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非正規歴の長い私が、会社を2週間休んで気づいた“休み恐怖症”の話。

10月中に夏休みをとるように。
休日出勤した分の振替休日もちゃんと取得してください。

そう言われたので、土日・祝日と夏期休暇5日に振替休日をつなげ、思い切って約2週間、会社をお休みしました。

社会人になっておおよそ20年になりますが、こんなに長く休みを取るのは初めての経験でした。
というか、1月に転職する前に3年半ほど契約社員として勤務していた会社では夏休みを取ったことはなかったし……、なんて振り返ってみて、気づいたのです。

私、社会人になってから、いわゆる土日・祝日と会社が決めた休日(年末年始)以外の休日をあまりとってこなかった。

そうなんです。有給休暇を使うのは、風邪をひいてしまったとか、生理痛がひどくてといった、体調の問題の時ばかり。
自分を休ませることや遊ぶことを目的に、積極的な休暇取得をしたことがないのです。

そして思いました。そういえば、私、休みをとるのが苦手だったなと。
まわりの人たちが上手に土日・祝日と有給や夏期休暇を組み合わせて、旅行に行ったりしているのを横目に、羨ましいなと感じながら、でも自分ではうまく休みが取れませんでした。

でも、これって、なんでだろう?
どうして、私、休みをとるのが苦手だったんだろう?

いろいろ考えてみて、一つの理由に思い当たりました。
それは、非正規での仕事が多かったから

社員の人たちが休みをとる間の仕事の対応あれこれは、非正規である私がしなくてはいけない。
来年も契約を更新してもらうためには、一生懸命仕事をして、評価をしてもらわないといけないから、休んでいる場合じゃない。
非正規で社員の人よりも有給休暇の日数が少ないので、体調が悪くなった時に有給を使い切ってしまっていたらと不安で、有給を使えなかった。
月給ではなく、時給での契約で働いていた時は、休みを取ったらお給料が減ってしまって死活問題になるので、休みを取ろうなんて思いもしなかった。

そんないろいろな事情や思いがあって、休みを取れなくなってしまっていた自分を思い出して、なんだか心がキューっとなるのを感じました。

たくさん寝て体力を回復したり、好きな本を読んだり、何も考えずにぼーっとしたり、自分の食べたいものを自分で作って食事をしたりしながら過ごした、遅めの夏休みの2週間。
自分では全然気づいていなかったけれど、それなりに疲れていたんだなと実感しました。
鈍っていた感覚みたいなものが蘇ってきたり、仕事優先で無意識に蓋をしてしまっていた自分の欲求みたいなものに気づいたり。
休むことも大切さをひしひしと感じました。
人は、自分らしくあるためには働くことも、休むこともどちらも必要なんです、きっと。

でも同時に、これまでの「非正規」というキャリアの中で、いつの間にか“休み恐怖症”に陥っていたことにも気づいて、ハッとしました。
だから、休んでいいよ、というか、休みなさい、と今の会社でまわりの人に言われても、1月に転職してからこの10月まで、休暇を上手に取れなかったのだから……。

長い夏休みを終えて、同僚たちに「おかえり?夏休みどうだった?」という質問を浴び、「特に何にもしなかった」と答えると、「それは、とってもスペシャルな時間が過ごせてよかったね」と言ってくれる人たち。
私は「これからは、もっと、ちゃんと休もうとと思えました。休む勇気が出るきっかけになった」と報告すると「どんどん休んでください」と言ってくれる上司。
そんな彼らと一緒に働く、いまの会社にいる間に、きっと私は“休み恐怖症”を克服できると思います。

でも、私は本当にラッキー、めちゃめちゃ幸運な人間なのだろうな、と思います。
非正規のキャリアを積み重ねてきた人たちの多くは、きっと休むのが苦手、休むのが怖い、という感情を心の何処かに抱えている人が多いのではないでしょうか。
厚生労働省が、パートや派遣で働く人を「非正規」と呼ばないよう省内に周知しているというニュースがありました。
言葉だけを消そうとしても、非正規として働いている人の心の中に積み重なっている不安や、経済的な問題、格差は消えません。
言葉が消されてしまうことで、問題までなかったことにされてしまっては、たまったものではありません。
私も今は幸い、正社員として働いているけれど、いつ、何が起きて、非正規で働くことになるかわかりません。私だけではなく、誰にだって起こる話です。

休み恐怖症。
そんな人がこの世からいなくなるように、メディアにいる人間としてできることは何なのか。
非正規という働き方が抱える問題にきちんと向き合っていかなくてはという決意も新たにした夏休みのお話でした。

(この記事は2019年10月に榊原すずみの別名義で書いたものです)

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