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恩知らず一人旅

2020年中盤にBTのウェブサイトを見ていたら、東京藝術大学大学院映像研究科のramという団体が、旅の文章を寄稿したら、それを紙媒体にして送ってくれるという。それで書いた文章だが、今読み返すとひどい有様である。

B4ぐらいの紙で来た。他にも、もろ詩のものもあるし、ライブ映像を使ったものもありで、皆さんうまくやっている。皆さんのを読み返すとやはり旅のない時代に旅を!だな。

この黄色いラインで描かれているものは何かというと読めばわかる。

恩知らず一人旅

三年前の十二月、和歌山に行けば、何かが変わると思い、みかん農家で働きながら、芸術の道を試みるも、農家に嫌われてクビ。大阪に戻ろうと考えていた。重たい輪行袋を抱えながら、有田川から和歌山駅に着いた瞬間に、徳島行きのフェリーの看板を見、九十度左に反れて券売機に金を入れ、いつの間にか徳島に着いていた。全くあてがなく、もう十九時。まずは開いていたチュロス屋に飛び入りで宿を聞いてみると、一つは普通のビジネスホテル、もう一つはビジネスホテルより安いが、何かよくわからない宿を紹介された。よくわからない宿を選ぶと、実はチュロス屋のおばさんの息子が経営していた旅館で、徳島の研修外国人を受け入れて、面倒みているところだった。色々話すと徳島のことを紹介してくれるという。研修外国人といっしょにラーメンを奢ってくれた。そのあと2日ほど世話になった。また帰ると言って、旅立ったが帰らないままになってしまった。
 愛媛からフェリーに乗る途中にデッキから財布を落とした。そのことに全く気づいておらず、船内放送で気づく。別府では温泉はよかったが宿が最悪。一つめの宿は別府では有名な温泉の二階の雑魚寝部屋で、何か臭いと思ったら、二人連れの男性客の体臭。店主も困っているという。もう一つの宿は韓国人が部屋を占拠しており、部屋に帰ると勝手に錠していて入れない。
 そこから山口に渡るが、むちゃくちゃ寒いうえに、現金を持っておらず、泊まる宿がない。仕方がないので名も知らない城跡の草むらで眠ることにした。翌日自転車で漕ぎ出すが、足のつま先が動かなくなっている。雪で足がぐちゃぐちゃ。枯れ葉を靴にいれて防寒した。ルートも東へ東へ進もうとするのになぜか行けない。どうしようもない。タバコを吸おうにもジャグはあるが紙がない。仕方がないから落ち葉で吸うと意外にうまい。日本海の空と海との境界が美しいことに気がつく。やっぱ密教とは縁が切れないのか…とか考えているうちに、博物館を見つける。その博物館では古代に処刑にあったひとのレプリカがあり骸骨に槍がいくつも刺さってる。足も限界なので、電車で広島まですっと行くことにした。基町アパート見学をしていたら中に喫茶店が。Bゼミ出身の人で、異様なほど話が合った。泊めてくれるという。龍の話になり、私は龍を追い求めるべきだと店主が言う。ここもまた帰ってくると言ったのに…
もうすぐ帰ります。



と読んだのにわからない人はタバコ屋さんでジャグを買ってみてください。

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