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あの歌声が出せる人を、他に知らない

大好きな人が、この世からいなくなってしまった。
いや。正確にいえば、「大好きだった人」かもしれない。

でも、その一報を聞いたときに、想像以上に、かなしくて、つらくて。
今もなおそう思う自分に驚いたけれど、やっぱり今も「大好きな人」だったんだなって。

こんな風に、とおくなってから気づいてしまって、また寂しくなった。


あの歌声が出せる人を、私は他に知らない

今でこそ、「推しがいない」「沼れない」と思っている私だけど、学生の頃はそれなりに推しがいました。

その最たる人が、チバユウスケさんでした。

高校生になって、軽音楽部に入って、そこで初めて触れた、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT。

女の私には一生かけても出せっこない、男性らしさの塊みたいな歌声。自分にないものの象徴のようなその声は、それまで育ってきた中で、きいたことのない、かっこいい声で。その歌声にくらくらして、落ちるように好きになった。

普段CDを買わない私でも、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのCDだけは、レンタルしないで、けっこう自分で集めた。解散していることもあって、おそらくほぼ全部の楽曲を、何度も何度も聞いて楽しんでいました。

それから、たくさんのバンドを好きになりました。

a flood of circle、THE BACK HORN、THE PINBALLS、ELLEGARDEN、The Mirraz、OKAMOTO'S、THE BAWDIES、銀杏BOYZ、もっともっとたくさん。

でも。
チバさんの、あの、しゃがれたかっこいい歌声が出せる人を、私は他に知らない。


追いかけて、追いついた2013年

私が高校生になった頃には、バンドは既に解散していて、アベフトシさんもこの世を去っていて。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのライブに行くという夢は、夢を願ったその瞬間から、絶対に果たされることのない夢でした。

でもその頃、チバさんは未だ歌ってくれていて。
そのことを知ってから、ROSSOもThe Birthdayも追いかけて、ついに追いついて、初めて生の声を聞いたのは、2013年のROCK IN JAPAN FESTIVAL。私のフェスデビューにして、3日間通しで行った思い入れのあるフェス。

本当は1-2日目の2日間通しでもいいかもと友人と話していたところを、3日間通しにしたいと押し通したのは、3日目にThe Birthdayが出るからでした。

1番大きなGRASS STAGE。
The Birthdayが出るときに絶対に最前にいたくて、一緒にきていた友人と先輩のことも置いてきぼりにして、前の出順だったDragon Ashのモッシュに混ざりながら前に押し進んで。

最前でみたチバさんは、私が想像していたよりもずっと大人だったけれど、もっとずっとかっこよかった。やっと生の声がきけた感動で、ぜんぜん前がみえないくらい泣いてたから、もはや記憶が曖昧だけど。

涙がこぼれそうでラブコール
あの娘にラブコール

愛ってやつは自分勝手で
どうしようもない俺達だって
さよなら 最終兵器

あのとき、生歌できけてよかった2曲。


真似をしようとしたって何一つ満足にできなかったけど

私は、高校で軽音楽部、大学で軽音楽サークルにいて、7年間ベースを弾いた。

私はベース弾きで、女で、何もかも違って、チバさんの真似をしようとしたって何一つ満足にできなかった。でも、チバさんのことが好きな子や、チバさんに似た歌声の男の子をみつけては、バンドに誘ってコピーして、サークルのミニライブで演奏したりした。

その中でも、やっぱり一番思い入れがあるのは、世界の終わり。

悪いのは全部 君だと思ってた
くるっているのは あんたなんだって
つぶやかれても ぼんやりと空を
眺めまわしては 聞こえてないふり
世界の終わりは そこで待ってると
思い出したよに 君は笑い出す

7年間ずっと、ベースの運指だけは練習し続けていて、でも恐れ多くてバンドでやる機会はなかなか作れなくて、やっと最後の方で、みんなを誘ってバンドでやった曲。

私はウエノコウジさんみたいなかっこいいピック弾きができなかったから、3本の指弾きで、テンポの速さに死にそうになりながら、でも気分は最高だった。


「この人が自分の目の前に現れたら、人生狂っちゃうなっていう人、いる?」

社会人になって、バンドというもの自体が生活から少し遠くなって、聞く音楽は変わったり、変わらなかったりした。

それでもチバさんの声は相変わらず好きで、機種変したり、サブスクを変えたりしたときも、一番最初に移し替えるアーティストの中のひとりだった。

ただ、やっぱり気持ちに距離ができていったことは確かで、「沼にハマっているほどの推し」の感覚はなくなっていました。そう思ってた。でもね。

「この人が自分の目の前に現れたら、人生狂っちゃうなっていう人、いる?」

今年の夏、年上の友人と話しているときに、ふと振られた問いかけに、真っ先に浮かんだのは、チバユウスケさんでした。

出会わなくて、よかったね。この人生でよかったねって、あの時は笑ったけど、その半年後にこんなことになるなら、せめて、もっとステージに立っているチバさんに会いにいけばよかった。


今までもこれからも、きっと高円寺で探してしまう

好きなように生きる そんなこという奴
どうやらだめみたい でも高円寺は好き

学生時代から高円寺のあたりに縁があって、この曲を聞いてからというものの、高円寺の街を歩くたびに「チバさんいないかなあ」って、いつも思ってた。

高校の後輩は、それで1回本当に会えたって写真をみせてくれて、サインも書いてもらっていて、だけど私はついに1回も会えなかった。

でも高円寺を歩くたびに、きっとこれからも「チバさんいないかなあ」って思う。たぶん、一生思う。


(ジプシー・サンディーは、私が一番好きな曲なので、もうどこの歌詞がいいとかじゃないや)

チバさんの、あの、しゃがれたかっこいい歌声が出せる人を、私は他に知らない。
どんなバンドに出会っても、きっとこの先も、チバさん以上に好きな声には出会えない。

たぶん、大好きでした。

たくさん好きだったから、ぜんぜん離れられそうにないから。
それなら一層のこと、もっと溺れてしまえと思う。そんな日でした。

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