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英語で何ができるか、それが重要だ

昨日書いた英語人格の記事は、わりと反響がありました。興味がある人は読んでみてください。

今日はもう少し踏み込んで、英語で何をするかということについて考えてみます。

僕の今の仕事は、非常に特殊な保険関係の仕事です。ハワイにある会社で、日本とアメリカのクライアントに対してサービスを提供しています。毎日英語と日本語を使って仕事をしています。

英語は僕にとって大きな武器なっていますが、英語ができれば僕の仕事ができるかというと、そうではありません。英語そのものは、ただの言語です。アメリカ人は普通に英語を話します。日本人があたりまえのように日本語を話すのと同じです。英語と日本語の両方を駆使して、僕のスキルが国境を超えることに価値があります。

「とりあえず英語でも勉強しておくか」の落とし穴

最近日本では、年功序列や終身雇用が崩壊して、リストラも一般的になりました。社内でしか通用しないスキルだけを身に付けることのリスクも知られるようになって、資格やプログラミングなどの社外で応用がきくスキルの習得が人気です。英語もそうですね。どれも自分の市場価値を高めてくれます。

生き残るためにスキルを高める必要があるのは誰でもわかりますが、では何から始めたらいいのかわからない人も多いと思います。「とりあえず英語でも勉強しておくか」という発想で、英語を勉強している人も多いかもしれません。

英語を勉強すること自体は素晴らしいし、必ずあなたの人生を豊かにしてくれます。でも英語が話せることであなたの価値が上がるかどうか、ちょっと立ち止まって考えてみる必要があるかもしれません。

アメリカで日本企業に対してサービスを提供していると、クライアント企業で英語を使って活躍されている方を大勢見かけます。みなさん優秀な方ばかりですが、僕はあることに気がつきました。英語を武器とする人には、2つのパターンがあるということです。

一つは英語を主なスキルとする人、もう一つは自分の持つスキルを英語で生かしている人です。同じように英語を武器として活躍されているのですが、この2つのパターンの間には大きな違いがあります。もうわかると思いますが、目指すべきは自分の持つスキルを英語で生かす働き方です。

翻訳機と競ってどうする?

英語を主なスキルとする人の仕事は、翻訳です。上司のためにEメールを翻訳したり、海外出張について行って通訳するような業務になります。少し英語ができるくらいの人は、英語が必要な時に役に立つ便利な人として認識されます。これはあまりお得なポジションとは言えません。こういうちょっと英語ができる便利な人は、英語ができない人と同じ業務を任されて、英語が必要な時だけ駆り出されます。給料も英語ができない人と大差ないことがほとんどで、余計な仕事が増えるぶん損をします。

さらに、英語を主なスキルとすることは、AI化が進んでいる今の世の中では大きなリスクになります。機械による翻訳の精度が急速に高くなってきているからです。英語を主なスキルとする人が競っているのは、英語ができない人ではなく、グーグル翻訳です。グーグル翻訳はまだ完全ではないので、英語スキルの価値は多少あります。でもグーグル翻訳のサポート役に成り下がってはいけません。

アメリカでは小学生も英語を話す

僕は留学をして英語のスキルを伸ばしましたが、アメリカに移住してある当たり前の事実に愕然としました。「アメリカでは小学生でも完璧な英語を話す」ということです。当り前じゃないかと笑われそうですが、大学生の自分の英語が、その辺で遊んでいる小学生の英語よりイケていないというのは大きな問題でした。僕は大学卒業後にアメリカで就職をするのが目標だったからです。

僕の専攻は会計学で、現地の会計事務所への就職を希望していました。会計のスキルがあっても、コミュニケーション能力が小学生以下では当然雇ってもらえません。アメリカで生き残るために必死で英語を勉強しました。僕は会計大手のデロイトのロサンゼルス事務所に就職したのですが、雇われた理由は日本語ができたからです。アメリカでは、とりあえず「会計+日本語」が武器になりました。

英語の能力は、就職した当時も最低限といったレベルでした。僕は普段は日本企業の担当でしたが、たまにアメリカ企業のチームに配属されると途端に使えない奴になりました。僕は会計士としてのスキルを伸ばしつつ、英語の勉強を続けました。ニューヨークにいた時、英語のスキルを伸ばすためにあえて日本語を使う機会がない会計事務所に転職したこともあります。

