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問題Ⅰの対策法【資源工学部門】~技術士第二次試験~

本記事では、技術士第二次試験「必須問題Ⅰ」の対策法について、「資源工学」部門を対象として、以下に私見を述べます。

【1】 注意事項

・100点の答えにはなりません
・60点を目指すヒントとして捉えてください
★あくまでも、自力で考えることを忘れないでください。


【2】 問題Ⅰの過去問

 「日本技術士会」HPに公表されていますので、上記リンクより参照してください。

【3】 過去問題の傾向

3.1 過去問題の課題文

(※本節は非常に長い文章となりますので3.2節を先に読んでも構いません)

 ここで、本記事において「課題文」を
  ❝ 設問(1)より手前に記載された問題文の文章 ❞ と
  ❝ 設問(1)の一部 ❞ を引用し、
  語尾を「△△△を○○○する」と表現する形式として
  『受験者へ問いかける前提』
 
と位置づける。 

 R01~R05年の問題Ⅰの「課題文」を以下のとおり整理する。

1)R01(2019):Ⅰー1
 地球温暖化を防ぐには、その要因とされる二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量を低下させる産業構造や生活の仕組みを持つ社会を実現する必要がある。
 このような状況の中、資源の開発及び生産や資源循環及び環境浄化の分野においても適切な対応が求められている。低炭素社会を実現するために必要とされる対策に関する課題を抽出する。

2)R01(2019):Ⅰー2
 AI(Artificial Intelligence)やIoT(Internet of Things)等のデジタル技術の活用は、産業界において新たな付加価値を創出するともに、生産性向上やコスト削減をもたらし、 今後の経済成長の原動力になると期待されている。資源工学部門においても、デジタル技術の活用に向けた取組が始まっている。
 
我が国の資源工学部門におけるデジタル技術の活用に関する課題を抽出する。

3)R02(2020):Ⅰー1
 
資源小国の我が国は、ものづくり産業を基盤とした貿易立国である。しかしながら近年、生産拠点の海外展開、グローバルな地産地消の傾向が顕著に進み、我が国の「ものづくりのサプライチェーン」への影響が懸念されている。そして、そのサプライチェーンの出発点とも言える原料やエネルギーとなる地下資源及びリサイクル資源の安定供給が及ぼす影響は大きいと考えられる。
 これらの状況を踏まえ、ものづくりのサプライチェーンの維持に必要な地下資源及びリサイクル資源の安定供給を実現するために必要な課題を抽出する。

4)R02(2020):Ⅰー2
 我が国では、2015年に国連で採択されたSDGs(17のゴール・169のターゲットで構成)を基に、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けた取組が行われている。掲げられた17のゴールの中に、ゴール12「持続可能な生産消費形態を確保する。」があり、このゴールを達成するべく、次のターゲット及び指標が明示されている(外務省HPより)。
<ターゲット12.2>
 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。  [指標] マテリアルフットプリント (MF)、1人当たりMF及びGDP当たりのMF
    天然資源等消費量 (DMC)、1人当たりのDMC及びGDP 当たりのDMC
 [補足] マテリアルフットプリント(MF)とは、
    国内最終需要を満たすために消費され た天然資源量。
    天然資源等消費量(DMC)とは、
    国内の経済活動のために消費した国産・輸入 天然資源及び
    輸入製品の合計量を示す物質フロー会計 (MFA) 指標。
<ターゲット12.5 >
 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、
 廃棄物の発生を 大幅に削減する。
 [指標] 各国の再生利用率、リサイクルされた物質のトン数
 この達成において資源の開発及び生産、資源循環及び環境浄化の技術者が果たす役割は大きい。
 これらの考えに立脚し、ターゲット12.2又は12.5の達成に関する課題を抽出する。

5)R03(2021):Ⅰー1
 世界的に水を取り巻く状況は、渇水及び洪水などの災害に加えて、人口増加・経済成長・都市化に伴う深刻な水質汚濁、かんがい用水及び飲料水などの不足、流域の生態系への影響、世界経済に及ぼす影響などの多くの問題が発生しており、引き続き取り組むべき重要な問題として位置付けられている。地下資源及びリサイクル資源の事業活動では大量の水を必要とするケースがある一方で、例えば国外において水資源の確保が非常に困難な地域での事業活動も含まれている。これらの地域において事業継続をしていくには、事業活動周辺のみならず、地域の水供給施設や排水処理施設への負荷を考慮した水資源の確保及び利用を図ることが重要である。
 
