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私の中の柔らかい場所 9

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砂丘の砂の上をもう一度キャメルマンに脚を引っ張られながら滑り落ちた。
楽しんでるか?
と聞かれて
勿論楽しい!
と答えた。


10秒程沈黙の時間が過ぎると、
キャメルマンはマッサージは好きか?
ベルベルマッサージというのがあるんだけど、やってあげようか?
と尋ねてきた。


砂丘を滑り落ちて私達が今いる場所は、
盆地の様に窪んで

人目につかない場所だった。


少し危ないかな、、、
と思いながら、疲れているのと好奇心でお願いしてしまった。


砂の上に仰向けに寝そべった形で
ふくらはぎを丁寧に揉み解された。


その手は段々上に上がっていき太もも辺りをほぐし始めた。

適度に力強く、大きな手で解されるのは心地良かった。

それに若い外国人男性に触れられていると思うだけで、少し心臓の鼓動が速くなった。


しかししばらくして、
案の定鼠蹊部辺りに手に触れ始めた。

あっこれは流石にマズイと思い、


ノーノー!!
と起き上がって手を制した。


素直にキャメルマンはマッサージを辞めた。


あぁやはり危なかったか、、、


好奇心に勝てずに、マッサージを頼んでしまった自分はとても滑稽に思えた。


2人とも無言で砂丘を登っていった。

停めてあったラクダが待ち切れなかったのか少し離れた場所を歩いていたので、キャメルマンが走ってラクダを連れ戻しに行った。


先程のことで少し気まずさを感じていたが、彼は何も気にしていない様にラクダをしゃがませて私をラクダの背に乗せてから歩きはじめた。


撮りたい所で写真を撮ってあげるから、声を掛けて。


私一人と言う事もあり、沢山の写真を撮って貰った。


今晩キャンプするテントまでラクダの背に揺られながら到着した。

モハメドがニコニコしながら、ラクダライドはどうだった?と尋ねてきた。


私は少し大袈裟なつくり笑いを浮かべながら、最高だったよ!
と返答した。

先程あった事が悟られ無い様に、敢えて陽気に明るく振る舞った。


この後、砂漠のキャンプでタジン鍋が出るそうだ。

キャンプに荷物を置きに行くと、中は快適で広くベッドが置いてあった。


横たわると簡易ベッドでは無くて、寝心地良いベッドであった。


疲れが溜まっているのか、少しウトウトしてしまった。


さっきの砂丘の谷での出来事を思い出しながら、ふと日本の今までの生活を思い巡らしてみた。


何だか遠い昔の様に感じて、日本で暮らしていた生活は朧げにしか思い出せない。

随分些細な事で悩んでいたな、と感じた。


たとえ何年付き合おうと私を不愉快にさせる男なんて要らない。

その時点でバッサリと切ればいいだけなのだ。

そこに感情や情けなんてエネルギーを投入する必要は無いのだ。


自分の心地良い方に進めばいいのだ。

いちいち修行の様につまらない所に留まらなくていいのだ。


そう考えながら、暖かなテントの中で微睡んでいた。


1時間程経ったのだろうか

外で私を呼ぶ声が聞こえた。

夕食が出来あがった様である。


大広間の様なキャンプに行くと、湯気のたったタジン鍋と山盛りのフルーツ、パンが置いてあった。


蓋を開けて、チキンのタジン鍋のスープをパンですくった。


スープの淡白な味が、胃に染み込んだ。
このテントにはツーリストは私だけで、モハメドも私より少し離れて食卓に座っていた。
やはり私一人ではこのタジン鍋はとても食べきれないので、モハメドにも食べて貰うことにした。


タジン鍋のチキンを切り分けて
頑張って食べたが、せいぜい出された料理の三分の一位しか食べられなかった。


ミントティーを飲みながら、モハメドの食べる様子をじっと見ていた。

私の視線に気づいて微笑むモハメドの薄茶色の瞳はとても美しく、飽きずにいつまでも見てしまいそうだった。


しばらくそんな時間を過ごしていると、外に来ないかと先程のキャメルマンが呼びに来た。


キャンプファイヤーを囲みながら私とモハメド、キャメルマンが座った。

夕方の件があったので、何だかドキドキした。

少しだけときめいているモハメドがいるのに、他の男に身体を触らせて心地良くなった自分に罪悪感を感じた。


チラリとキャメルマンを見ると、モハメドと現地のタマジクト語で話している。


程なくして、モロッコの打楽器のトバイラとタリジャよる賑やかな演奏がはじまった。

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