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【R5建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋】Ⅲ-1[添削論文]/技術士第二次試験

【1】 はじめに

 以前、私の下記noteで受講生さんの試験後の「再現論文」を投稿しました。

https://note.com/sosou_nino/n/nec91770fd4ba

 この記事では、再現論文に対する添削事項、添削後の解答論文などを以下に掲載します。


※注意事項: 2024年4月16日(火)より、本記事の【5】以降は有料版とします。


【2】 問題文

 気候変動の影響により頻発化・激甚化する水害(洪水、内水、高潮)、土砂災害による被害を軽減するため、様々な取組を総合的かつ横断的に進めている。中でもハード対策の取組の1つとして、既存ストックを有効活用した対策を計画的に実施する必要がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)気候変動が、山地域、河川城、沿岸域の水害、土砂災害に及ぼす影響について、各域毎にそれぞれ説明せよ。

(2)前問(1)で挙げた影響を1つ挙げ、その影響による被害の軽減を図ることができる既存ストックを有効活用した対策を複数示し、それぞれの内容を説明せよ。ただし、対策は、施設の新たな整備や維持管理を除き、既存ストックが有する防災機能の増大・強化を図る対策とする。

(3)前問(2)で示した対策に関連して新たに浮かび上がってくる課題やリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。


【3】 再現論文(添削前:from 受講生)

(注)noteの表示上、項目名を下線で表示できないので、太字で表示させます。また、最後の1文も太字で表示させます。

1.気候変動が各域の水害・土砂災害に及ぼす影響
 気候変動が、山地域、河川城、沿岸域の水害、土砂災害に及ぼす影響について、各域毎に述べる。
・山地域では、気候変動に伴う気温上昇により、雪解けが早まり降水量が増加する。このため、土砂崩れ及び土石流の発生頻度が高まる。
・河川地域では、気候変動に伴う降水量の増加により、河川の氾濫が起こりやすくなる。
・沿岸域では、気候変動に伴う海面上昇により、高潮及び津波被害の増加が懸念される。

2.山地域での対策
 前問(1)で回答した各域毎の水害と土砂災害に及ぼす影響のうち、山地域での影響を選択し、既存ストックを有効活用した複数の対策とその内容を以下に説明する。
2-1)砂防堰堤
 砂防堰堤は土石流が流れてきたときに、そのポケットに土砂をためこみ、土石流を止める。ポケットが土砂で埋まってしまった場合、次の土石流に備えてたまった土砂を取りのぞき、ポケットをからにしておくことが必要である。
2-2)渓流保全工
 渓流保全工は土石流などを堆積させることで、流出物を安全に流下させる工事である。
2-3)遊砂地
 遊砂地は土石流などを堆積させることで、流出物を安全に流下させる工事である。

3.新たな課題とリスクとその対策
 山地域で水害と土砂災害が発生した場合の既存ストックを有効活用した対策に関連してあらたに浮かび上がってくる課題やリスクとそれへの対策について、専門分技術を踏まえた考えを示す。
3-1)新たに浮かび上がる課題やリスク
ⅰ)既存ストックの不足
 既存ストックの数や規模が不十分である場合、対策を実施することができない可能性がある。
ⅱ)既存ストックの老朽化
 既存ストックが老朽化している場合、機能不全を引き起こす可能性がある。
ⅲ)既存ストックの位置
 既存ストックの位置が不適切である場合、対策の効果が低下する可能性がある。
ⅳ)既存ストックの維持管理
 既存ストックの維持管理が不十分である場合、機能不全を引き起こす可能性がある。
3-2)課題・リスク対策
 前述の課題やリスクに対して、以下に砂防技術を踏まえた対策を提案する。
ⅰ)既存ストックの増設
 既存ストックの数や規模を増やすことで、対策を実施することができる。
ⅱ)既存ストックの更新
 既存ストックを更新することで、機能不全を引き起こす可能性を低減する。
ⅲ)既存ストックの移設
 既存ストックの位置を適切な場所に移設することで、対策の効果を高める。
ⅳ)既存ストックの維持管理
 既存ストックの維持管理を適切に行うことで、機能不全を引き起こす可能性を低減する。 

以上

【4】 評価事項(by 小泉)

https://note.com/sosou_nino/n/nec91770fd4ba

 上記記事で私が評価した事項を、以下に再掲します。(一部加筆・修正)

 この再現論文の受講生さんの試験結果はC評価でした。
 私もC評価と考えます。その根拠を以下に示します。

▼ 設問(1)

・解答が非常にシンプルであるが、もっと説明がほしい。
・答案用紙に本再現論文をあてはめると、本設問の解答が1枚目の半分にも満たないため、専門知識能力の不足を疑われる可能性がある。
 せめて解答用紙1枚目後半まで書けるようにしたほうがよい。

▼ 設問(2)

