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現役転職エージェントが話題の「転職2.0」を読んでみた。

お疲れ様です。こなー@1992です。今回はLinkedIn日本代表の村上臣さんの著書である「転職2.0」について、まとめ・解説します。

■かんたんに私のキャリアについて

私は現在、転職エージェントとして求職者様のキャリアコンサルタント及び企業様側の中途採用支援をしています。私の所属する会社は業界や業種毎にチームを分けており、私は金融・不動産の分野を担当しています。外資系や日本でグローバルにビジネスを展開する企業様の支援をする事が多いです。現在の会社は私のキャリアとして2社目で、以前は大手日系食品メーカーで法人営業を担当していました。

転職エージェントとして働いているので「転職」というワードは毎日のように耳にしますし、私が食品メーカー→人材業界という(傍から見れば謎だと思われる)転職をしたこともありよく周りから「なんで転職したの?」と質問されることがあるため、常に意識しているワードでした。そんな中、LinkedInの日本代表である村上臣さんが”転職2.0”という本を出版されたという事で、さっそく読んでみる事にしました。興味深い内容であったのでぜひ皆様にも内容や感想の共有をさせて頂きます。


■本の内容


◇転職2.0とは?


本の題名にもなっている転職2.0というキーワードですが、どういう意味でしょうか?
本書では”転職2.0=「これからの転職に求められる思考・行動様式(ルール)」”だと説明されています。今より以前に求められていた転職に対する考え方は転職1.0という事ですね。著者の村上さんは、転職活動をしている/していないに関わらず、日本でビジネスに関わる全ての方が転職に対する思考・行動様式を1.0から2.0にアップデートする必要がある。と説いています。なるほど。「確かに最近はメンバーシップ型からジョブ型へ!」「新卒一括採用、終身雇用、年功序列といった日本を代表してきた雇用システムを大手企業が廃止する。」などのニュースが世間を賑わせていますが、そのような時代の流れに従って、個人単位で転職に対する思考をアップデートするべきという事なのでしょうか。村上さんは後述する5つのキーコンセプトを挙げて、日本人のキャリアの新ルールについて説明されています。それにしてもルールそのものをアップデートするべきという考え方は面白いですね。どんなスタープレイヤーでも最新のルールを把握できていなければ、パフォーマンスを発揮できないという事ですね。。

◇5つのキーコンセプトとは?


本書では、目的、行動、考え方、価値基準、そして人間関係という5つのキーコンセプトのそれぞれのルールを1.0から2.0にアップデートする必要がある。と述べています。以下、図が1.0と2.0の違い(出典:アマゾン)

2.0ルール

【目的】
まず、注目したいのは転職をする目的そのものをアップデートする必要がある。という事です。転職2.0では、転職は手段であって目的は自己の市場価値の最大化であるとのこと。ここで疑問になるのは、
「市場価値を最大化できるのは良い事なんだろうけど、実際にどんなご利益があるのか?」
という事です。このような疑問に対して村上さんは、”市場価値を最大化する事で ”誰もが我慢しない働き方が手に入る。”と言います。
”市場価値を最大化することで会社に依存せず、自分自身で主体的にキャリアを決定する事ができるので、我慢せずに働ける場所を探すことができる。”
”キャリアの意思決定権が会社から個人の元へ戻ってきた。”と説明しています。それでは、実際に自身の市場価値を測り、伸ばすためにはどのような行動をとるべきでしょうか?(このような質問は、エージェントをしていると20代~30代前半の求職者の方を中心に受ける事が最近では良くありますね。)

【行動】
市場価値を上げるためには、2つのアクションが求められます。
タグ付けと発信です。

- タグ付けとは?
自分以外のヒトから、自分を認知してもらうためにタグを付ける事。個人を想起させるためのフックとなるキーワードを付けるイメージとのことです。最近はSNS等で、他人に検索されやすいようにハッシュタグ#を当たり前のように付ける時代ですが、自分自身も市場(他人)に検索されやすいようにタグ付けをすることが重要だという事です。

