ハーブ屋さんを始めたわけ(3)

(2からの続き)
その数年前、霧降高原経由で女峰山に登ったことがありました。
朝方3時に家を出てまだ暗いうちに登り始め、赤薙山を経由して女峰山頂に着いた時、頂上には5人のひとたちがいました。
ご夫婦で来た方、職場の同僚と二人で来た方、そしてソロの男性でした。
5人はそれぞれ志津小屋から上がってたまたま山頂で一緒になったそうです。
「これからどちらに行くんですか」
ソロの男性に聞かれて、戻ります、と答えました。
「車を高原の駐車場に置いてあるので」
するとその男性が、
「僕とじゃんけんしませんか?」
と言いました。
「僕が負けたら、大真子を回って志津小屋まで行きませんか。僕が霧降まで送ります。僕が勝ったら、僕が霧降高原に行きますから、僕を志津小山まで送ってくれませんか」
私はふだん、山で出会ったひとと行動を一緒にすることはありません。
ひとりで行くのは、ひとりで行きたい理由があるからですし、知らない人と山行をするのはリスクもあります。
でもこの時はなぜか、そうしてもいいな、と思いました。
「いいですよ」
じゃんけん、ぽん。
私の勝ち。
それで、思いがけず帝釈、小真名子、大真名子と五山縦走をすることができました。
5人のうち2人とは途中で別れましたが、もう一組のご夫婦とはそのままなんとなく一緒に歩き、高徳牧場の近くのホテルで温泉に入って連絡先を交換しました。

家を曳く話になって、設計を誰にお願いしようか迷っていた時、不意にその時の男性が建築士だったのを思い出したのです。
事務所の名前をインターネットで検索して震えました。
なんとその方は、古民家再生のプロでした。

これは、山の神様のお引き合わせだ。

恐る恐る連絡をとってお願いしてみたら、ありがたいことに快諾をいただき。
こうして家を曳いて残すことができました。
(まだ続く)

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