・3つ対策の番号を2-1)、2-2)、2-3)としているが、ここはシンプルに1)、2)、3)とすることを勧める。
・本設問の解答字数がまで、2枚目の3行目にとどまっている。
 設問(1)の解答と同様に、もっと解答字数を書けるようにしたほうがよい。
・設問では「前問(1)で挙げた影響を1つ挙げ」と問われているが、復元論文では「山地域での影響」と記載している。この解答では「山地域での複数の影響」と読み取れるため、題意に沿った解答ではないと判断する。

▼ 設問(3)

・中項目の番号を3-1)、3-2)としているが、設問(2)の指摘と同様に1)、2)とすることを勧める。
・本設問の解答内容はおおむねよいと考えるが、本題の書き出し前の文章にくどさを感じるのがマイナスポイント。

▼ その他

・各設問の書き出しが、問題文の繰り返し(オウム返し)となっており、解答と重複しているため、字数稼ぎ解釈される可能性がある。
・再現論文を答案用紙に当てはめたところ、3枚目の半分程度に留まった。
 特に設問(1)及び(2)に対する解答字数が少なく、(3)の解答でなんとか字数を埋めている。各問題の解答字数のバランスを再考したほうがよい。


【5】 解答論文(添削過程:by 小泉)

 ➀追記・修正箇所を「太字」、②不要箇所を「取り消し線」、③部分的なアドバイスを「( )書き」で示しました。

1.気候変動が各域の水害・土砂災害に及ぼす影響
 気候変動が、山地域、河川城、沿岸域の水害、土砂災害に及ぼす影響について、各域毎に述べる。
・山地域では、気候変動に伴う気温上昇により、雪解けが早まり降水量が増加する。このため、土砂崩れ及び土石流の発生頻度が高まる。(←すべて書き直す)
1)山地域
 山地域では、気候変動により豪雨および短時間に降る強い雨の頻度が増加すると予測されており、台風および豪雨による風水害・土砂災害発生リスクが高まる。また、気候変動に伴う気温上昇により、雪解けが早まり降水量が増加することが予想されるため、土砂崩れ及び土石流の発生頻度が高まる。
・河川地域では、気候変動に伴う降水量の増加により、河川の氾濫が起こりやすくなる。(←すべて書き直す)
2)河川地域
 河川地域では、気候変動により降雨量が増加し、降雨の強度および頻度が増加することで、河川の氾濫や土砂災害が発生するリスクが高まる。また、気温上昇に伴い雪解けが早まることで河川の水量が増加し、洪水の発生リスクが高まる。
・沿岸域では、気候変動に伴う海面上昇により、高潮及び津波被害の増加が懸念される。(←すべて書き直す)
3)沿岸域
 沿岸域では、気候変動により短時間強雨の発生回数の増加し、水害の発生も増加することが懸念される。また、突発的で局所的な大雨に伴い、防災行動に必要な時間が短い土砂災害の増加すること、強い台風の増加に伴う高潮による浸水被害の拡大も懸念される。
2.山地域の「土砂災害」対策(←「 」内を追記)
 前問(1)で回答し述べ各域毎の水害と土砂災害に及ぼす影響のうち、山地域影響を選択し土砂災害について、既存ストックを有効活用した複数の対策およびその内容を以下に説明する。
2-1)砂防堰堤
 砂防堰堤は土石流が流れてきたときに、そのポケットに土砂をめこみ、土石流を止める。ポケットが土砂で埋まってしまった場合、次の土石流に備えてまった土砂を取りのぞき、ポケットをからにしておくことが必要ある。砂防堰堤は、大雨が降り土石流が発生した際に、大きな岩や流木などを含む土砂を貯め、下流への被害を防ぐことができる。
2-2)渓流保全工
 渓流保全工は土石流などを堆積させることで、流出物を安全に流下させる工事である。(←すべて書き直す)
 渓流保全工は土砂や洪水を安全に流下させることを目的とし、現況の渓流を極力改変しないよう計画および施工を行い、治水上の安全の確保および渓流の生態系の保全を図る工法である。また、本工法は洪水流の乱流および河床高の過度の変動を抑制するための施設(床固工、帯工等)、渓岸侵食を防止するための施設(護岸工、水制工等)、細粒土砂を堆積させるため等の施設(渓畔林等)などで構成される。
2-3)遊砂地
 遊砂地は土石流などを堆積させることで、流出物を安全に流下させる工事である。(←すべて書き直す)
 遊砂池は貯砂施設であり、山地域の河川に流れ込む土砂を貯留し、河川の氾濫および土砂災害を防止する効果がある。遊砂池の設置により土砂災害の発生頻度が低下し、被害の軽減につながる。
3.新たな課題とリスクとその対策
 山地域で水害と土砂災害が発生した場合の既存ストックを有効活用した対策に関連してあらたに浮かび上がってくる課題やリスクとそれへの対策について、専門分技術を踏まえた考えを示す。
3-1)新たに浮かび上がる「な」課題・リスク(←「な」を追記)
ⅰ)既存ストックの不足
 既存ストックの数や規模が不十分である場合、対策を実施することができない可能性がある。
ⅱ)既存ストックの老朽化
 既存ストックが老朽化している場合、機能不全を引き起こす可能性がある。
ⅲ)既存ストックの位置
 既存ストックの位置が不適切である場合、対策の効果が低下する可能性がある。
ⅳ)既存ストックの維持管理:
 既存ストックの維持管理が不十分である場合、機能不全を引き起こす可能性がある。
3-2)「新たな」課題・リスク「への」対策(←「新たな」、「への」を追記)
 前述の課題やリスクに対して、以下に砂防技術を踏まえた対策を提案する。
ⅰ)既存ストックの増設
 既存ストックの数や規模を増やすことで、対策を実施することができる。
ⅱ)既存ストックの更新
 既存ストックを更新することで、機能不全を引き起こす可能性を低減する。
ⅲ)既存ストックの移設
 既存ストックの位置を適切な場所に移設することで、対策の効果を高める。
ⅳ)既存ストックの維持管理
 既存ストックの維持管理を適切に行うことで、機能不全を引き起こす可能性を低減する。

