見出し画像

〜じゃない方ハーブの萌芽〜

あけましておめでとうございます。
2024年1回目はおととし12月のInstagramの投稿を載せます。
幻想的かつ美しい白とピンクの花が何弁も連なり垂れ下がって咲く「月桃」を育てたい!
だが月桃として買ったはずの苗が実は違う種のものだった!ならコイツは何者なんだ!?
と必須に調べたことが懐かしいです。
今ではすっかりコイツのことは信頼しており(主に防風林的な役割から)、実用化していないもののポテンシャルは感じています。
南国のハーブのショートストーリー、ご覧ください。


2022年、12月。

こちらベトナムでも最早「涼しい」とは言えなくなり、慌ててクローゼットからフリースを取り出す今日この頃。
日々の作業に追われる中、ガーデンのハーブたちの依然元気に育っている姿を見ることが私の最近の癒やしになっている。

"元気"に育つといっても
ハーブごとに元気の度合いは違うもの。

例えば、エキナセア。
植えてからずっと虫の深刻な被害に合わず、今日も変わらずピンク色の花びらを咲かせている。

免疫細胞をマッチョにしてくれるハーブ、エキナセア

ペパーミントは元気を持て余し過ぎており

ミントの香りはスッキリとして本当に気持ちが良い

地元に根付くイネ科、マメ科の雑草に次ぐ第3勢力として仁義なき戦いを繰り広げている。


ネトルはモサモサ。雨続きが功を奏したようだ。

触ると棘が刺さり痛い。ニードルの語源とされる。

しかしそんなハーブたちを差し置いてダントツに元気だと言えるのは

写真のコイツに違いない。

………………………………………………………………


「お前は"月桃"という名前だ。ちゃんと成長するんだぞ。」
ベトナムの何処かで生を受け、親元を離れ苗の状態で私達の庭にやってきた。

"月桃"は4月には腰の高さほどの背丈で風にユラユラ揺れる可愛らしいヤツだった。

だが可愛い時期はすぐ過ぎるもの。

その成長は目を見張るものであり、虫害知らず病気知らずの風の子状態。古株のハーブもついには先輩ヅラができなくなり、後輩である"月桃"を下から眺めるしかなかった。

その"月桃"にはある疑惑が浮上した。

それは
~本当は月桃じゃないのでは?~
ということだ。

……………………………………………………………………

ここでひとつ説明すると月桃はショウガ科 ハナミョウガ属に分類され、その仲間の見た目は非常に酷似している。

月桃かどうかを判断する確実なポイントは花だ。

月桃の花は下に垂れ下がるのが大きな特徴。
そして原色と言うべきだろう、ピンクと白と黄色の3色で構成されている。他の仲間は上向きに咲くものもあれば、花の色が異なるものもある。

要は花が咲いてからじゃないと正確には月桃とは判断できないらしい。

更に言うと、花部の芳香成分は他の仲間より抜きん出ており、月桃だけが精油として販売されている実績がある。

私たちはその精油を抽出したいがために購入したようなものなので間違っても他の仲間であってはならなかった。

…………………………………………………………………

コイツは本当に"月桃"なのか。
もし月桃じゃなかったらどうしよう。
私はコイツを愛せるのだろうか。

すくすく育つ"月桃"を横目に「育ての親」は疑念を抱くようになっていた。





9月26日。
このときは確か久しぶりにガーデン全体を歩き回っては写真を撮った記憶がある。

普段は目につかないその場所の"月桃"に見慣れない色を発見し、歓喜と不安を抱きながら静かに近づいてみると

花が咲いていたのだ。上向きに。

きれい、きれいなのだが!

咲く向きとは裏腹に、私のテンションはまるでジェットコースターのよう。

私は酷く落胆した。

そう、コイツは月桃なんかじゃない。
月桃の仲間の「クマタケラン」というヤツだったのだ!!

……………………………………………………………………

「キミはクマタケランだったのか。。。」

これからはクマタケランとして育てるしかなくなった私たち。
アロマテラピー、お茶界隈ではハナミョウガ属の中で圧倒的な知名度を誇る月桃。
その他のハナミョウガ属はいわば脇役のような存在。

しばらく前からお笑い界では「じゃない方芸人」というコンビ格差を表す言葉が生まれた通り、クマタケランもその意味では

"じゃない方"ハーブ、もとい

"じゃない方"ハナミョウガ属

となるのではないか。

「しかし、せっかくこんなにも月桃と似通った特徴があるのだからもしかしたら…」
という少しの期待は落胆のすぐ後から感じていたため、私は撮影した帰りにその全容を調べてみることにしたのだ。

………………………………………………………………………

どうやらクマタケランは月桃とアオノクマタケラン(ハナミョウガ属)の交雑種であるらしい。
色んなサイトを調べてみると、そういう記述がチラホラと出てきた。
さらに調べてみると、

①鹿児島~沖縄では昔から薬草、郷土料理として使われていた。
②地元の人の中には月桃とクマタケランの区別をしない人もいるという。すべてゲットウまたはサネンと呼んでいるとか。
③薬効も月桃と近しいらしい。

そんなところか。

少し詳しく見てみると

①古くからその地域では月桃はサネン、クマタケランはカシャと区別している。とくにクマタケランの葉で包むヨモギと黒糖を使った餅「カシャ餅」は奄美大島の郷土料理だそうだ。おにぎりなどもクマタケランの葉で包むとか(笹の葉のように)。
地元の方曰く、葉の香りは
「クマタケランは雲、月桃は泥」と例えるほど
クマタケランの葉の香りは良いらしい!

