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ブー先生(看護学校の先生の話)

精神科の実習は3週間(実質15日)の予定だった。
ところが学校の入試時期と重なり休みの日が多く、実質6日しか無かった。

とはいえ課されている「学生によるレクリエーション企画」
実施しなければならない。
実習グループのリーダーだった私は頭が痛かった。

おまけに・・・
私はうつ病の高齢女性(認知症も合併されていたかも)を担当したのだが、実習初日から拒絶されてしまい、
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
と連呼されベッドサイドにも行けない始末。
生意気にも患者さんとのコミュニケーションに自信を持っていた私は
出鼻も鼻も大いにくじかれた。
「あ~、もう!精神科、大嫌い!!!」

ということで、皆を代表してブー(精神科看護の担当教師。
ふくよかでおっとりしたイメージから高木ブーさんにかけて
学生の間ではブーと呼ばれていた)に
レクリエーション企画を免除して欲しいと直談判に行った。
「先生!正味1週間も無いのに、自分の担当患者さんの事はおろか、
病棟全体の患者さんの事もわからないのに、
レクリエーションなんてできません!」
「わからないのに実施するなんて、
患者さんの病状に悪影響を与えたらどうするんですか!?」

これぞ若気の至り!すごいでしょう・・・本当にバカでしょう・・・
穴があったら入りたい・・・。

何だかんだと文句を言いに放課後は先生の元へ日参。
でも先生はいつもにこやかに「よく考えているわね~」「熱心ね~」と応えてくれた。

笑顔のブー先生

「のらりくらりと答えやがって!全然聞いてねーじゃねーか!」
と憤っていた私。

「くそ~!こんなの看護じゃ無い!ただのノルマだ!偽善だ!
患者さんに失礼だ!」
と青い怒りを仲間と共有しながらボーリング大会を実施。
司会を務めた私は看護師に
「上手ね~。皆さんへの気配りもできていて本当に良かったわ!」
と褒められ、複雑な気持ちになった。

そして、ブーは実習終了後私に高評価をつけた。
「な・・・なんで?あれだけ反抗したのに・・・。別に精神科看護に思い入れも
無いのに・・・。むしろ自分たちが大変だから言っていたのに・・・」

就職して希望もしてない精神科に配属されたとき、
「くそ~!ブーが高評価つけたからだ!」と恨みに思った。

人生とはわからないもので、その後私は精神障がい者の方や
心の看護に夢中になって現在に至る。
それに随分経ってやっと先生の懐の深さに気づく。

ブー先生、本当にありがとうございました。

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