水資源の確保が困難な地域における水資源の確保及び利用に関連する業務を1つ挙げ、その業務における課題を抽出する。

6)R02(2021):Ⅰー2
 
資源小国といわれる我が国にとって、原料の生産から製品に使用する素材の製造までに要するエネルギー使用量を低減させることは常に追求すべき重要な課題である。
 
資源工学分野に関連する業務を1つ挙げ、その業務に関係するエネルギー使用量の低減に関する課題を抽出する。

7)R04(2022):Ⅰー1
 我が国は2020年10月に 「2050年カーボンニュートラル」 を目指すことを宣言するとともに、2021年4月には、2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として、2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの方針を示した。2021年10月に策定された「第6次エネルギー基本計画」では、カーボンニュートラルの実現に向け、その道筋にさまざまな不確実性が存在する状況においても、安全性を前提とした上で、エネルギー安定供給を第一としカーボンニュートラル時代を見据えたエネルギー・鉱物資源を資源循環も含め安定的に確保し続けることが重要であるとしている。
 この2030年度の温室効果ガス排出削減目標の実現に関連し、確保と安定供給が必要なエネルギー・鉱物資源を1つ挙げ、その資源に関する課題を抽出する。

8)R04(2022):Ⅰー2
 日本では海洋基本法に基づいて海洋基本計画を策定し、この計画の中で、先端産業に必要不可欠なレアメタルを含む海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥などの海底鉱物資源開発に向けた技術開発を積極的に推進している。資源小国である日本にとってこれらの海底鉱物資源を開発し、それらを産業へ利用することが求められている。
 海底鉱物資源
の産業への利用を実現するうえでの課題を抽出する。

9)R05(2023):Ⅰー1
 令和3年6月9日に「国・地方脱炭素実現会議」で取りまとめられた「地域脱炭素ロードマップ」では、1つの重点対策として「ゼロカーボン・ドライブ」が提言された。その内容は、プラグインハイブリッド車燃料電池自動車とあわせて電気自動車モビリティに関する脱炭素化を推進するとともに、電気自動車特有の大容量蓄電池が系統電力の安定化に寄与することによる再生可能エネルギーの発電比率の向上や、災害時の非常用電源として地域のエネルギーレジリエンスの向上を目指すものである。また、その実現に向けては、日本国内で電気自動車を普及させることが重要としている。
 一方で、2035年までにエンジン車の新車販売の禁止を目指していたヨーロッパ連合では、合成燃料の使用を条件にエンジン車の販売継続を認めるなど、電気自動車に関する様々な問題が顕在し、その普及速度がやや下がっている。 
 このような状況を踏まえて、日本国内で電気自動車を普及させる際の課題を抽出する。

10)R05(2023):Ⅰー2
 国際的な基準であるGHPプロトコルでは、企業自らが排出する温室効果ガスのほかに、Scope3と呼ばれるサプライチェーンの上流部から下流部のすべての工程で生じる温室効果ガスの排出量を算定・報告範囲があり、企業を取り巻くステークホルダーからの影響もあって、企業としてこのScope3で生じる温室効果ガスの排出量削減に取り組む必要性が、年々高まっている。

Scope3の工程

 資源工学が関わる産業の多くは、取引関係先に必要な資源・資材の供給や廃棄物等の処理(再資源化を含む)を担っている関係から、サプライチェーンの上流部又は下流部に位置し、この産業から排出される温室効果ガスは、取引関係先のScope3で生じる温室効果ガスの排出量として算定され、その削減への貢献が求められている。一方で、温室効果ガスの排出量を削減する主な技術としては、再生可能エネルギーの利用・導入があるが、諸外国に比べて我が国ではその普及が進んでおらず、その普及を進めるとともに、これ以外の削減技術の開発・普及を実現する必要性も高まっている。
 
