見出し画像

アスリートがトレーニングをするべき3つの理由

競技練習だけしとけばいいというトレーニング不要説。いまではあまり唱える人は減りましたが、アスリートがなぜトレーニングをするべきなのかについての正しい理解もまだまだではないかと思います。私の考える、アスリートがトレーニングをするべき理由は以下の3つです。

①怪我の予防

②競技力の向上

③疲労や怪我の回復の促進

1番は怪我の予防

競技力の向上を期待してる方も多いと思うのですが、1番は怪我の予防です。例えば、前十字靱帯断裂したりすると8〜10ヶ月程度競技から離れる事になります。

その間に練習できない事でライバルと差がついてしまう。自分は成長しないのにライバルは伸びていく。もどかしいです。モチベーションも低下する。再断裂にも不安を感じて思い切りプレー出来なくなる。このように怪我はアスリートの最も避けなければならないリスクです。

もちろん、適切なリハビリで復帰時に以前より高いパフォーマンスを発揮する選手もいます。ただし、膝自体は壊れたら治しても受傷以前より良くはなりません。身体機能全体を見直す事でパフォーマンスを改善できる可能性はあります。

前十字靭帯について、接触性の怪我はトレーニングで予防する事はできません。一方で非接触性の怪我は正しいトレーニングで予防ができます。ちなみに前十字靭帯損傷の7割くらいが非接触性のものです。自爆。

継続のために怪我を防ぐ

どんなに効果のあるトレーニング法でも継続できなければ効果はありません。そして、継続するためには怪我を防ぐ必要があります。つまり、結果的に怪我をしないことはパフォーマンス向上にとって最重要なのです。

アスリートの目的は当然競技力の向上が1番重要ですが、そのためには技術練習が必要です。そして技術練習を継続するためには怪我をしないことが重要。怪我を減らすためには正しい動作パターンを学習することや、組織自体の強度を高める必要があります。そのために必要な練習がトレーニング。解剖学に基づいたものがよいでしょう。トレーニングをする事で怪我のリスクを避けられる理由がここにあります。したがってアスリートもトレーニングをする必要があります。

画像1

パンダジムで行われているボクサーへのトレーニング指導

あるある間違い「熱心に行われる不思議体操」

では、どのようなトレーニングが有効なのでしょうか。ジムを見渡すと大胆に間違ったトレーニングをしているのをよく見かけます。トレーニングと言うより不思議な体操になっていることがあまりに多いです。以下に例を挙げながら説明してみます。

熱心に行われる不思議体操

実際トレーニングはそこまで簡単なものではありません。とはいえ、フォームと適切な強度、ボリューム、頻度が抑えられていれば大枠は大丈夫です。

「熱心にやっているのに、筋力、筋量が向上しない」このケース、ファンクショナルトレーニングを行っているとこの罠に溺れる事もあるでしょう。

不安定なところで行った方がスタビリティが鍛えられるのではないか?

不安定なバランスボールの上に立ってスクワットをする事でスタビリティを養いながらスクワットで筋力も獲得する。革命的ないいアイデアかもしれません。

ただ、平地の安定したところでバーベルを担いで行うよりバランスボールの上では負荷はどうあっても軽くなります。筋力強化としての効果は当然薄くなります。

さらに言うならバランスボールの上に乗れたからなんなんだと。それが上手いだけでバランス能力が向上するのかという根本的な問題もあります。

柔道家がボールに乗ってるのを目にしたので一例に挙げますが、バランスボールの上で自在に動ければ、安定した平地なら投げられないバランス感覚が獲得できるようにでもなると思ってるのでしょうか。

あまりに頭が悪い。バランス感覚より知力を養った方がいいです。本でも読みましょう。

先日ゴールドジムでもケーブルマシンでパンチの練習したり、ケーブルマシンの鉄柱と戦ってるお兄さんがいました。意欲的なのは分かったから格闘技やるならジムじゃなくて道場いけよと。

自分のジムなら間違いなく注意するけど、こいつが器具壊したらこっちもトレーニングが困るから注意しようか悩みました。(不要なトラブルは避けたいので放置しましたが、、、)ケーブルマシンを殴るな。器具は普通に使いましょう。独創的な使い方をしてるやつは頭か体が大体残念。両方とも残念なケースもあります。

