実家が無いの話

昔から漠然と実家(故郷)はずっとあるもんだと思っていた。

若い時は、早く一人暮らしがしたかった。
とにかく一人暮らしがしたかった。
町を出たかった。

社会人になって、すぐに一人暮らしを始めた。
すぐ転勤になったので、物理的にも遠くなった。

2年して、地元にIT関連の会社が出来たので、
一度実家に戻ることになった。

次に家を出たのは、結婚したとき。

それ以来ずーっと実家から離れた。
町から離れた。

長く実家を離れていると、
昔使っていた自分の部屋も劣化してくる。

本も背表紙が焼けて、使わない物はいつのまにか押し入れに仕舞われた。
蜘蛛の巣が天井にはって、
部屋の隅っこにはカメムシの死骸がいた。
最後は、知らないうちに物置になっていた。

...

2017/10月に実家が被災した。

台風の影響で、畑と山が崩壊した。。。

実家の中庭に大きな穴が空き、家の下の土が無くなり家が半分宙に浮いていた。

結局、町から避難勧告が出され
実家には住めなくなった。
最後は取り壊しに。。。

土地は寄付となり、跡形も無くなった。。。

親父は、廃校となった学校の、教員住宅に引っ越した。
実家が無くなってたいそう気落ちしていたが徐々に慣れて、そこで、何度か年を越した。
トイレは離れていて雨や雪の時は大変だった。
あとお風呂が無かったので、近隣の温泉に行くしか無かった。

数年後、親父が病気で入院した。
町営住宅の一階に空きが出たということで、
退院の時に、そちらに引越しした。

退院後、引越し先に連れて行ったとき、
親父は戸惑っていた。

小学校の教員住宅があったのは、山頂だった。
町営住宅は、山麓だったので雪の心配が無くなり、風呂もトイレも普通にあった。
自分的には良かったが、親父は故郷から
違う地区に移り悲しかったかも知れない。

何年か暮らす間に、親父は何度か入退院を繰り返していた。
その度に介護で、その住宅に行って泊まった。

実家では無いが、自分が通っていた中学校の近くということもあり、まだ地元感はあった。

去年の10月に親父が倒れ救急搬送された。

医者は、一人暮らしはもう無理と言った。

退院後の受入先が決まるまでは入院させてくれることになった。

そして町内の特別養護施設に入所になった。

3月の中旬に、町営住宅の片付けに帰った。

実家が無くなり、引越しを二度したので、
随分荷物は少なくなっていたが、
それでも掃除を含めて4日かかった。

部屋の立ち合いを終えて、故郷の町を後にする。

「とうとう、故郷に帰る家が無くなった」

と思った。

ずっと故郷から出ていたが、帰るところが無いというのは、寂しいもんだな。。。

片付けしてからようやく落ち着いたので、
このことを書くことにしました。

最近、出身中学校も廃校となった。
小学校は随分前に廃校。
高校も合併して校歌が変わったらしい。

21世紀にコンビニが無い町。

長文読んでありがとうございました。

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