②区別をしない場合、月桃とクマタケランは総じて「サネン」と呼ぶらしい。
あるブロガーは地元の人に月桃の生息地を案内されると、そこにはクマタケランが生えていることもあったという。
「月桃の葉を使っている」のような描写は果たして月桃なのか、クマタケランなのか。
いまいち確証を持てなくなってしまう。

③月桃の葉の主な薬効を箇条書きにすると
○ポリフェノール…赤ワインの約34倍
・食物繊維
・ミネラル(カルシウム、マグネシウム)
他にも殺菌抗菌作用が強いので、上述した通り餅やおにぎりの包みにも使用したり、防虫作用もあることから葉を細かく切り、布に包みタンスに入れておくと虫食いを防ぐこともできるらしい。

クマタケランは月桃に近い成分だとしたら、そういうことなのだろう(無理やり)!

………………………………………………………

なんだ、月桃に負けず劣らず活躍できるのかいな。クマタケラン。

落胆した気持ちが底をついたと思ったら、どんどん気持ちが晴れやかになってきた私。

花の芳香成分は月桃に軍配が上がってしまうが、クマタケランの特徴は「葉」にあり!

軍師である私は作戦を変更するやいなや葉を収穫し、乾燥し、お茶にしてみることにしたのだ。



1センチ強に刻んだクマタケランの葉では、抽出時間がかかることを予想して5分間とした。
月桃茶は偶然楽天で購入していたため、相対的な評価となる。

[香り]
月桃茶は、一瞬バラを思わせる華やかさと南国のスパイシーさが混ざったような香り。脳の中枢神経に伝わり嗅ぐだけでリラックスしてしまう私。対してクマタケラン茶は、んー、甘さと酸味とスパイシーな香りが混じったような、でもほのかに緑茶のような落ち着く香りでもあるのかな?

嗅ぐ度に「畳」や「縁側」「スイカ」を思い出してきて…。

華やかさで言えば月桃の勝ち!

[味]
月桃茶は、香りが秀でている分、味を確かめるとあれ?なんだか味がしないのか?いやいや、ほのかな甘みとお茶っぽさがある。でも香りに隠れてしまってちょっと残念な私。

対してクマタケラン茶は、「畳」や「縁側」「スイカ」だった!
クマタケランの葉の芳香成分がそのまま味になったようだ。酸味と苦味の少しエキゾチックな味の後から緑茶ような渋みが口に広がるので、そのまま飲んでもよし、ブレンドするもよし。これはお茶だねぇ🍵

クマタケラン茶の勝ち!

※購入した月桃茶と自家製クマタケラン茶の製造方法は異なる可能性があります。例えば焙煎、蒸しの有無。

………………………………………………………………

熊竹蘭。別名カシャ。

古くから生活の中に溶け込んでいたことを知ると、この「3m級のでくのぼう」がますます好きになっていた。

現在、クマタケランの根元は自然のトンネルのようになっており、よく鶏の親子が根元を散歩している様子を目にする。私たちが使わなくともクマタケランはこのガーデンの一員として立派に生きている。

…でも、せっかくだから葉っぱを使わせてくれないかな?

私たちは近いうちにクマタケラン茶、かブレンドティーを1つの製品として販売する計画を練り始めた。



最後に。

萌芽とは。
文字通り「芽生え」という意味がある。
しかし、他には「物事が起こること」としても使われている。

もしクマタケランで例えるなら、私たちのクマタケランがこのガーデンに来てくれたこと。
そして、ハーブとして人のために使われること。

2回の萌芽を経てクマタケランと私たちの関係が今後とも続くことを願いたい。

……………………………………………………

後日談

あれから1年以上が経過した今、クマタケランは
3m級にとどまらず5,6m級にまで成長した。
「進撃の巨人」の小さな巨人でもこのくらいの高さなのか…。

白い花エルダーフラワーでも私の背より高い。

土の中に株があれば切っても切っても生えてくる。乾季の全く雨がふらない時期でも枯れることは全く無く雨が降るまで耐え忍ぶ。現在、庭の周りに植えておいたクマタケランがいい感じに成長したおかげで見栄えの悪いフェンスや雑把に建てられた煉瓦の壁を隠してくれて景観の美化に一役買っている状態。花が咲く時期のみごたえは十分。

肝心のお茶なのだが、乾燥したてはとても美味しいのだが、
・どれくらいの乾燥時間で酸化してしまうのか
・乾燥前のローストの有無、またその時間
など問題があり、通常業務に押されてできていない。

ただプライベートでは好んで飲むお茶のひとつになった。
特に腹痛やなにかにあたってしまったとき、コイツの強力な殺菌効果によって比較的短時間で症状が緩和されるのだ。

また、近々大量の葉を採りその芳香成分を抽出したいとも考えている。
精油とまではいかないが、芳香蒸留水を抽出したい!
自家製の化粧水として活躍してくれるであろう!

そして半年前位に「月桃」の苗を買ったのだ。花は咲いていないものの、葉の色や形、何と言っても信頼できそうなところから取り寄せたので
こいつの成長を密かに楽しみにしている。

成長は遅いがベトナムの気候で順調に成長している月桃


#ベトナム
#クマタケラン
#熊竹蘭
#月桃
#農業
#ハーブ
























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?