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海まで100km 2004夏 ③

拓也は数年後に結婚した。拓也は、恋多き男だったが、いろいろな出会いを経て結局、大学時代につきあった人と結婚した。

俺らは昔からよく4人でつるんでいたが、おもしろ半分で海に遊びに行った帰りに、拓也の彼女の家に寄ったことがあった。

彼はその旅で彼女におみやげを買っており、それを帰りに渡すことになった。
彼女の実家は、お店を営んでおり、俺たちは三文役者のように、客になりすまし、お店の手伝いをしていた彼女をのぞきにいったのだった。
田舎の顔見知りしか来ない店に見慣れない人間が、たて続きに3人も現れたらどう考えてもおかしい。。。
結局最後に拓也が彼女に会い種明かしをした。
とても色が白い娘だったことを覚えている。

その後、拓也の結婚式は、奈良市内で営われた。
友達として参列し、彼らは音大出身だったため、余興が本格的でクラシックコンサートだったのを覚えている。
下手にカラオケなんか披露しなくて本当に良かったと思っている。

最後に、スモークをたいた階段から下りてくる拓也を
乱暴に胴上げした記憶が蘇る。

・・・

あの事件(※海まで100km参照)以来、郁夫と俺達は少し、ぎくしゃくした関係になり、疎遠になっていた。

あれほど一緒に行動していた郁夫から連絡がぱたりと途絶えてしまったのだった。

兵庫県に就職したため、距離的にも遠くなったのだが、それより何か、言葉には言えないわだかまりができたのかもしれない。

自分の弱いところを俺達に見せたことが、恥ずかしかったのかもしれない。
そういえば、彼が北海道に旅に出たときも、ぶっきらぼうにおみやげが届いた。
そうかと思えば、突然数年ぶりに、「いついつ空けといて」と用件も言わずに繰り出してくる電話があった。

俺達は数年ぶりに大阪で再会した。スーツ姿で・・・。

話の内容は、就職先で知り合った子と恋愛をし、
晴れて結婚するとのことだった。
あれから郁夫も俺達の知らないところで頑張ったんだろう。
あの事件を知る俺達だからこそ余計に感動した。
そして彼の結婚式に出席して、とりあえず彼の幸せそうな顔を見れただけでもよかったと思った。

・・・

政則は、相変わらず生活感を感じさせることなく、一人で大都会で暮らしていたはず。。。だ。

 (あれから俺もいろいろあった。それに名古屋へ転勤したりで、しばらく離ればなれになっていた)

政則はずっと大阪で一人頑張って夢を追いかけていた。
夢のために会社を辞め、夢の実現のために、自由な時間が欲しくて夜勤の仕事をし、暗闇をさまよっていた。

ふらっとインドに行ったり。。。

彼女とつきあっていても「俺、ほんまに彼女のこと好きかどうかわからへんねん」と言ったり。。。

でも飄々と生きる姿は、まるで空を流れる雲のようでもあった。

そんな彼にすごく惹かれる自分がいた。

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