ちなみに日本語ができるからと言って、他の人より給料が高かったことはただの一度もありませんでした。アメリカは移民の国なので、バイリンガルやトリリンガルは当り前です。言語能力は仕事の選択肢を増やしますが、給料にはほとんど影響しません。

今時、日本でも英語が話せる人は珍しくありません。今後は日本でも、英語を話せることは仕事の選択肢を増やすが、給料には影響しないという現象が起きると予想しています。

英語で得た知見を日本に持ち込む価値

今の仕事は、英語で学んだ知識や経験を、日本企業に還元することで成り立っています。アメリカではわりと一般的な知識が、日本ではほとんど知られていないということが、ビジネスの世界ではよくあります。こういった情報を、英語で取得して日本語で発信することが僕の価値になっています。

こういった例はたくさんあります。僕の知り合いでも、アメリカでヨガの資格を取得して日本で活躍している人や、アメリカのサロンで修業して日本で活躍しているスタイリストがいます。共通点は、英語でスキルを習得して、より価値の上がる市場(日本)に持ち込んでいるということです。

インターネットで情報量が増えたと言いますが、手に入る情報量が増えたのは日本語のコンテンツだけではありません。ドイツのリサーチ会社スタティスタの統計によると、インターネット上の情報の約25%は英語のコンテンツです。一方で、日本語のコンテンツは3%未満です。

英語で情報収集する能力の価値は、今でも非常に高いと言えます。日本企業や日本人が求めているのは、英語の一次情報を日本の市場に提供する能力です。これは単純に翻訳するという作業ではありません。英語で得た経験や情報を咀嚼して、日本企業や日本人にとって有益な情報に組み替えて発信する能力です。

僕はアメリカで一般的な情報を日本企業に還元していると言いましたが、英語の情報を単に日本語にしているわけではありません。アメリカと日本の法律の違いや企業のニーズをよく理解したうえで、日本企業の問題を解決する仕組みを提供しています。だから価値があるのです。

マーケットが日本だとは限らない

英語を勉強している人は、英語を使って日本企業に貢献しようとしている人が多いと思います。そんな人は、発想の転換が必要かもしれません。英語をスキルとして考えるあまり、英語を使えることで日本語がスキルになっていることに気がついていないのです。

英語のスキルを活かして英語教師になった人が、日本にいる外国人に対して日本語スクールを始めたら成功したという話があります。世界には日本に興味を持っている人、日本の技術を求めている人がたくさんいます。日本を知り尽くしたあなたが英語を習得することで、世界を相手に日本の価値を提供することもできるのです。今流行りのYouTuberも、1億人の日本人に発信するより、15億人の英語人口に発信したほうが、バズった時のインパクトは大きいと思いませんか?  

日本には優れた技術がありますが、英語を使えないことで埋もれていることが非常に多い。凄くもったいない。埋もれて陳腐化する前に、英語で日本の知見を発信する必要があると思います。世界市場を相手に成功した日本酒メーカーの獺祭や、アップル社に椅子を数千脚の椅子を納品して有名になったマルニ木工の例は、非常に参考になります。

英語で何ができるか、それが重要だ

「とりあえず英語を勉強しておくか」をきっかけに英語を勉強すること自体は否定しませんが、英語を使って何をしたいのかは意識しておく必要があります。英語そのものをスキルにして勝負するのは、翻訳AIと競争することになるのでリスクになります。

求められているのは「英語+○○」です。高いスキルがあって、かつ英語を喋れるから価値が上がるのです。「スキルを高める勉強と英語の勉強を両方やるなんて無理!」という意見が出てきそうですね。そんな人は、英語でスキルを取得することをお勧めします。

先ほど、英語のコンテンツの情報量は日本語の10倍という話をしました。基本的な英語を覚えたら、積極的に興味のある英語の一次情報に触れてみてください。もし日本と海外に情報格差があるのなら、それがあなたのチャンスです。その分野の専門家になれば、英語を生かしたあなただけのキャリアになりますよ。


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