私の中の柔らかい場所 10
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見渡す限り180度砂漠の中で、神秘的な炎に照らされながら打ち鳴らされる太鼓の音に、段々この世とあの世の狭間にいる様な感覚に陥る。
太鼓の音に合わせながら、現地民族のTamazight語での伝統的な曲を歌う異国の美しい青年達の横顔が、キャンプファイヤーの炎に怪しく照らされている。
そのうちモハメドは太鼓を叩くのを辞めて、私の手を取って踊る様に促した。
手を取られ、私はクルクル回されたりして踊っていたのだが、
少し踊っただけでも乾いた砂漠の空気の中でも息が切れた。
少し休んで、太鼓の演奏をしての繰り返しで3、4曲程演奏しただろうか。
キャメルマンはキャンプファイヤーの火を消して砂漠での歌は終わった。
夢か現実か区別がつかない様なフワフワした頭と身体でテントの中に向かった。
モハメドが少し速足で後ろから追いかけてきて、明日は5時半頃にこちらを出発する事を告げておやすみと立ち去っていった。
私は振り返り、星の写真が撮りたいけど、何処で撮れるかな?
と尋ねると少し行った所の砂丘に登れば綺麗に撮れると思う。
気をつけてねと告げて去っていった。
私は洗面所で歯磨きを済ませて、テントで自分の荷物からカメラの三脚を取り出して組み立てていると、テントの外で声が聞こえた。
テントの入り口をめくるとモハメドがいた。
「ソノコさん、ホシノシャシンイッショニ」
私が一人で行くのを心配してくれたらしい。
Ok, just a moment 私はそう答えて、
私は急いで上着を羽織り、三脚とカメラを持って外に出た。
「イキマショウ」
モハメドは私が持っていた三脚を自分が持つと受け取り、モハメドの歩く方に着いていった。
少し小高い砂丘を登っていく。
モハメドは自然に私に手を差し出して、私はその手を掴んだ。
静かな新月の夜に、私達の息遣いだけが聞こえている。
やっと砂丘の頂上に登り、私は三脚にカメラを据え付けて、星の写真を撮った。
満点の星空はずっと見上げていると空から降ってきて私達の身体に染み込む様に感じた。
星の数と輝きに圧倒された。
私が興奮しながら星空撮影に夢中になっている様子を座ってじっと見つめていたモハメドは、そのうち砂の上に寝そべった。
星の写真を撮っていた私は、寝そべっているモハメドの少し離れた所に座り、同じように寝そべってみた。
満点の星達が私達の身体に染み込んでいく様な感覚で、とても不思議だった。
優しい星達の光が、私達の細胞に静かに染み込んで、自分の身体が無数の星達と一体化して静かにチカチカと輝いている感じがした。
しばらくその不思議な感覚を味わい、あやうく瞳を閉じて眠りに落ちそうだったので
私はもう一度起き上がり、カメラのシャッターを押していた。
何枚か撮っていると、モハメドも起き上がって私のカメラのモニターを覗き込んだ。
気がついて私がそちらに顔を向けると、彼の息の温かさが分かる位の距離でビックリした。
彼は優しく微かに微笑んだ。
驚いて彼を見つめていると彼の顔がそっと近づいて、彼の唇が私の唇と重なった。
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