「イケてる」人の日常 映画「君の鳥はうたえる」

とある理由で、私はかなり長い間三宅唱監督のファンであり続けている。先日星野源さんのオールナイトニッポンで彼の名前が出た時は、大きな驚きの後に言いようのない喜びが湧き上がってきたものである。

しかしながら、私は一度として彼の映画を見たことがなかった。いつか見ようと心に誓いながらも、その日は中々来ない。そんな中でラジオから久しぶりに聞こえてきた彼の名前。「いつか」がやってきたのである。

私は高校生の頃、いわゆる「イケてる」グループと仲が良かった。何とかして付いていこうと背伸びを続けた。「イケてる」人になりたかった。そのような思いを抱えながら過ごした高校生活。それは楽しい日々だったが、今思い出すと恥ずかしいことも山ほどした。この映画は私がそんな「イケてる」大学生の生活ってこんな感じかな?と想像したような日常を描いている。

ハリウッド映画のように、縁がなさそうな世界を垣間見せてくれる映画もいいが、例えばほんの少し勇気を出して、好きな女の子に告白していたり、ほんの少し自分に自信があったり、というような、微妙な違いで辿っていたかもしれない世界線を見ることができる映画もいいものである。

この映画からは、「イケてる」ように見える人も、よく見ると苦労しながら、悩みながら生きていることを教えられたような気がした。イケてない人との違いは、無理しているかどうか、自然体であるかどうか、相手に気を遣いすぎているかどうか、といったちょっとした違いによるところが大きいのではないか。そんなことを思うようになった。柄本佑=イケメン論争というものが今年湧き起こったそうだが、今日から私も柄本佑=イケメン派である。(全くの余談だが、私は染谷将太くんも好きだ。織田信長がすごくカッコいいし、今作もカッコよかった。)

イケきることができず、中途半端だった私だが、今ではそれなりに歳を重ね、自分にできること、向いていることがわかるようになってきた。イケてないかもしれないけど、背伸びしすぎなくなった自分、弱さを見せられるようになった自分、無理とわかりながら、あえて無理するようになった自分を、今は昔よりも自然と受け入れられている気がする。自分は自分でしかないのである。

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