金字塔 映画「シン・ウルトラマン」

「シン・ニホン」の安宅和人先生によると、日本は子どもに妄想力の英才教育を施している世界でも稀有な国なのだそうだ。「教育」というと、先生が生徒に知識を詰め込む絵をいまだに思い浮かべてしまうが、ここでの「教育」はドラえもんに代表されるアニメや特撮ヒーローなど、子供のころに自然と触れる作品の多くが実在しないものを取り扱っており、それらを見て自然と身についていくことをさす。我が国は妄想では負けないのだそうだ。こうした強みは我々が思う以上に自信を持っていいものなのかもしれない。

そうした「妄想教育」の金字塔の一つにウルトラマンがあることは論を待たない。1984年生まれであり、直撃世代とは呼べない私も、子供の頃に初めてはまったキャラクターはデフォルメされたウルトラマンであった。当時はウルトラマンのスペシウム光線に胸を躍らせ、ゼットンにカラータイマーが破壊されるという驚愕の展開には子どもながらに絶望感を強く感じたものだ。しかし、改めて考えると、ウルトラマンに助けてもらい続けた地球人が、ウルトラマンでも倒せなかった敵を人類の叡知を結集して打ち倒すというのは胸が熱くなる展開であり、「科学特捜隊」の基地や設備は初めて登場してから半世紀が経った今もなお色あせない輝きを放つ。

ヒーローばかりではなく脇役にも目が行くような大人になってから、違った目線でウルトラマンを楽しめるのが本作「シン・ウルトラマン」。ウルトラマンが怪獣を倒すことではなく、未知の脅威にさらされた人類がどのように災厄に立ち向かっていくのかが主題であり、それは「シン・ゴジラ」と同様にとても丁寧に描かれている。1兆度の火球に立ち向かう科学特捜隊(本作では禍威獣特設対策室、通称禍特対)と比べると、私が日常生活で感じている不都合、悩みなどなんと些末な問題だろうか、と感じる。明日の活力になる映画。

ウルトラマンは格好いい。しかし、本作の科学特捜隊(禍威獣特設対策室)もとても格好いい。科学力・技術力で立国していかなければならない我が国では、科学特捜隊に負けじと技術力を高めていく必要がある。その「英才教育」の一つとして、まずは本作で科学特捜隊の魅力を次世代に伝えるのは一つの手段だろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?