意味も聞かぬまま

平日の昼下がりにしつこく電話が鳴っていて、全てを悟った

スマートフオンは離れたところに置いて一晩、誰からの連絡も一切受け付けずに、あら、また机がヴァイヴ機能で震えている
とにかく電話が切れるまでじっと其れを見守った、悪い癖だ
ずっと心がザワザワしていて眠れないかと思っていたけれど、前日までの疲れと晩酌にしてはかなり多めのアルコールが手伝って気絶するように眠った
ふわりふわり、珍しくたくさん夢を見た、そして目が覚めて恭さんが死んだことだけは現実だった

先週会いに行ったのは知人から話を聞いたから
電話をしたら恭さんは息のような声で出てくれた
その時点で俺は泣いてしまっていて、とにかく翌日会いに行く旨を伝えた
「タケルくんに用事があるから明日福岡行くんすよ、ついでに会いたいから住所を教えて欲しいっす」と恭さん譲りの強がりをかました

ろくに四万円を借り、翌日、新幹線に文字通り飛び乗った
会いに行くと恭さんのお母さんが快く迎え入れてくれた、その時に手土産の一つも持たずに来てしまったことを恥じた
椅子に座る恭さんを見て、、グッ と堪えて、体調を気遣いながらのたった二三時間だったか、色んな話をした
もう付き合いは十年を超えていて、たくさんの思い出話、お互いの近況や、とにかく色んな話をした
俺だって大人だ、いくら頭がよくないとは言え察しがつく、それでもすげーーーー阿呆のふりをしてこれからの約束をたくさんした
恭さんにとって酷かなとは思ったけれど、また会えるなら理由なんて何でもいい
とかく、これからの約束を、なるべくたくさん、した
ライブはエレベエタ付きのライブハウスなら出演出来るとのことだったので「Zeelaでまたオイフェスやるんで、エレベーターもあります。絶対出てください!」と日付けすら決まっていないイベントをその場で誘い、オーバーイグニッションフェスティバル2023の開催と、envoy from the silenceの出演が最速で決まった

出会いはいつだったか、バンドマン人生を思い返せば前身バンドからそれ媚び初期の頃はだいたい恭さんに可愛がって(虐めて)もらっていた
若くて、デカくて、怖くて、理不尽な先輩だったけれど、ずっと格好良くて憧れだった
今や古のバンドマン脳味噌の基盤はこの人によって培われたものである
俺が言えるほどに頭の悪いツアーを回っていて、またそれがやけに格好良く見えた、俺もいつかはとその背中を追いかけた

前回のオイフェスに出てもらった時、既に色々と聞いていたからiTucaと共に対バンを叶えた
強烈なセットリストで大人気なくぶちかましていた姿「なんやねん、めちゃくちゃ元気やん!死ぬ死ぬ詐欺!笑 また早よ対バンしましょうね!」

したかったなあ対バン、先週わざと終電を逃して泊まればよかったかなあ
こうしている間にも後悔が涙と共に止めどなく溢れてくるもんでして





恭さん、二年前のオイフェスからよく踏ん張ってくれました、先週会えてほんまに嬉しかった
しんどそうやったのに格好付けてたなあ、格好良かったわ
なんの意地悪か知らんけど最後までエンボイの意味は教えてくれんかったなあ

散々世話になったくせに別れの挨拶もなくすんません、十年前やったら絶対瓶ビール投げられてるな笑
iTucaが最後に会いに行こうって誘ってくれたんやけどさ、怖くて
俺自身が鬱病あがりのメンヘラクソ野郎やから、心の底から大好きな人が死んだことに直面してしまった時に自分を保てなくなりそうで

さっき出棺されたって教えてもらったよ
時間をかけてきちんと受け入れるから、落ち着いたら線香上げに行きます
俺らがまだまだ繋いどくからね、俺とアキラの憧れたダークヒーロー
クソお世話になりました、ほんまにありがとうございました

おやすみなさい

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