- どうやってタグ付けするのか?
タグは5つのカテゴリーに分類する事ができるそうです。(ポジション、スキル、業種、経験、コンピテンシー)自分自身にどのようなタグを付けれるのか最初は戸惑いますが、本書ではタグ分類表なるものが付録で記載されており、凡庸な私でも時間を掛けずにタグ付けができました。
それぞれのタグをかけ合わせる事によって、市場においての希少性を高めることができ、結果として市場価値が高まるという事です。参考に私が自分自身をタグ付けしたものを下記に記載します。
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#ポジション
法人営業、キャリアコンサルタント
#スキル
英語(中級)、MBA、セールススキル、キャリアコンサルティングスキル、仲介(調整)スキル
#業種
製造、人材
#経験
新規営業、既存営業、金融/不動産エージェント、大企業勤務、中小企業勤務、B to B、外国籍の同僚•上司とのチームビルディング
#コンピテンシー
柔軟性、異文化理解、成長意欲、チームワーク
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- どんなタグを獲得することで市場価値が高まるのか?
本書では3つの内のいずれかの要素を持つタグを身に着ける事で市場価値が上がると述べられています。1つ目は、既に持っているタグと離れたタグ。
例えば、私の場合、B to Bの法人営業のタグは持っているが、B to Cの法人営業は持っていません。To BとTo Cのどちらの経験も持っているビジネスパーソンはどちらか一方のタグを持っている人より希少性が高いでしょう。次に新しい職種に付随するタグ。現在では、IT領域でデータアナリストやデータサイエンティストといった職種が新しいと言えるでしょう。この分野でタグを獲得して、さらに自身の既存タグと掛け合わせることができればかなり希少な人材になれるでしょう。最後にホットなタグ。ITセクターやSDGsなど世の中でホットな分野を意識してタグを獲得する事も価値向上につながります。
私の担当する不動産分野では、少し前は物流不動産でしたが、現在はデータセンターに関連する業務を担われているビジネスパーソンの方の価値が高騰していると言えます。このようにどんなタグがホットなのかは我々のような転職エージェントに聞いてみる。または有名なベンチャーキャピタルの投資先をチェックする事によって、情報を得る事ができると述べられています。
どのようなタグを獲得するべきなのかは分かりましたね。

- タグの発信とは?
タグを付けるだけでも、自分自身のキャリアの棚卸になるという観点から意味のある行為だとは思いますが、本書ではタグを発信する事が重要だと説明しています。なぜタグを発信する必要があるのでしょうか?
タグは発信する事で企業からのオファーを呼び、さらにミスマッチを防ぐことができます。発信する事で会社からのダイレクトソーシングやリファラル、そして私たちのようなリクルーターから声がかかるようになります。実際、私がご支援している求人にフィットした候補者の方をLinkedInで探す際は、ポジション・スキル・業種といったそれぞれの検索カテゴリーにワードを入力して候補者を絞っています。
また村上さんは、SNSの発信はもはや身だしなみでタイムラインを通じて自分がどういう人か知ってもらうための場のようなモノだと述べています。今では企業の採用担当者がSNSで候補者の情報を取得しようとすることは当たり前だと言います。自分の志向や経験をSNS上に公開する事で企業が履歴書・職務経歴書、そして面接だけでは得る事ができない面まで考慮して採用が可能です。そうする事でミスマッチを防げるという事です。
タグを発信する事で転職市場から認知されて、企業やリクルーターから声が掛かるから、チャンスの数は増えるよね。というところまで分かりました。では実際に自分自身がどのようなタグを保有してかけ合わせれば、希少性を高める事ができるのか?それを明らかにするために”考え方”のアップデートも必要であるとのことです。


【考え方】
- 自分に必要なタグが何かを考えるために必要な事は?
まずは、目指すポジションを明確にする事が大事だと言います。ただ闇雲に何となくスキルを付けてキャリアアップを目指すという方法だと、その後のキャリアアップに繋がらないような事態が起きてしまったり、スキルを得る事が目的化してしまい、市場ではあまり評価の軸として考えられない資格ホルダーと化してしまう可能性があります。(とはいえ、私もMBAでビジネスを学びたいと思ったきっかけのうちの1つはなんかMBAのスキルがあれば、選択肢が増えるのでは?と思っていた事は否定できません。。結果的に、大学院に通ったことは良かったと思っていますが。。)本書では、まず目指すステップやポジションについて決定する。→自分の保有タグを整理して、そのポジションを獲得するためには何が足りないのか?何が武器になりそうなのかを整理する。という順序がキャリア形成に必須だと言います。
どんなポジションを目指すべきなのか?という問いに対しては繰り返しになりますが本書では、目指すべきポジションとは、自身の希少性を高めてくれるタグを身に着ける事ができるポジションである。と述べられています。