あるある間違い「実技動作に負荷をかけるスタイル」

画像2

分かりやすい例が、ダンベル持ってシャドーボクシングです。ストレートパンチだとすると水平方向に筋力を発揮するのですが、ダンベルは垂直方向に負荷が掛かるので負荷方向が一致していません。

目的はパンチ力の向上?ハンドスピード向上??肩の持久力を鍛える目的でのエクササイズなのでしょうか?肩を鍛えるなら適切な負荷設定でウェイトトレーニングを実施すべきですし、パンチ力を高めたいならパワー発揮のトレーニングや、力の伝達に無駄がないかのチェック、そして何よりパンチの実技練習が最重要です。必要なのは意味不明な方向に負荷をかけたトレーニングではありません。

筋力を向上させる効果も薄くなってしまって本末転倒。さらにスキルとしても実動作に似てる上で負荷方向やスピードが違うから変な癖がついてマイナスに働く事すらあります。

スキル練習(体の使い方)として行うなら足りない要素をピックアップして適切な方法を選択しましょう。

あるある間違い「無駄な強化」

画像4

無駄な筋肉なんてない。と言いたいところですが、競技によって必要な筋肉は違います。必要な関節動作も違う。見た目やイメージと違うものもあるかもしれません。

例えば格闘技の蹴り。動作で見ると膝の伸展が大きく関わっていますが、膝伸展の主要筋である大腿四頭筋の関与は少ないです。それよりむしろ股関節屈曲筋である腸腰筋の関与が大きい。ここを勘違いしてキック力を強化するためにレッグエクステンションをやり込んでも思う結果には繋がりません。

じゃあ何をすればいいのか?

そもそもストレングス要素がどれくらい必要なのか。競技によってはストレングスの必要性が低いものもあります。その場合はトレーニングより実技練習に時間を割くべきでしょう。

競技によって特定の関節動作の筋力がパフォーマンスに大きく影響を与えます。

スプリントだと股関節の伸展動作など。重要な動作を鍛える事でパフォーマンスは向上します。

基礎筋力を養う

とはいえ、ベースとして全身の筋力は重要です。まずはスクワットに代表される多関節種目を行いましょう。

どの程度までベースを養えば基礎レベルクリアといえるのでしょうか?昔の極真空手ではとりあえずベンチプレス100キロというものがありました。雑で素敵。大道塾やSAWでも昇級の指標に自重トレの回数やウェイトトレーニングを一定の重量を扱う事があった記憶があります。当時は体力要素を軽視するなって風潮だったんですよね。

プライオ系のトレーニングだと一般的に自重の1.5倍のスクワットができる事が取り組むための目安として設定されています。プライオの効果を引き出したり負荷の大きいプライオのトレーニングに耐えられる筋力って事ですね。

走動作で重要になる大臀筋の上部などは片足の種目でしか刺激できない箇所もあったりします。この辺が競技特異性の色が強く出る箇所です。じゃあ片足の種目だけやり込めばいいのかというと物には段階というものがあります。両脚で立つより片脚で立つ方が難しいように動作的な難易度もあります。スクワットで重量を扱っていく過程でみなさん大好きな体幹部の筋力も養えます。

まずは週1〜2回の頻度でスクワットを自重で股関節を使う感覚を養って、バーベルやダンベルを使ったスクワットにステップアップしていきましょう。

画像4

いい指導者に巡り会えればラッキーですが、そうじゃない事も多々あります。その時に指導者がダメだからと自分もダメになるのは愚の骨頂。運頼みに競技人生を預けられません。

可か不可か自分自身で考えて判断できる能力を養いましょう。谷本道哉先生のお言葉です。

盲信せず自分で判断することが肝要です。ごく少数ですが間違った方法で結果を出す人間も確かにいます。信仰は奇跡を生む(こともある)。

ただしこれはマイナスかけるマイナスがたまたまプラスに転じたような奇跡です。運に自信のない人間は知恵をつけましょう。みなさんの競技生活が満足いくものになることを願います。

ここから先は

0字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?