見出し画像

駅で出会った学生からのビッグサプライズ

靴磨き日本一周46日目。

5月18日。

私の誕生日だ。

今日が27歳だというのに、所持金は2,000円。

これじゃ泊まれる所なんてないので、今日も野宿が濃厚だなぁと思っていた。

ありがたいことに「誕生日おめでとう」というメッセージが100件近く届いている。

どうせ今日は野宿で、あまり深く眠れないだろうから一つ一つ丁寧に返信をしていた。

国の自粛要請で夜になるとお店もほとんど閉まっていた。

佐賀駅のバス停のベンチに座りながら、携帯と向き合っていた。


すると2人の青年が5mほど離れた所で私を見ていた。


きっとオールジャクソン号の後ろカゴに書かれた「靴磨き日本一周」という看板を見て気になっているのだろう。


私はその子たちに話しかけてみた。

「今靴磨きしながら日本一周してるんです。この自転車で」

『そうなんですか!この自転車で!』


それから少し旅の話をした。


少し話したらすぐに帰るだろうと思っていたが、案外興味深く質問してきたり、楽しく話を聞いてるようだったので、就職のことや「なぜ靴磨きを始めた」のかなども話した。


「自分靴屋さんで働いてるんですけど、靴磨きのことお客さんに聞かれてもなかなか答えれなくて。」


と1人の青年が話してきた。


「じゃあ僕今日時間あるし、あなたの靴磨きながらレクチャーするよ。お金はいらないよ。」


相手は学生だし、どうせ長話するなら靴磨きしながらやった方がその青年にとっても今後の役に立つし、一つの靴磨きの良さを知ってもらえればいいなぁと思って提案した。


「初めて靴磨きをプロの職人にしてもらった時、いつもと違うことが起きたんです。

普段ならエレベーターが開くと我先にと降りるせっかち野郎だったが、綺麗な靴を履いてるというだけで"開"のボタンを押しながら『お先にどうぞ』と言っていた。

その時に分かった。靴磨きは靴をメンテナンスすること以上に、"上機嫌"を売ってる職業なんだと。

私は靴磨きを世界中でして、上機嫌ウイルスを足元から撒き散らしたいんです。」


深夜の佐賀駅。


夜は心地よい風が吹いていた。

ほとんど人通りがない所で青年と2人だけで"靴磨き"について語った。


靴磨きが終わったら、その青年はとても喜んでくれた。

「もしお客さんで靴磨きのことに聞いてきたら、これからはあなたがお伝えする番ですよ。」

私はそう告げて、靴磨きセットを直していた。

するとその青年は「これ、お気持ち代です。」

と言って5,000円を渡してきた。

「いやいや、今回は私がどうせ話すならと靴磨きを提案したので、学生だしお金はいいですよ。」


「いえ、払いたいんです。受け取ってください。
靴磨きってとても素晴らしいことだと学びました。」


感動した。

私が逆の立場だったら、5,000円も渡せるだろうか。

コンビニのミルクティーをリプトンの110円の物を買うか午後の紅茶の160円の物を買うかで15分くらい悩む私には無理だ。


私は青年の目をしっかり見て、「ありがとうございます」と言ってその5,000円を受け取った。


おかげで27歳の誕生日はインターネットカフェの個室で足を広げながら眠ることができた。


1時間前までは野宿が確定だと思っていたのに、最後の最後にその青年に出会ったおかげで屋根のついた場所で過ごすことができている。


あの青年はもしかしたら神の使いだったのかもしれない。


ドリンクバーのカルピスで1人祝う27歳の誕生日。


私の誕生日と、青年の思いやりに乾杯。


↑最新情報はこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?