見出し画像

なぜ昔の車の方がカッコいいのか? ーAピラーの付け根問題ー

はじめまして。souheiといいます。

デザイナーでも自動車業界関係者でもないんですが、カッコいい車が好きというだけで車のデザインについて書きたいと思います。

みなさんは「車は昔の方がカッコよかった」って思ったり、人がそう言っているのを聞いたことはありませんか?
車のデザイン技術も製造技術も昔よりはるかに進歩しているはずなのに、僕も含めて多くの人が同じことを思っています。なぜでしょう?何か原因があるはずです。

今日はその原因の一つ、「Aピラーの付け根問題」について解説したいと思います。

Aピラーとはフロントガラスの左右を支える枠の部分のことを指します。ですので、Aピラーの付け根とは、写真でいうとこの部分になります。

この車はBMWの3シリーズという車で、世界の中型セダンのベンチマークといわれる名車です。このモデルは1980年代から90年代前半まで販売されていました。

その後数回のモデルチェンジを経て、現在販売されている3シリーズがこちらになります。

Aピラーの付け根を見比べてみて、何か違いに気づかないでしょうか?

昔の車は、サイドウィンドウからボンネットにかけてのラインが一直線になっていて、そこからAピラーが生えているように見えます。
一方、現行モデルでは、サイドウィンドウとボンネットの高さが合っておらず、Aピラーを境にラインがずれています

この原因は、ボンネットの中に入っているエンジンです。低燃費を実現するためにエンジンに大量の付属部品がつくようになった影響で、エンジンルームの高さが高くなってしまったのです。一方、サイドウィンドウは運転視界の確保のために高さを上げることができず、昔のようにサイドウィンドウからボンネットにかけてのラインを一直線にすることが難しくなってしまったのです。

これが、昔の車のデザインがシンプルで合理的に見え、一方現代の車のデザインが複雑で加飾的に見える原因の一つになっていると思います。

さて、このAピラーの付け根の段差をデザイン的に解決するために、世界中の自動車メーカーのデザイナーたちが涙ぐましい努力をしています。今日はその努力の跡を、いくつかのパターンに分けて紹介したいと思います。

最初は「Aピラーの付け根を曖昧にする」パターンです。

写真は先代のプリウスです。見てわかるように、フロントガラスからボンネットにかけての傾斜をスムーズにし、サイドウィンドウをドアの先まで潜り込ませることで、Aピラーの付け根自体を曖昧にし、段差を意識させないようにデザインしています。

次に「ボンネットを2段にする」パターンです。

写真はレクサスです。ボンネットは中央が高く左右が低い2段階になっていて、左右の低い部分がサイドウィンドウの下のドアが張り出した部分と連続した面を作っています。
これは高級車でよく見られるやり方です。ドアに張り出しが必要なので、車体幅に余裕のない大衆車や商用車では難しいためです。

3つ目は、「ボンネットの蓋を左右に回り込ませる」パターンです。

ボンネットの蓋を左右に回り込ませ、ボディとの継ぎ目を低い位置まで持って行くことで、サイドウィンドウのラインに繋げています。
ベンツがよくやるやり方ですが、他のメーカーでも見かけます。なかでもこのGLEというモデルは非常にソリッドなラインになっています。

最後に、「サイドウィンドウのラインを曲線にする」パターンです。

これはトヨタのシエンタです。サイドウィンドウのラインを曲線にし、運転席脇で下がったラインをAピラーの直前で上側に曲げて段差を解決しています。この車のデザインの面白いところは、さらに後席ドアの後端を逆側に曲げて、サイドウィンドウのライン全体をS字型にすることでデザインに整合性を持たせている点です。

いかがでしたでしょうか?
現代の車のデザインが昔みたいにシンプルにならないのには、それなりに理由があります。その中で、各社のカーデザイナーは試行錯誤しながらデザインを整合性あるものにしようと頑張っています。

また気が向いたら続きを書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?