第233話:もはや昭和ではない
かつて図書館に勤務していた時、「もはや戦後ではない」と書いた『白書』を見たいという来館者があった。
書庫に潜って。1956年の『経済白書』を引っ張り出し、これがあの有名な序文の一節の載る白書かとちょっと感動してみたりした。
先日、ニュースで「男女共同参画白書」に「もはや昭和ではない」と書かれることになったと報じられていた。2022年6月である。
「もはや昭和ではない」
そう、平成も終わり令和となっている。令和の今、この時点から昭和を振り返ることは、僕らが昭和世代が明治を見るような感覚なのかもしれない。
無論「男女共同参画白書」であるから、女性の立場を意識しつつ、結婚や家族の在り方をサラリーマンの夫と専業主婦の妻と子という家庭像からの脱却させる意識が働いている。
その通りだろう。
ただ、「もはや昭和ではない」というフレーズに微妙な思いが走った。
「そうか、終わったか」みたいな。
僕らの時代が通り過ぎていってしまったような。
戦争に彩られた前半を僕は知らない。
僕の知っている昭和はこんなだろうか。
家族を養うためにみんな頑張って働いた。
汗をかいて貧しさから立ち上がった。
自動車や洗濯機、冷蔵庫、電話、テレビ、高速道路、新幹線・・。
努力や根性、頑張ることが大事だった。
巨人の星、柔道一直線、アタックNO.1、エースをねらえ・・。
夢見るために、正義の味方がどこかにいた。
黄金バット、ウルトラマン、仮面ライダー、水戸黄門・・。
ある意味では、とっても図太く単純な価値観の中にいたのかもしれないが。
喫茶店のクリームソーダ。
緑色のソーダの中で
バニラアイスと僕がふわふわ溶けていく。
・・・降る雪や明治は遠くなりにけり:草田男
■土竜のひとりごと:第233話
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