このような状況を踏まえ、資源工学が関わる産業が、取引関係先のScope3で生じる温室効果ガス排出量の削減に、再生可能エネルギーの利用以外の技術で貢献する際の課題を抽出する。

3.2 過去問題の「テーマ(課題)」

 過去問題の「テーマ(課題)」は、非常に多岐にわたっている。R01~R05年の問題Ⅰの各テーマを以下に記載する。

1)「低炭素社会を実現」するために必要とされる対策の課題

2)我が国の資源工学部門における「デジタル技術の活用」に関する課題

3)「ものづくりのサプライチェーン」の維持に必要な「地下資源及びリサイクル資源の安定供給を実現する」ために必要な課題課題

4)「ターゲット12.2又は12.5の達成」に関する課題

5)水資源の確保が困難な地域における「水資源の確保及び利用」に関連する業務における課題

6)資源工学分野に関連する業務に関係する「エネルギー使用量の低減」の課題

7)2030年度の温室効果ガス排出削減目標の実現に関連し、確保と安定供給が必要な「エネルギー・鉱物資源」の課題

8)「海底鉱物資源」の産業への利用を実現するうえでの課題

9)日本国内で「電気自動車を普及」させる際の課題

10)資源工学が関わる産業が、取引関係先の「Scope3で生じる温室効果ガス排出量の削減」に貢献する際の課題(ただし、再生可能エネルギーの利用以外の技術とする)

3.3 問題Ⅰ「テーマ(課題)」想定のススメ

 過去問題の「テーマ(課題)」の整理は、試験出題当時の社会情勢および資源工学分野に求められる課題の分析に過ぎないと考える。
 このため、R06年以降の問題Ⅰの試験対策は、受験時点の社会情勢および資源工学分野に求められる課題、つまり「テーマ(課題)」を想定し、このテーマに対する設問(1)~(4)の解答作成のトレーニングが有効と考える。

 なお、前節まで過去問題の「テーマ」を整理したが、これは試験出題当時の課題をもとに、解答論文を作成するトレーニングとなり、このトレーニングがR06年以降の解答作成に活きると考える。(つまり、論文作成のトレーニングである)

3.4 問題Ⅰ「テーマ(課題)」想定の参考文献等

 R06以降の「テーマ(課題)」の想定はかなり困難な作業である。
 しかし、この「テーマ」の想定には、以下に示す文献、特に「白書」および資源工学分野の専門雑誌が有効と考える。

 「白書」類は毎年発行されており、概ね第Ⅰ部と第Ⅱ部に内容が分かれており、その中で特に第Ⅰ部がその年の社会情勢を踏まえた課題と位置づけられる。
 また、資源工学分野の専門雑誌は、当分野の最近のトピックスが掲載されており、これが問題Ⅰの「テーマ」のヒントになり得ると考える。ただし、課題の内容によっては第Ⅱ部に記載されていることがあるため、その際は読み込み範囲に注意が必要である。

 以下に、お勧めの「白書」および「専門文献」を記載する。ただし、これらの資料は多量にあるため、私小泉の個人的主観となるが、優先度を決めて記載する。これらの文献の調査にあたっては、受験生個人で優先度を決めて、調査対象を絞っても構わない。

 1)環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書
 2)エネルギー白書
 3)科学技術白書
 4)情報通信白書
 5)国土交通白書
 6)通商白書
 7)資源と素材
 8)月刊廃棄物
 9)INSUDT(いんだすと)
 10)環境浄化技術

【4】 設問(1)~(4)の傾向・対策

4.1 設問(1)の傾向・対策

 R01年以降、設問(1)~(4)の問題文は、部門により違いがあるものの、おおむね統一されている。また、「資源工学」部門のR01年以降の設問(1)は問題文が年々変化しているものの、大局的にほぼ共通である。ここでは、直近R05年の問いかけを参照として、設問(1)の標準問題文を以下のとおり設定する。

★「課題文」に示した内容を踏まえ、技術者としての立場で多面的かつ異なる観点で3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

