短編小説2『腐りかけのクリームチーズ』
まえがき
こんにちは!梨亜奈です。
最近こんなことがありました…
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(やばいやばい)
ハルは台所で焦りに焦っていた。
材料をすべて混ぜ合わせた、ベイクドチーズケーキの生地から、酸っぱい臭いがするのだ。
(もしかして......何かが腐ってた?
明日はお母さんの誕生日だから、奮発して良いヨーグルトと純正生クリーム買ったのに、これじゃあパアだよ......)
“ヨーグルト”と“純正生クリーム”。
大人にとってはなんてことない支出かもしれないけれど、中学生のハルにとっては大きな買い物だ。
(なんでだろう......あっ)
ーー冷蔵庫にあったクリームチーズ。
ハルはチーズケーキの材料に、お金が足りないからと、冷蔵庫の奥に落ちていたクリームチーズを少し拝借していたのだ。
ちなみに未開封ではあったが、消費期限までは確認していなかった。
(箱!クリームチーズの箱はどこ!?)
辺りを見回すと、ビリビリに破けたクリームチーズの箱が目に留まった。
「あちゃー......」
「どうしよう。うーーん、お母さぁーん」
ハルはひとりで悩むことを諦めて、泣く泣くお母さんを呼んだ。
台所の隣の部屋にいたお母さんは、すぐにやってきた。
「どうしたの?ハル」
「なんか、ケーキの生地から酸っぱい匂いするんだけど、冷蔵庫にあったクリームチーズ腐ってた?」
「クリームチーズ?あれはあなたに頼まれて昨日買ってきたものだから、大丈夫だと思うけど」
「あれっ、そうだったっけ?」
するとお母さんは、ケーキの生地を少し嗅いで言った。
「ああ、ヨーグルトの匂いね」
「えっ」
「あなた、ヨーグルト入れるって言っていたわよね?」
「うん。そういえば、ヨーグルトな気がする」
「そう。完成するのを楽しみしてるわ」
「うん、ありがと」
そうか、クリームチーズを頼んだのも私で、ヨーグルトを材料に混ぜたのも私か。
私は自分が何をしたかすら忘れていたのに、レシピもしらないお母さんが一瞬で解決しちゃうなんて、
お母さんにはかなわないな、と思った。
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