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ヘドロ飼い主と猫 その1

 このnoteを始めたきっかけは、単純に金目当てである。
 というのも、わたしはこの猫を養わねばならんのである。


 はいかわいい。この子は名前を「聡太」という。もちろん将棋の棋士の藤井聡太先生からお名前を拝借した。聡いというよりは蛮勇がすさまじいのだが、まあそれはともかく。

 わたしは高校を統合失調症で中退し、ほんのいっとき縁故でアルバイトをしただけで、まともな労働はしていない、というかできない。

 午前中、ライトノベルの公募やカクヨムにUPする小説を8000字くらい書いたら、午後は寝ていないと体調を悪くする。具体的にはいわゆる眼球上転だとか不安感だとかそういう症状が出る。

 なのでアルバイトはたぶん無理だ。慣れないことをしても具合を悪くする。慣れるには、ふつうの人より時間がかかる。こういう人間を雇ってくれる神のような企業はない。

 カクヨムやはてなブログもやっているのだが、カクヨムで作品を読んでくれる人はそんなにいないので一部のツイッターの仲間を除くとほぼ壁打ちである。はてなブログは読書の感想をUPしているが収益化の方法はわからない。たぶん調べても難しくてできないんじゃなかろうか。

 そこで目を付けたのがnoteである。

 そもそもnoteがほかのブログサービスとなにが違うかよく分からないのだが、「noteズやづは文章書いてUPせば投げ銭でじぇんこもらえるんだべ?」という認識である。いやこんなしょうもないものに投げ銭してくれる人がいるとは思えないのだが。

 わたしはまともに働いたことがほぼない。アルバイトにバスで通ったことはあるが、それは助成金ありきの会社で、助成金が下りなくてクビになってしまった。

 カクヨムにエッセイをUPしたら、とある出版社の編集者の方に見つけてもらって、出版社のnoteにエッセイを連載させてもらったこともあるが、しかしいい経験ではあったものの、とてもとても食べていけるほどの収入ではなかった。

 いまは障害年金をもらってどうにか欲しいものを小規模に買えている、という状態である。

 しかしいまわたしは32歳、今年の冬には33歳になる。母氏は還暦、父氏は66だ。ふたりともいまも働いているが、いつリタイアしたり仕事の規模を小さくしてもおかしくない。

 親に養ってもらうタイムリミットが刻々と近づいているのである。
 どうにか、どうにか5年以内に、自力で稼げるようにならないと、この子猫を養えないのである。

 無計画というお𠮟りは甘んじて受けよう。だが、中3のときに拾ってきたこの猫のせいで、猫なしでは生きていけない体にされてしまったのである。


 はいかわいい。この子は「たま」という。優しくて穏やかな(当社比)黒猫だった。

 わたしはこのたまちゃんに、人生を救われたのである。

 たまちゃんは、わたしの人生がヘドロだった時代を救ってくれた。統合失調症のわりとひどいやつでくたばっていても、たまちゃんの世話をする、という約束があったから、せっせと毎日世話をして、結果わたしは家族に見捨てられずにいままで生きてこれた。

 その、ヘドロだった時代のことは、正直あまり覚えていない。ただただ頭の中を悪い意味の妄想がぐるぐるするのに耐え続けたわけだから、覚えていなくて当然だろう。

 それでも、たまちゃんは可愛かったし、たぶんガラケーでいっぱい写真も撮った。

 集中力を薬で散らしたせいで本を読んだりゲームしたりなにかを表現したりすることができなかった時代の救いがたまちゃんだったのである。

 他にもいろいろ趣味はあって、そこにお金を突っ込んだりもしたわけだが、それでも一番好きだったのはたまちゃんだった。ふかふかで柔らかで温かくて、しつこく撫でると噛みついて、ときどきゲロを吐く。そんな愛おしい存在だったのである。

 そのたまちゃんは、2022年の一月くらいから食がやたら細くなって、食べなくなったのでシリンジでキャットフードを食べさせるのをしばらく続けたが、2022年2月17日に、およそ17年と8ヶ月の命を全うした。

 わたしはものすごいペットロスになって、糸井重里の作ったドコノコという犬猫の画像をUPするアプリを開いてよそさまの犬猫を眺めて寂しさをまぎらわしたり、たわむれに「子猫 譲渡」でググる日々を続けた。

 そして、行ったことのない動物病院に子猫譲渡のチラシがあるらしい、と、次の母氏の休みに行ってみることを決めた日、母氏の知り合いから「子猫が生まれたらしい」と連絡があった。その知り合いは親戚から聞いたようで、その親戚の知り合いの家で子猫が生まれたのだという。

 えらい遠い縁だが、カネザワ家は子猫をもらい受けることを決定した。父氏も母氏もペットロスだったのである。

 そのときは生まれて三週間の乳飲み子をもらってくるという話で、正直こわごわといった感じだったが、別に生まれた、もうちょっと大きくなって乳離れした子猫をもらえることになった。それが聡太くんである。

 なんせもらい受けるまでの中継が多いので、正確な誕生日は聞きそびれてしまったが、とりあえず二ヶ月の子猫として世話をしている。

 聡太くんが来てから、毎日がドタバタである。名前のせいか常に高み(物理)を目指したり、ひも状のものに容赦がなかったり、キーボードを打つのを妨害したりする。ちなみにいまは寝ている……あっ、起きた。

 そういうわけで、このnoteにはヘドロ人生を送っている飼い主のことと、子猫の聡太くんのことを書こうと思っている。子猫と暮らすのは二度目だが、毎日がスリル満点、一秒も目をはなせないドキドキの日々である。たぶん傍からみても面白いと思う。よろしくお願いします。

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