見出し画像

sosoの素(32)

僕とコーヒー 後編

妄想を膨らませて考えた土鍋焙煎がうまくでき、僕にも焙煎ができるんだと嬉しくなった。
それはsosoを始める少し前のこと。できることはなんでも自分でやっていきたいと鼻息荒く考えていたころでもあったから焙煎もできたことが理想の自分にどこか一歩近づいた気持ちだった。

五年ほど土鍋焙煎を続けていた。
何度もやっているうちに土鍋の大小関わらず生豆200gくらいがちょうどよかった。1回で約30分くらい。焙煎すると水分が飛んで豆は軽くなるから1時間で350gくらい焙煎できる。
土鍋焙煎自体にそんなに不満はなかったけど、1回分の焙煎量をもう少し増やせるといいなーとは常々思っていた。
そんな時に展示をさせてくれた友達の旦那さんが手回し焙煎機を使って焙煎をしていた。話を聞くとコーヒー好きの鉄工所の人が時間がある時に制作してオークションでたまに販売していることを教えてもらい買ってみた。
手回し焙煎機は1回で生豆500gまで入れれる。使ってみると土鍋焙煎よりも焙煎のムラがなく香りもスッキリしていてより美味しいコーヒーになった。グレードアップして焙煎の頻度も抑えられ良いこと尽くめの焙煎機の世代交代となった。

生のコーヒー豆は生産国も品種もたくさんあり、人によっては農場までもこだわる!なんて人もいて、そんな世界はカッコ良さそうだからついつい踏み入れたくなって入っていくんだけど、もともと味よりもコーヒー器具を使うことが楽しかったのといい加減な性格でもあるから、毎回違う生豆を買っては試しているうちにどれがどんな味だったかわかんなくなってきた。
毎回こんな感じかーと言ってるくらいでちょうど良くて、そこに味の追求を入れるときっと僕は嫌な人間になっていきそう気がしてた。
どんな世界も追求していくと「こだわり」が「囚われ」になってその世界の中での軋轢を生むし、その渦中に自分の身を置けばあの人はわかってないとか自分のコーヒーは素晴らしいとか有名な人の話は聞いてそれ以外は耳にはいってこないとか。独りよがりで盲目的になってしうまあの感じが嫌なのです。

そんなこんなでコーヒー豆も今はブラジルのハニーショコラという品種のみになり、それ以外はお試しで買うこともなくなった。一番飲みやすく毎日飲んでも飽きない。ちょっと飽きてきたかな?と思った時は深さを変えるだけで違う感じになるし、そのくらいがちょうどよかった。
この数年、僕にとってコーヒー焙煎は趣味であり癒しでもあった。仕事で疲れてきた時に早めに終わって焙煎をしながら流れる車や好きな動画を見ながらコーヒー豆を回しているととてもリラックスできたのです。
だからあまり神経質にこだわりを持ってやると仕事とかわりなくなってしまうのもなんだか嫌だったんだと思う。

コーヒーの世界に僕が居たいのではなく、僕の世界にコーヒーがあってほしい。

美味しい不味いはあるけど、特別美味しくて最高なものは毎日だと飽きてしまう。そこそこ美味しくて、飽きてこない。そんなコーヒーが僕の理想で、毎日のご飯のよう。
そんなコーヒー豆を今は焙煎できるようになってきたからオンラインでの販売を始めたのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?