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映画「窮鼠はチーズの夢を見る」を観てきました ※ネタバレあります

先日「窮鼠はチーズの夢を見る」の映画を観てきたので、その感想を書きます。

端的にいうと原作の湿っているようでカラッともしているような…そして、退廃的雰囲気の再現が良かった…けれども原作を映画にするに当たって省かれたシーンに対してもったいなというジレンマを抱える作品でもありました。

原作との出会い

映画を観に行ったきっかけは「これ映画化するんだ…どこまで頑張れるんだろう」という原作好きの好奇心ゆえでした。

原作との出会いは大学生の頃。僕は偏見でよくわからないものをわからないまま遠ざけるのは勿体無いと思っていて、それで普段読んだことのないBL漫画を読んでみようと思ったのです。評判の良いものを読んでみようと手を出した中の一冊がこれでした。

男性同士であるが故の障害や葛藤、ままならさなどがあって恋愛物として面白いなというのが原作を読んだ時の感想です。

成田凌という化け物

原作の今ヶ瀬は凄く美青年って感じで、ドラマCDでのCVは遊佐浩二、それが似合うような出で立ちでした。

ですので、ビジュアルを見たときには正直意外というか、思っていたのと違うなーなんて気持ちもありました。

そんなイメージは映画を見て塗り替えられることになります。

表情の作り方が凄すぎるんです。

恭一が何気なく発する言葉がどれだけ今ヶ瀬に刺さるのか、嬉しさもありながら、なんでそんなことを平然といえてしまうんだろうという幸せだけれどもそれにつきまとうどうしようのない不安が凄くいい表情で表現されています。

漫画の今ヶ瀬もこの時こんな表情であったんだろうか…って考えると凄く感情移入しやすい存在になりました。

当時の今ヶ瀬の印象って嫉妬深くて恐ろしいだったんですけど、改めて映画を見て成田凌の表情を見ていると気持ちが痛いほどわかるし、むしろ恭一に対して無責任なこと言うもんじゃないって思っちゃいました。

しかも原作より恭一マイルドになったよのにそう思っちゃいますからね。

成田凌の演技だけでご飯何杯も食べられます。切ないなぁ。

原作の雰囲気がいい感じに出ている

それぞれが住んでる部屋とか、使っているアイテムとか原作のもつ雰囲気を忠実に伝えようという感じがひしひしと出ていて、愛を感じました。

あと、夏生の描かれ方とか凄くよくてそうそうこれだよこれだよって満足感が高かったです。

それが故に原作の印象的なシーンを除いたラストは当初不満でした。

ラストってどうしてそうなったんだろう問題

病院でのやりとりや最後のやりとりが印象的で、色々あったしこれからも色々あるけれど今はめでたしだった原作。

映画では全員が離れ離れになり、今ヶ瀬やたまきちゃんが猫のように座っていた座席に恭一が座るエンドになりました。

はじめはその救いのないエンドに動揺もしました。でも、切り取る瞬間というか消えてしまった今ヶ瀬も戻ってくるかもしれないしそうでもないかもしれない。原作だってここから結局三度目がくる可能性だってあるわけで、意味合いは変わらないのかなという思いも出てきました。

人は傷ついて、でもだんだんかさぶたができて鈍くなってまた傷ついてを繰り返す、そんな愚かだけれどどこか愛しいような物語がそこにはありました。

原作好きとしてはジェットコースターで坂を登って、いざ落ちるぞ!っていう瞬間に思ったより落ちる時間が短かったような肩透かしを食らうかもしれません。

けれども恋愛をしている人や失恋してる人に刺さるような映画であることも間違いないと思っています。

そういう意味でなんとも評価が難しい映画でした。けれども心に爪痕を残してくれる作品であることは間違い無いです。

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