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化石賞? 3回連続で日本が受賞した不名誉と気候変動問題

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)、京都議定書第17回締約国会合(CMP17)、パリ協定第4回締約国会合(CMA4)が、11月6~18日まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されています。

そして9日、国際NGO「気候行動ネットワーク」が「化石賞」を日本に選んだことが報じられ、話題になっています。しかも、これで2019年のCOP25、昨年のCOP26に続き、3回目の受賞となり、これ、とっても不名誉ななんです。

とニュースで言われているけれど、COPってなに?という方もまだまだ日本には多いことでしょう。だからこそ「化石賞」などという不名誉な賞を3回連続で受賞してしまう訳ですが、「不名誉って言われても、COPも化石賞もわからないし」というのでは、これから日本は変わることができません。

新聞や大手WEBメディアでは改めて説明してくれないところも多いので、今回は「不名誉って言われても、COPも化石賞もわからないし」という人に、COPってなに? 化石賞って? というところからお話を始めたいと思います。

その歴史は1992年5月に国連総会で気候変動に関する国際連合枠組条約が採択され、同年6月3日から6月14日まで、ブラジルの都市リオ・デ・ジャネイロにおいて開催された環境と開発に関する国際連合会議においてその署名がスタートしたことに端を発し、
・COP1 ベルリン(ドイツ)    1995年3月28日~4月7日
・COP2  ジュネーブ(スイス)      1996年7月8日~7月19日
・COP3  京都(日本) 1996年12月1日~12月10日
・COP4   ブエノスアイレス(アルゼンチン) 1997年11月2日~11月13日 ・COP5   ボン(ドイツ) 1998年10月25日~11月5日
・COP6  ハーグ(オランダ) 1999年11月13日~11月25日
・COP6再開会合 ボン(ドイツ) 2000年7月16日~7月27日
・COP7 マラケシュ(モロッコ) 2001年10月29日~11月10日
・COP8 ニューデリー(インド) 2002年10月23日~11月1日
・COP9 ミラノ(イタリア) 2003年12月1日~12月12日
・COP10 ブエノスアイレス(アルゼンチン) 2004年12月6日~12月17日
・COP11 モントリオール(カナダ) 2005年11月28日~12月9日
・COP12 ナイロビ(ケニア) 2006年11月6日~11月17日
・COP13 バリ島(インドネシア) 2007年12月3日~12月14日
・COP14 ポズナン(ポーランド) 2008年12月1日~12月12日
・COP15 コペンハーゲン(デンマーク) 2009年12月7日~12月19日
・COP16 カンクン(メキシコ) 2010年11月29日~12月10日
・COP17 ダーバン(南アフリカ) 2011年11月28日~12月11日
・COP18 ドーハ(カタール) 2012年11月26日~12月8日
・COP19 ワルシャワ(ポーランド) 2013年11月11日~11月23日
・COP20 リマ(ペルー) 2014年12月1日~12月12日
・COP21 パリ(フランス) 2015年11月30日~12月13日
・COP22 マラケシュ(モロッコ) 2016年11月7日~11月18日
・COP23 ボン(ドイツ) 2017年11月6日~11月17日
・COP24 カトヴィツェ(ポーランド) 2018年12月2日~12月15日
・COP25 マドリード(スペイン) 2019年12月2日~12月15日
・COP26 グラスゴー(イギリス)   2021年10月31日~11月13日
・COP27 シャルム・エル・シェイク(エジプト)  2022年11月6日~11月18日
と、新型コロナウイルスの影響で開催されなかった2020年を除き、1年に1度行われている国際会議です。

では何を目的とされた国際会議なのか。 それは「国連気候変動枠組条約締約国会議」という名前からなんとなくわかる通り、昨今、世界的に問題になっている「気候変動」への取り組みについて話し合うための会議です。

たしかに気候変動ってよく聞くけれど、具体的にはどんなことをいうのでしょうか。 国際連合広報センターによると、気候変動とは 気温および気象パターンの長期的な変化 のことを指します。
この変化は太陽周期の変化といった自然現象によって起こることもありますが、1800年代以降は主に人間活動によって発生しており、その主な原因は、化石燃料(石炭、石油、ガスなど)の燃焼だとされているのです。
化石燃料を燃やすと温室効果ガスが発生し、地球を覆う毛布のように太陽の熱を閉じ込め、気温が上昇します。 温室効果ガスの例には、二酸化炭素とメタンがです。例えばガソリンを使用する車で移動したり、製造や処分の過程でガソリンや石炭のエネルギーを使用する製品を使ったりすることで発生するため私たちの生活と密接にかかわっています。
また土地を開拓したり森林を伐採したりすることによっても二酸化炭素が放出される可能性があります。 メタンの主な排出源は、ごみの埋立地で、エネルギー、工業、輸送、建物、農業と土地利用などで排出されているそうです。

そして重要なのは温室効果ガスの濃度はこの200万年で最も高い水準になっていること。 日本でも、昔に比べて夏がの気温が高くなっているのでは? と感じたことはありませんか?
昔はゲリラ豪雨なんてなかったのに……というのも大きな変化です。
世界を見てみると、深刻な干ばつ、水不足、大規模火災、海面上昇、洪水、極地の氷の融解、壊滅的な暴風雨、生物多様性の減少が各地で起きています。
これは人間はもちろんのこと、地球上のすべての生物、はたまた地球そのものの存在が危機に瀕しているといえるでしょう。そんな未曽有の事態に対して、世界中で足り組むための枠組みを作ることを目的とした会議が「COP」というわけです。