【価値基準】
さて、目指すべきポジションも明確になった後に考える事は、どのような価値基準で転職先の会社を選べば良いのか?という事ですね。B to B営業のタグが欲しいから、とにかく入れる会社に入ります!という考え方だとミスマッチが起きやすい事は何となく想像できますね。また、本書では有名企業であるから。という価値基準も転職を考える上では、危険だと述べています。なぜならば、有名企業で働くことがモチベーションになっている可能性があり、次の転職を検討する際にそこと同等かそれ以上有名な企業でないと転職できなくなり、選択肢を大きく狭める事になってしまうからです。終身雇用が当たり前、転職しても1回という時代であれば、その考えでも良かったかもしれませんが、キャリアを主体的に積み上げていく時代には選択肢が狭まる事は致命傷ですね。
それでは、何で会社を選ぶべきでしょうか?本書では、シナジーで選ぶ。と説明されています。日本語訳では相乗効果となりますが、よくM&A関連の記事を読む際に「A社とB社がM&Aを検討。営業拠点の統廃合でシナジー効果を狙っているのか?」などと目にしますが、要は1+1=2+αである事がシナジーだと私は理解しています。では、転職先をシナジーで選ぶとはどういう事でしょうか?本書では、シナジーとは”個人と会社がお互いに助け合いながら必要な役割を果たし、相乗効果で成果を出す事。”と述べられています。個人は、やはりタグを増やすために転職をすることが前提であり、そのためには成果を上げる事が必須です。いくら自分が欲しいタグを得られそうな会社に転職しても、成果が上がらなければタグは得られません。ですので、個人は、企業が自身の強みを活かしながら、成果を出すことができる場なのかを考える必要があり、一方で企業側は、この人は適切な投資をすればハイパフォーマーとして成長してくれるのかを検討する必要があると言います。
私の主観ですが、入社前に個人が会社の事について、調べ上げるには限界があると思います。しかし、以前よりはインターネットに情報が上がっているだろうし、SNSや友人を介して実際に働く社員の方とつながりを持ってダイレクトに情報を入手できる可能性は高まっているでしょう。タグを獲得するためにシナジーが出せるのか?という価値基準を持って、会社を調べる価値はあると思います。


【人間関係】
最後にアップデートするべきキーコンセプトは人間関係です。本書では、今までの狭く深くという人脈作りという考え方ではなく、広くゆるくのネットワーク作りが転職の思考法として重要だと述べています。
なぜ、広くゆるいネットワークが重要なのでしょうか?
理由の一つとして、”1つの業界と別の業界にある大きな隔たりを繋ぐ役割を果たすキーパーソンに出会うため。”だと述べられています。キーパーソンはどこに隠れているのか分かりません。ドラクエのはぐれメタルのようなレアキャラ状態です。だからこそ、広くゆるく網を張る必要があると言います。例えば、もしかしたら、この記事を見てくださっている方で食品メーカーの営業をしているけど、人材業界で働きたいという方が要れば、私がある程度までは繋ぐことができるかもしれません。そう考えると、あなたにとってのレアキャラが他の人にとってもレアだという訳では無さそうですね。また、自分自身のタグを発信し続ける事によって、たまたまその発信を見たあなたにとってのレアキャラの方が何らかのメリットを感じてアプローチをされるかもしれません。

◇まとめ・感想

目的・行動・考え方・価値基準・人間関係という5つのキーコンセプトを転職2.0の思考法にアップデートする事が、自身の市場価値を高めて我慢しない働き方を実現するために大切なことであるという事を、丁寧に述べられており、また読んですぐ実践が可能な作りになっている本でした。
本書を読んで、転職エージェントとして、また個人として考えさせられる点がいくつかありました。
- 転職エージェントとして思う事は?
今の日本の転職マーケットは、”超”即戦力採用を重視しすぎているのでは無いか?と思っています。
企業側は、採用の際にある程度の投資をすることによって、候補者のパフォーマンスを最大化させるという考え方が必要だと考えています。もちろん、ライバル企業のエース(超即戦力人材)を引っ張ってきて、初日からバリバリ成果を出してもらう事ができれば、それに越したことは無いですが、働き手が減っており、人材獲得の競争が激化している現代において、ある程度のポテンシャルを加味してヒトを採用して、投資や時間を一定掛けながら、投資額以上のパフォーマンスを出してもらうという考え方が、もっと主流になれば良いなと個人的には考えています。そのために、エージェントとして私ができる事は、業界やスキル、経験といった分かりやすいタグだけに目を向けて、候補者様を企業側に推薦するのではなく、コンピテンシーや価値観といった部分をについても触れながら、なぜこの人を御社が採用するべきなのか?を説くべきだと思っています。
また、自分自身が業界またぎを手助けできるような、キーパーソンになれるように努める必要があるとも考えています。今の会社は業界・業種ごとにチームが分かれており、KPIや成果もチーム毎に振り分けられますが、他チームとの連携をより密にして、候補者様の市場価値を上げるために邁進したいと思っています。

- 個人として思う事(実践したい事)は?
まずは目指すべきポジションを明確にしようと思います。以前より組織開発の仕事がしたいと思っていましたが、具体的にどのようなポジションを目指し、そのために足りないタグは何なのか?強みになりそうなタグは何か?という事を改めて検討しようと思います。また、社内外において自分のタグやキャリアの方向性を常に発信していくことも忘れないでおきたいです。どこに私にとってレアキャラとなる方が隠れているか分からないですからね!
最後までお読み頂きありがとうございました。












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