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回想の18切符の旅
30代の初めは、凄く仕事が忙しくて精神的に疲れ果てていた。
大した趣味もなく、流されるように過ごしていた。
ある時、手にとったアウトドア雑誌で、初めて旅人の存在を知ることになる。
「ホーボージュン」さんを知ったのはその時だ。
まだジュンさんも若くて、デカいザックを足元に置いてヒッチハイクしているポーズが、たまらなくカッコよかった。
そのうち、ビーパルも読み始めて、シェルパ斉藤の存在も知った。
自由な生き方と旅のスタイルは、かなりテンションが上がった。
とにかく旅がしたくて、自動車に安物のテントを括り付けてキャンプ旅したり、18切符で旅したりするようになった。
18切符を知って、当時1日当たり2300円で、日本国内どこまでも行けることが嬉しかった。
当時は旅行以外で遠方に出かけることはなかったので、ザック1つで知らない景色を見るのが楽しかった。
最初の18切符の旅は、札幌から自宅までの旅。
たまたま札幌に木曜日、金曜日と出張で来ていて、
金曜日の夜は飲み会。
夜行列車の出発は0時過ぎの札幌駅発だったので、飲み会が終わってからでも、間に合った。
さっきまで革靴をはいて、ワイシャツを着ていたが、トイレでスニーカーとTシャツ短パンに履き替えて18切符の旅に出た。
飛行機だと、数時間で移動できるものを鈍行列車で2日かけて移動。
夜行列車はかなり混んでいて、廊下やデッキまで人が溢れていた。
途中、長万部で対行列車のすれ違い待ちで3時間停車した。
函館で、朝市に行った。
青函トンネルを始めてくぐった。
秋田で3時間乗り換え待ち。
日本海に沈む夕日を見た。
直江津駅のホームの待合室で野宿した。
ただ、ひたすら電車に乗っていただけなのに、刺激的だった。
こういう、ガイドブックに載っていない偶然見かけるだけの景色が、たまらなく良かった。
どんどん移動手段が速くなっていく世の中だけど、スローな旅こそ最高の贅沢だと思う。
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