とはいえ、各国の経済状況や持っている資源、技術などには大きな差があります。各々の利益追求が優先され、これまでパリ協定や京都議定書のような条約は制定されていますが、具体的な策を講じられていないというのが現状です。 また、気候変動の問題に世界の目を集めるきっかけを作ったグレタ・トゥーンベリさんが、「各国の権力者が、うそやごまかしの温暖化対策を訴える機会になってしまっている」などとし、今年のCOP27に不参加を表明したことからもわかる通り、COPの形骸化が進んでいるように感じている人が出てきているのも現実だと私自身、感じています。

特に日本の企業では「COP●をいつまでに達成します」「二酸化炭素の排出を●%削減します」など気候変動や生物多様性、サステナビリティ、SDGsに関する目標を大々的に掲げている企業がたくさん(?)あります。 でも、それらの目標達成のための具体的な施策を打ち出しているところは少ないように感じています。 そして、私たち生活者も生活の中で自分がしている行動一つひとつ、例えば購入するものの選び方、ごみの捨て方、電気やガスの使い方などが気候変動や地球環境の危機、つまり全生物の命の危機と大いに関係しているという意識が低いのではないでしょうか? このCOP27の期間中、日本国民のどれだけの人たちが、その行方に関心を持ってニュースを追いかけているか。きっと、それほど多くはないはずです。

もちろん今の日本の経済状況、税率や、相次ぐ生活必需品の値上げ、でもお給料は上がらない……などを鑑みれば、今目の前にあること、生活することに精いっぱいで地球環境のことなんて考える余裕がないというのもわかるのです。でも、このままではそんな日本を、私たちの暮らしを良くするどころか、もっと圧迫することになりかねないということを知ってください。
日本はエネルギー資源をほとんど輸入に頼っています。食料自給率も低い。それは何を意味するかというと、資源が世界的に枯渇する昨今、あらゆる資源の価格は高騰しています。そのうえ輸入にかかるエネルギー資源も高騰しているのですから、すべてのものがどんどん高額になっていくことでしょう。
身近なところで言えば、気候変動の影響で夏はどんどん暑くなるのにエアコンを使うと電気代がすごくかかるから、暑くても我慢しなくてはならない。外国から輸入された食材、またはそれを使う料理を提供するお店で出される食べ物の価格が上がります。食材だけではありません。
輸入した原材料を使ったあらゆる製品の価格があがるでしょう。
そうすると、どうなりますか? 熱中症などで命の危険にさらされる可能性がかなりあがり、あらゆる食材、製品が値上がりすることで暮らしはさらに苦しくなっていくのではないでしょうか?
だから、COPや気候変動の取り組みは世界で取り組むべき課題とされているわけです。

それなのに、企業はイメージ先行のメッセージ発信をするばかりで具体的な施策を実行せず、生活者の意識も変わっていかないのでしょうか。 その大きな要因が今回の、3回連続COPで「化石賞」という不名誉な事態を招いたのだと私は考えています。

では「化石賞」とはどういうものなのでしょうか? 国際NGO「気候行動ネットワーク」が選出する、気候変動交渉・対策の足を引っ張った国を毎日選出して贈られる不名誉な賞で、1999年にドイツ・ボンで開催されたCOP5から始まりました。
その後、毎年恒例のセレモニーとして現在まで続いています。気候変動対策に後ろ向きな国に対する批判と、改善への期待の意味が込められている賞です。
報道によると、国際NGO「気候行動ネットワーク」は今回の化石賞発表で、「石炭や天然ガス、石油といった化石燃料事業への日本の投資額は、2019~21年の年平均が106億ドル(現在のレートで約1兆5000億円)で世界最多だ」と指摘し、「皆さんお気づきかわからないが、岸田首相はCOP27に参加していない」とも皮肉ったそうです(読売新聞)。

この賞はCOP開催期間中、ほぼ毎日発表されていて、先進国が受賞することが多いとはいえ、3回連続の受賞となると「先進国は受賞しがちだから」などと悠長なことは言っていられません。 これまで2回の受賞を踏まえて、何も改善してこなかった、対策を講じてこなかった気候変動問題に対する甘さが、根底にあると考えざるを得ません。

国家としてそんなスタンスでいるのですから、日本の企業や生活者が変わることができないのも当然なのかもしれません。 しかし、国が何かをしてくれるのを待っているだけでいいのでしょうか。企業が何もしてくれないから、生活者はどうしようもないじゃない、とあぐらをかいていていいのでしょうか。

先程も申し上げた通り、気候変動問題にや地球の危機は私たちの暮らしと密接にかかわっています。ごみの捨て方、買う商品の選び方を変えることも課題解決に大きく役立つのです。 そして、私たち生活者は「声をあげる」ことができます。政府や企業に対し、これ以上私たちの生活が困窮しないよう、気候変動問題にしっかり取り組んでくださいと求めることもできるのです。 なんて偉そうに書いていますが、私自身できていないことの方が多いのですが……。

でも、もし、自分にも何かできることがあればやってみたいという方がいらっしゃったら、ぜひご連絡ください。
そういう人たちで集まり、みんなができることを少しずつ実行していくことで、大きな声になれば少しずつ社会を変えることができるると思いませんか? なにもものすごく大それたことをしなくてもいいのです。
自分にできることを実行して、そんな人たちの行動を積み重ねていきたい。 一緒に、少しずつ変えていきましょう、今の日本を。

(文・榊原すずみ)


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