普通を生きることについて

前回は映画「怪物」については語ることが難しい事を書いた。が
なんとかその感触を、言語や他で表現してみたい、という欲求が生じる。

色々考えているうちに、わたしはこの映画に近い感情を、以前もっていたことを思い出した。

「ふつうの絵本」という絵本を描いたことがあるのだ。

この絵本は普通が好きな女の子が、普通とは何かを考える、よくある光景を絵本にしたのだ。

小学生の女の子が「ふつうの絵本」という絵本を図書館で借り、それについて考える。それだけのストーリーだ。

この作中では彼女は叫ぶことによって普通を乗り越えようとする。

だが、彼女のコンプレックスはどこにも描かれない。
普通なのだ。

私はここで何を描きたかったのか、今となってはよくわからない。

だが、そこにある普通という強風を、素通りせず、体当たりすることによって、乗り越える一人間を描こうとしたのかもしれない(一応佳作で賞ももらった)。

「怪物」は日本人として生まれてきたのならば、必ず見るべき映画だ。私は
この作品を手放しで称賛したい。真善美の3つがちょうどよいバランスで保たれたクリエイターにとってとてつもなく悔しい作品である。

普通を揺るがす最良の作品の前に、私は今でも言葉がない。
たぶんDVDも買うだろうと思う。

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