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9の好きと1の嫌いがもたらすデザインの話

こんばんは、sosekiです。
少し更新があいてしまいましたね。今日もデザインの難しさについて、少しだけメモを残したいと思います。

イノベーションの種を、殺す

デザインの仕事には、コンペ、すなわち複数の会社がデザインを提案し、1つが採用されるような仕事のスタイルがあります。個人的にはとても嫌いですが、より良いものを求めるのは企業としては当然かもしれません。

そんな仕事では、「尖り」のような、私はスパイスと呼ぶような工夫をすることがあります。すなわち、「安定した100点」のデザインではなく、少し突っ込んで「冒険した120点」を目指すデザインを提案することです。100点のデザインを目指すと、皆一様に同じものが並び、判断基準が主観に委ねられる恐れがあるからです。

ところが、そういう尖りを設けると当然、別のところに主観だったり、不安だったりが生じます。本当に大丈夫か?となります。

今回はその後者の話でして、すごく期待値が高いけど、若干不安が残るようなアイデアが生まれた時、日本では「期待値より不安を優先」する傾向がいまでもあります。120点だけど若干危ういのであれば、面白くないけど100点のアイデアが採用されます。

極端な例を一つあげます。動物のデザインを求めるコンペがありました。そこで私は、猫のデザインを提案しました。とても可愛く、またちょうどインターネットの流行も後押しし、猫の人気が上がっていた頃です。

その提案は、不採用になりました。
のちにその理由を聞いて驚きました。「猫がきらいって人がいるから、猫は採用しないことにしています」とのこと。いわく、犬嫌いは少ないけど、猫は嫌いな人がはっきり存在しているので、たとえ猫のほうが訴求性が高くても、採用できないとのこと。
そのときハッキリ言われたのです。「9の好きがあっても、1の嫌いがあったら我々はそれを認めることができません」と。

日本は品質大国です。ほんの少しのシワ、ほんの少しの汚れ、それで日本は土下座クラスのお詫びをするのが「当たり前」です。ポジティブに見れば、世界トップの品質が日々生まれており、これも「当たり前」です。そんな国、他のどこを見てもありません。
一方で、これは日本がイノベーション後進国であることを象徴するようにも思います。少しの冒険ですら、芽の時点で紡いでしまいがちなのです。ちょっと不安定な箇所があっても、トライアルエラーで育てる…そんな考え方は特に歴史を持つ大手企業には難しく、どちらかというと如何に安定を保つかばかりです。これを続けていると、いつの間にか日本は品質大国というレッテルを誇る技術後進国になってしまうと危惧しています。私のような末端デザイナーの世界でも、そんな感じなんですから。

これを、部下に伝えるときとても心臓が痛くなります。
優秀で才能あふれるスタッフが生み出すとても輝かしい芽を、成果に繋がるところまで育てる。私の力不足なだけ、というところも否めませんが、そういう事実が存在しているということを、ここにメモしておきたいと思います。


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