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(提言解説シリーズ)霞が関の中途採用、何が問題なの?前編

こんにちは!ソトナカプロジェクトの東です。

先日、提言の内容解説をする記事第1弾として、私たちがどのような思いをもってこの提言を作ったのか、お伝えしたところです。

今日はその続編として、霞が関の中途採用の何が問題なのかを、ソトの目線から、分かりやすくお伝えしていきます。

さて、課題が何かを語る前に。
まず認識しておきたいことが1つあります。それは、

人材市場では、公務員も民間も関係なく、
全員が競争相手であること です。

突然ですが、「転職しよう」と考える人の気持ちになってみましょう。
転職に当たり、どのようなことを考えるでしょうか?。

もっと成長したい。
社会的に貢献したい。
より高い処遇を得たい。
柔軟な働き方をしたい。
風通しの良い職場で働きたい。

まだまだあると思います。
転職を考えている人たちは、当然のことながら、それぞれに「転職に当たって大事にしたいこと」があります。それは転職の「軸」とも言えるもの。それぞれに持つ「軸」のもと、複数の組織を見比べているのです。

霞が関のナカにいるとついつい忘れがちになるのは、「霞が関も、人材市場においては『見比べられる対象のひとつ』であるということ」です。霞が関が優秀な人材を惹きつけるためには、汗をかいて、民間に競り勝つ努力をしなければならないと思っています。
そのことをまとめたのがこちらのスライドです。

提言p8。優秀な人材を確保するために、官と民は互いに競争する立場にあります。

この点を初めにお伝えしたうえで、私たちが課題と考えることについて解説していきます。

霞が関の中途採用、何が課題なの? ー3つの視点からー

霞が関が中途採用をするうえでの課題は何か。
このことについて、私たちなりに、3つの切り口から整理をしました。

それが、
 ①ソト視点
 ②ナカ視点
 ③ソトナカ視点
です。

①ソト視点での課題とは、霞が関のソト、主に求職者(霞が関に転職しようとする人)が課題と感じることです。
②ナカ視点での課題とは、霞が関のナカ、例えば、各府省の人事担当や職場上司・同僚が課題と感じることです。
③ソトナカ視点での課題とは、それら(ソトとナカ)の双方ともに課題と感じることです。

私たちは、霞が関のソトからナカに来ましたので、まさに私たちの実体験として、採用前後において改善すべきことをよく知っています。
また、既に霞が関のナカにも定着していますから、霞が関のナカの人がどのような論理・力学のもと、何を課題として捉えるかもよく分かります。
さらに、この2つの視点を踏まえて、ソトとナカの双方が課題と感じていることについても指摘することができます。

さて、今回の記事では、①ソト視点で見える課題についてお話しします。
これは非常にシンプルです。ひとことで言うと、「中途採用を、新卒採用の延長線上でおこなってしまっている」ことが根本的な課題だと思っています。

提言p11。新卒採用と中途採用、似ているようで全く違うものです。

どういうことでしょうか?

新卒採用と中途採用を具体的に比較してみましょう。
比較の観点として、「人材定義(霞が関ではどのような人材を求めるか?)」「訴求価値(求職者に対して、霞が関にどのような価値があるとアピールするか?)」「採用方法(求職者に対して、どのようにアプローチするか?)」という3つの観点を用います。

まず人材定義です。いわば、「霞が関ではどのような人材を求めるのか?」ということです。この点については、

  • 新卒採用の場合、入省後に異動を繰り返しながらジェネラリストとして育成していくことを前提としていますから、入省前に、厳密に「このような人材が必要である」という定義がないことが問題になる場面は、ほぼないと言ってよいでしょう。

  • 一方、中途採用の場合は、民間で一定程度、知識・スキルを磨いてきた人が転職しようと考えるわけですから、当然、求職者は「今までの自分の経験も踏まえたうえで、霞が関で求められるものにきちんとマッチするのか?」と心配になります。
    ここで、求める人材の定義が詳細まで明確に示されていればその心配は軽減されますが、残念ながら、霞が関の中途採用では、そうではないケースが散見されているのが実情です。

実際に、私たちが中途採用者に実施したアンケートには、「組織として中途採用に何を求められているのか分からない」「中途採用者の育成ビジョンを持っていない、ロールモデルがない」といった声が数多く寄せられました。

提言p12。「中途採用者として、何が求められているのか分からない」というリアルな声が…

続いて、訴求価値。これは、求職者に対して組織として何を訴求するか?ということです。同じように、新卒採用と中途採用を比べてみましょう。

  • 新卒採用の場合、学生は就業経験がほぼないこともあり、「公共への奉仕」「社会のため」「国創り」という、分かりやすい価値を訴求することだけでも、一定量は採用可能です。

  • 一方、中途採用の場合、公共性は確かに訴求すべき価値なのですが、その他にも訴求すべき(ケアすべき)点があります。例えば、中途採用者は「霞が関の働き方に馴染めるのか?」「そもそも自分が民間で培ってきた経験を生かして活躍していける場はあるのか?」「収入面、働き方、家族との関係やライフスタイルの面で、現在の生活と大きく変わることになるか?」といった現実的な不安を持っていることがアンケートからも分かっています。こうしたことを、中途採用者目線できめ細かく情報提供して不安払しょくをすることが求められます。

提言p13。求職者は応募時に様々な不安を抱えています。
それを一つ一つ取り除いていくことが重要です。

さらに、採用方法を見てみましょう。

  • 新卒採用の場合、試験から内定獲得まで、毎年の定型プロセスがありますから、公務を志望する学生は、そのプロセスにあわせて長期スパンで準備を進めることができます。

  • 中途採用の場合、そもそも転職活動の時期は区々です。また、現職(民間)の業務の繁閑は往々にしてあるわけですから、調整も困難です。したがって、新卒採用のようなマス的なアプローチでは、求職者とのマッチングがうまくいかないことも生じやすいのです。また、実際に選考過程で「では、この日は1日空けてください」と唐突に言われた中途採用者もいますが(!)、そんなに簡単に業務調整はできませんよね。求職者の状況に合わせた選考プロセスの設計が求められます。

アンケートでは、求職者目線での周知方法や周知内容の工夫、柔軟な選考プロセスの設計を求める声が寄せられました。また、給与や働き方が分からないため決断しづらい、といった声が半数以上の方から寄せられました。

提言p14。アンケートからは「給与水準を明示されない」「働き方が分からない」など、
採用プロセスにおける不安の声は数多く寄せられました。

いかがでしたでしょうか。
今回は、霞が関のソト(求職者)の目線で、霞が関の中途採用を見つめてみました。まずは、霞が関では新卒採用と中途採用が全く別物なのだ、という認識が足りないことが課題であることを感じていただけていたら幸いです。
中途採用者を円滑に採用するためには、中途採用者目線でプロセスを改善していくことが重要です。

次の解説記事では、「ナカ視点」と「ソトナカ視点」で見えた課題感についてお話していきます!

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