君は希望を作っている #47

「ここのチェーンはね、企業として障害者の雇用に積極的らしいんだ」
「そんなうまい話が……」
黒崎もスマホで企業のHPへ。
「いちよう書いてある、ここなら通える、実際見た人がいるかどうか……」
「っていうかほら、働いている人の声」
黒崎は海老原のスマホをぶんどって言った
「知的とかじゃない……身体はないの?」
「聞いてみれば?」
スマホをいじりだす黒崎、どうやら少し乗り気のようだ。
「正社員じゃないかもけれど、ここも接客業で、ミニスカートだよね?」
目が輝き出した黒崎に海老原は照れ笑いをした。
「たまたま見つけたんだ、黒崎さんにいいかなぁと思って」
「なんでよ」
「友達じゃない」
信じられないものを見るような目の黒崎に海老原はあたりまえのように言った。そして続けた。
「言ったよね。『家事でも仕事でも、ちゃんとしてから女を口説け』って」
「あぁ、そんなことも言ったなぁ……」
憎まれ口を覚えられて、黒崎は照れて笑った。少しの沈黙の後、海老原は黒崎の目を見ず、少し真面目な顔になり、暑くないはずなのに少し汗を流しながら言った。
「だからちゃんとするよ、僕はきぼうを卒業する、でも、これからも会ってくれる?いや、会って欲しい。一人前になるのには時間がかかるけれど、いつか自分の店をやるようになったら、ウェイトレスをやって欲しいんだ。おばちゃんでも、おばあちゃんになっても」
「え?」
真剣な顔をして俯く海老原を黒崎はからかった。
「なにそれプロポーズみたい、ってか、友達っていうのも納得してないんだけど、あんたとわたし、友達だったっけ?」
「友達なのが嫌なの?」
その真剣な眼差しに黒崎は笑うのを止め、海老原は続けた。
「じゃあ、友達からお願いします」
黒崎も海老原に釣られたか、神妙な顔つきになって言った。
「あんたみたいなクソつまんない真面目クン、同じくらい真面目ないい子ちゃんとくっつけばよかったのよ。沙羽みたいな。自分で言うのも変だけどわたし性格悪いよ?」
「それはきっと大丈夫、さっき『おめでとう』って言ったよね?歩けたみたいに、黒崎さんは変われるんだ、きぼうだってこれからも手伝ってくれる、僕ももちろん力になるよ」
黒崎は俯いている、泣いているのだろうか。
「……駄目かな?」
黒崎は顔を上げ、涙目を隠さずに、笑って言った。
「TVやネットで特集組むような、有名な一流の料理人にならなきゃ許さない」
黒崎はそして、わたしは明美って呼べば、あなたは?と問いた。

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