マドモワゼル・シャネルの肖像
もしかしたら大半の生き物に帰巣性が備わっているのではなかろうかと思えてならない今日この頃です。
私自身が今までに少しばかり美術館に足を運び、その限られた中で素晴らしい絵画を、この目にこの胸に収めてきたけれども「一番好きな作品」について考えた時、これだ!と思い浮かぶものがない。ウフィツィ美術館で見たボッティチェリ の『春』と『ヴィーナスの誕生』は文字通り神秘的な作品だった。フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』は小さな作品にも関わらず圧倒的な存在感を放っていたし、あの少女の強い眼差しは今でも脳裏に焼き付いている。まるで目にする者を夢の中へと誘なうような独創的なシャガールの色の遣い方も.... 言い出したらキリがないけれど、この中に自分にぴたりと当てはまる作品はない。
でもやはり戻ってくる場所は小さい頃から目にし、家にも飾られていたマリー・ローランサン。海外の美術館を訪れても彼女の作品を見ると懐かしく近しい何かを感じる。この淡く優しい色遣いも、張り詰めている緊張をスッと和らげてくれる。その中でもオランジュリー美術館で出会った『マドモアゼルシャネルの肖像』この絵、少し悲壮感があって、エネルギッシュで強いイメージのあるシャネルらしくなく、実際シャネル自身が受け取りを拒否してるほど。と言うのも、両性愛者とも言われていたマリーローランサンがシャネルに愛を断られたことにより出来上がった作品だそうです。(諸説ありますが)事実はどうあれシャネルの近くにいたローランサンだったからこそ彼女の世間に知られている部分以外の面を知っていたのではないでしょうか。どれほどパワフルな女性でも、誰にも見せたくないような姿はあるという事実が描かれた少し励みになる一枚です。グリーンやブルーでも柔らかなタッチで私の好きな色味をつくり出すローランサンのセンスの永遠の虜なのだと思います....❤︎
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