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増殖と滅亡を繰り返しながら変らず続くもの

九州中部を右往左往。

ひとつめの取材を終えて山の中を駆け抜けていると、ダム湖を通りがかって島を見つけた。
よく見てみると、水没した村の祠だった。
クルマを止め、手を合わせる気持ちでファインダーを覗くと、途端に、大粒の雨が降り出す。

悲しんでいるのか。
怒っているのか。
もうそこにはいない偶然か。

水のタイムカプセルからつかの間この世に現れた村の記憶は、嵩が増せば、また、沈黙の世界に帰っていく。

この村を出た人がこの光景を見たら
喜ぶのかな。
悲しむのかな。
なんとも思わないのかな。

ふたつめの取材を終えて、たどり着いたのは別府の町。

書き仕事を抱えているので、お酒は呑まずに腹ごしらえだけするつもりだったけれど、街に出れば、美味しそうなお店の暖簾をつい押してしまった。

そして、きちんと美味しかった。

シマアジのりゅうきゅう。
鳥天。
蒸し海老。

この三つだけで腹が弾けるんじゃないかと思うくらいのボリュームだ。

店を出ると、そこの商店街の昔の写真が飾られていた。きっと、昼間に見た祠の村がダムに沈んだ時、別府は、既に日本最大の湯量を誇る温泉地だったのだろう。

ぼくらは増殖し、同時に滅びながら営みをつなげている。
その狭間で変わらず続いていくものとはなんなのだろう。

なんてことは考えないようにして、明日の取材がはじまるまで、原稿を書きます_(´ㅅ`_)⌒)_


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