以上


 添削過程の解答論文だけでは、最終的にどんな論文になるのかわかりづらいと思いますので、下記【6】に添削後の解答論文を示します。
 なお、noteの表示の制約がありますので、実際の解答論文では太字で表示することはありません。鉛筆・シャープペン書きなので。
 下記【6】で太字で示した文字は、実際の解答論文では下線を引いて表示します。

【6】 解答論文(添削後:by 小泉)

1.気候変動が各域の水害・土砂災害に及ぼす影響
1)山地域

 山地域では、気候変動により豪雨および短時間に降る強い雨の頻度が増加すると予測されており、台風および豪雨による風水害・土砂災害発生リスクが高まる。また、気候変動に伴う気温上昇により、雪解けが早まり降水量が増加することが予想されるため、土砂崩れ及び土石流の発生頻度が高まる。
2)河川地域
 河川地域では、気候変動により降雨量が増加し、降雨の強度および頻度が増加することで、河川の氾濫や土砂災害が発生するリスクが高まる。また、気温上昇に伴い雪解けが早まることで河川の水量が増加し、洪水の発生リスクが高まる。
3)沿岸域
 沿岸域では、気候変動により短時間強雨の発生回数の増加し、水害の発生も増加することが懸念される。また、突発的で局所的な大雨に伴い、防災行動に必要な時間が短い土砂災害の増加すること、強い台風の増加に伴う高潮による浸水被害の拡大も懸念される。
2.山地域の土砂災害対策
 前問(1)で述べた影響のうち、山地域の土砂災害について、既存ストックを有効活用した対策およびその内容を以下に説明する。
1)砂防堰堤
 砂防堰堤は土石流が流れてきたときに、そのポケットに土砂を貯めこみ、土石流を止める。ポケットが土砂で埋まった場合、次の土石流に備えて埋まった土砂を取り除き、ポケットをにしておく必要がある。砂防堰堤は、大雨が降り土石流が発生した際に、大きな岩や流木などを含む土砂を貯め、下流への被害を防ぐことができる。
2)渓流保全工
 渓流保全工は土砂や洪水を安全に流下させることを目的とし、現況の渓流を極力改変しないよう計画および施工を行い、治水上の安全の確保および渓流の生態系の保全を図る工法である。また、本工法は洪水流の乱流および河床高の過度の変動を抑制するための施設(床固工、帯工等)、渓岸侵食を防止するための施設(護岸工、水制工等)、細粒土砂を堆積させるため等の施設(渓畔林等)などで構成される。
3)遊砂地
 遊砂池は貯砂施設であり、山地域の河川に流れ込む土砂を貯留し、河川の氾濫および土砂災害を防止する効果がある。遊砂池の設置により土砂災害の発生頻度が低下し、被害の軽減につながる。
3.新たな課題とリスクとその対策
1)新たな課題・リスク
ⅰ)既存ストックの不足

 既存ストックの数や規模が不十分である場合、対策を実施することができない可能性がある。
ⅱ)既存ストックの老朽化
 既存ストックが老朽化している場合、機能不全を引き起こす可能性がある。
ⅲ)既存ストックの位置
 既存ストックの位置が不適切である場合、対策の効果が低下する可能性がある。
ⅳ)既存ストックの維持管理
 既存ストックの維持管理が不十分である場合、機能不全を引き起こす可能性がある。
2)新たな課題・リスクへの対策
ⅰ)既存ストックの増設

 既存ストックの数や規模を増やすことで、対策を実施することができる。
ⅱ)既存ストックの更新
 既存ストックを更新することで、機能不全を引き起こす可能性を低減する。
ⅲ)既存ストックの移設
 既存ストックの位置を適切な場所に移設することで、対策の効果を高める。
ⅳ)既存ストックの維持管理
 既存ストックの維持管理を適切に行うことで、機能不全を引き起こす可能性を低減する。

以上 

【7】 おわりに

 疑問点、さらなる改善事項等ありましたら、コメントをいただけますとありがたいです。
 
 よろしくお願いいたします。


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