君は希望を作っている #36

海老原は笑った。
「うーん、まぁ自閉症は平行して色んなことするのは苦手って話あるけど……ねぇ沙羽、なんとか『書き物』ぐらいの大きなくくりにできないかな?確かにあんまり最近やっているとこ最近見ないよ?社長にも言われたでしょ?」
うん、と沙羽は生返事、
「公募も頑張って欲しいけど、できればアプリも作ろうよ」
わかった、と沙羽、でもそれよりも……。
「希望って食べ物じゃないの?」
沙羽は皆に「そっち?」と問い詰められた。
「あのね、今そういう話しているんじゃないの」
「まぁまぁ、あのね沙羽っち、アイスクリーム屋さんでフレーバー聞かれるよね」
海老原は優しくたしなめた。
「ミント、チョコ、チェリー……食べたい味、希望の味、時々で違うじゃない」
沙羽はむくれていた。
「でも、小さいころは確かに溢れていたの、スーパーでねだった、クリスマスにはサンタにもらったの、なんで最近ご無沙汰なの」
沙羽はジタバタした。
「それは大人になったからかなぁ」
黒崎は論外だと言いたそうに言った
「あら、私は違うわ、この美貌に見合うハイクラスで誰もがうらやむ生活を、毎日送るのよ、みんなが私を慕うわ」
海老原ははっきり言った。
「人に自慢したいだけなの?長くは続かないよ」
「はぁ?私に説教するの?そんな正論ばっかだからつまんなくてモテないのよ」
黒崎は譲らない。沙羽は小さく宣言した。
「とにかく、売ってないなら、売るだけだ」
「え?」
皆は沙羽を見た。
 で、沙羽が希望を作りだした。
 希望をテーマにした絵本、希望モチーフのレジンのキーホルダー、希望の短編集、これらをちゃっちゃっとでもないけど作り上げて、河合に声を掛けて絵を描いてもらい、それも希望だと言い張った、黒崎のさおり織りも利用者の工芸品もいくつか引き取って、近くの小さな創作イベントで、店を出すと言ってきた。
「あきれた」
黒崎は言う。
「希望売りますねぇ……それ、ちょっと違うかな……」
海老原も困惑した、そりゃそうだ。
 当日、一生懸命に告知はしたけれど、創作物に興味がある人しか来ないので、かろうじて絵葉書とレジンが二、三個売れただけで、場所代の方が高かった。そんなもんです。
 希望って売れないのかなぁ、沙羽は少し落ち込んでいた。

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