 設問(1)では、この問題文がR06年以降の想定問題に引用できると考える。

4.2 設問(2)の傾向・対策

 R01年以降、「資源工学」部門の設問(2)問題文は年々変化しているものの、大局的にほぼ共通である。ここでは、直近R05年の問題Ⅰー2の問いかけを参照として、設問(2)の標準問題文を以下のとおり設定する。

★前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対して、資源工学部門の技術者として関与し、実現すべき複数の解決策を、資源工学部門の専門技術用語を交えて示せ。

 R06年以降の設問(2)は、上記の問題文に類似した問いかけで出題されると考える。

4.3 設問(3)の傾向・対策

 R01年以降、「資源工学」部門の設問(3)問題文は年々変化しているものの、大局的にほぼ共通である。ここでは、直近R05年の問いかけを参照として、設問(3)の標準問題文を以下の2ケースで設定する。

★前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

★前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じうる波及効果とその懸念事項について、専門技術を踏まえた考えを示せ。


 R06年以降の設問(3)は、上記の問題文に類似した問いかけで出題されると考える。

4.4 設問(4)の傾向・対策

 R01年以降、「資源工学」部門の設問(4)問題文は、大局的にほぼ共通である。ここでは、直近R05年の問いかけを参照として、設問(4)の標準問題文を以下のとおり設定する。

★前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。

 R06年以降の設問(4)は、上記の問題文に類似した問いかけで出題されると考える。

【5】 問題Ⅰ対策(論文作成)

 「資源工学」部門の問題Ⅰ対策は、前述した内容を踏まえ、以下に示す2つのレベルに対応する想定問題を作成し、その問題への解答論文を作ることを提案する。さらに、本対策は、既技術士等に添削を受けることで、解答の質を上げられると考える。
 なお、各レベルの課題文{設問(1)より手前の問題文 & 設問(1)の一部}は、受験生各自で設定してください。

5.1 レベル1

 「テーマ」として、R01~R05年過去問題の課題文(3.1~3.2節 参照)のいずれかを選択し、以下の(1)~(4)の各設問に解答せよ。なお、(3)についてはa)またはb)のいずれかの問題文に対し解答せよ。

(1)「課題文」に示した内容を踏まえ、技術者としての立場で多面的かつ異なる観点で3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対して、資源工学部門の技術者として関与し、実現すべき複数の解決策を、資源工学部門の専門技術用語を交えて示せ。

(3)a)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(3)b)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じうる波及効果とその懸念事項について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。

5.2 レベル2

 「テーマ」として、➀各受験生の「資源工学部門に関する経験業務」、②「資源工学部門に関する最近のトピック」、または③3.3~3.4節で述べた「問題Ⅰの想定『テーマ』」、のうち①~③のいずれか1つを選択し、以下の(1)~(4)の各設問に解答せよ。なお、(3)についてはa)またはb)のいずれかの問題文に対し解答せよ。

(1)「課題文」に示した内容を踏まえ、技術者としての立場で多面的かつ異なる観点で3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対して、資源工学部門の技術者として関与し、実現すべき複数の解決策を、資源工学部門の専門技術用語を交えて示せ。

(3)a)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(3)b)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じうる波及効果とその懸念事項について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。

【6】 解答論文作成のヒント

 解答論文の作成方法は、受験生、既技術士、受験講座の講師によって千差万別であるが、私小泉による個人的なヒントを以下に示す。

 ➀ 問われた事項(設問)の「目次」を作る。
 ② その「目次」に該当する解答案を「箇条書き」する。
 ③ 「目次」と「箇条書き」の内容に齟齬がないかチェックする。
 ④ 1つの目次(設問)の中で、箇条書きの文章をつなげてみる。
 ⑤ 1文は解答用紙2~3行(50~75字以内)以内が理想。
 ⑥ ここまで作成した解答(論文)を、解答用紙に埋めてみる。
 ⑦ できれば、解答用紙3枚目の残り3行目前後まで埋まっているとよい。
 ⑧ 上記⑦まで文章量が足りていなければ、上記②の箇条書きを追加し、
   以下③~⑧を繰り返す。
 ⑧ 全体を読み直し、誤字脱字、読みにくい文章を修正する。

【7】 添削を受け付けております!

 私、小泉は、有料で添削を受け付けております。
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おわり

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