私は思い切って、一人で夕食はちょっと寂しくて
もし良ければ一緒にいてくれない??

とモハメドに尋ねてみた。

数秒間を置いてからOk、ちょっと待ってと言って

リヤドのスタッフらしき男の子に何かを話しに言った。 


しばらくして戻ってきて私の目の前にモハメドが座った。

こうして見ると本当に綺麗な顔をしている。

少し浅黒い肌は滑らかで、触るとスベスベしていて気持ち良さそうだ。

色素の薄い茶色の瞳は、じっと見ていたらまさしく吸い込まれそうなのだ。

細身の端正な佇まいでこちらを見て微笑んだ。

そんな自分の気持ちを見透かされない様に

私これ食べきれないから、、、
良かったら食べて。

まだ殆ど手をつけていない肉団子と卵のタジン鍋と、沢山余ったパンを指差した。

サンキュー

モハメドは綺麗な指で硬いパンを掴みタジン鍋のスープをすくった。


アフリカ人、しかもモロッコ人とは日本では中々触れ合う機会も無くて、一挙一動を目で追ってしまう。

私も真似して硬いパンをちぎってタジン鍋のスープをすくって食べた。


モロッコは初めて?
他に何処の国に旅行に行った??

何ヵ国行っただろうか

殆どひとり旅だが、10数ヵ国は行っている。

それぞれお互いの事を尋ねながら、

取り留めのない話しをした。

彼は14歳で働きはじめたこと

学校には行った事が無いこと

日本に住む私達は学校に行くのが当たり前で、でも学校に行く事も時に面倒に感じたりもする


日本人はなんて恵まれているんだろう、そして贅沢なんだろうと感じた。


私達日本人には当たり前で、
モロッコでは当たり前では無い事がある。


しかし恵まれているからこその悩みもある。


私達は実は悩まなくていい事で悩んでいるのかも。

衣食住が恵まれていると、感じれない幸せがあるのかもしれない。

私達は取り留めのない事を話した。

彼の兄弟は6人いる事

リッサニという街に住んでいる事

そのうちリヤドの若い男性スタッフ達がアフリカン太鼓を出してきて、太鼓の演奏がはじまった。

さすが彼らの叩く様子はとてもパワフルだ。


アフリカ陣はリズム感といい、パッションといい生来持ち合わせているんだろう。

そのうちスタッフの若い子が踊りましょうと私に手を差し出した。


少し躊躇してモハメドの方を見たらニコニコしながらレッツダンス!!と言い身体を揺すってみせた。


それならあなたも一緒に踊ろうよ!
と思わず私もモハメドに手を差し出した。


少し躊躇しながら軽くわたしの手に触れて、モハメドも席を立ち一緒にダンスの輪の中に入った。


ヨーロッパ系のツーリスト達が何の恥じらいも無くノリ良く踊っていた。

彼らの様にノリ良くかっこよくは踊れないのだが、見様見真似で踊ってみた。


リヤドの若いスタッフの男の子達も、モハメドもリズムに合わせて格好良く踊っている。


流石アフリカ人はリズム感もいいし、身体能力も高くてキレッキレの踊りである。

私も全身を使いながら、できる限りのカッコ良いダンスを踊った。

しばらく踊ると疲れてきて、踊りの輪から抜けて椅子に座った。

モハメドもしばらくしてこちらに気づき椅子に座った。

しばらく踊っている人達を2人で見ていた。


現実だか夢だか分からない様な、時空の狭間に迷い込んだ様な時間だった。


演奏が鳴り止むと、明日の迎えの時間を告げてモハメドは去っていった。


何気ない時間だったが、ハートにじんわりとした暖かさを感じながら自分の泊まる部屋に向かった。

その晩は今までの緊張感が解けた様にグッスリと眠る事ができた。


翌日起きると、プールサイトで爽やかなブレックファーストを終えてからスークに向かった。



 








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