第78話:ある船乗りの夢
パチンコにたまに出掛ける。
しかし勝つことは稀で、大概は負けて帰る。今のパチンコはそれこそ万単位の金の動きをする台ばかりなので、貧乏な僕には危険。
だが、暇があって、しかもその暇ゆえに生ずる諸々の何かを忘却したいときには、パチンコは良い。誰にも気を使わずに金を払って集団の中の孤独を楽しみたい時もある。
清水に住んでいた時分のことだった。
その日も例によって持ち金を使い果たして帰ろうとすると、突然ある男に後ろから呼び止められた。その男は大柄で、随分ラフな恰好をしてはいたが