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トム・ハンクス主演映画「グレイハウンド」を10倍楽しむために その3

前回は、映画の「主役級」である「駆逐艦」の成り立ちを語りました。

作中、アメリカ海軍の架空の駆逐艦「グレイハウンド」は、イギリスへ向かう商船団を護衛する任務につきます。しかし、そもそもなぜアメリカ海軍の軍艦が、イギリスへの商船を護衛するのでしょうか。

ざっくりと歴史を振り返ってみます。

Ash調べ、しかもWikipediaがメインの調べです。それなりに。

島国にとってのシーレーン

第二次世界大戦は、ドイツがポーランドに攻め込んだことから始まりますが、その緒戦、ドイツは電撃戦と呼ばれる大規模な機動戦を仕掛け、あっという間に北欧と北フランスを占領しました。

ダンケルクの戦いで英陸軍はひとまず、大陸から英国本土への撤退作戦に「成功」しましたが、フランスを占領したドイツはそこから英国本土に目を向けます。スピットファイアとメッサーシュミットが制空権を争ったことで有名なバトル・オブ・ブリテンで一旦はドイツ軍の侵攻を退けたイギリスですが、島国であることの宿命からは逃れられず、ドイツと戦い続けるには海上輸送による兵站の確保、つまりシーレーンの確保が非常に重要でした。

シーレーンを確保したいイギリスと、それを阻止しようとするドイツの攻防が映画の舞台である「大西洋の戦い」です。

そもそも、開戦前からドイツはイギリスのシーレーンを遮断するために周到な準備をしていました。機雷とよばれる海の地雷をイギリス近海にばら撒き、あらかじめ戦闘艦を大西洋に進出させておいて、開戦と同時に民間商船を攻撃しました。

今考えるととんでもないことですが、時は戦時、敵国の兵站の遮断はあらゆる作戦の基本でした。作中、Uボートが商船に群で襲いかかるのも、このような歴史背景があったのです。

第二次世界大戦に引きずり込まれるアメリカ

慌てたイギリスは、護送船団を組織して対抗します。つまり、商船団をまとめて、駆逐艦の護衛をつけ、潜水艦からの攻撃を迎撃しようというのです。

しかし、この段階ではまだどの国でも対潜戦闘そのものが未発達で、進出鬼没のUボートを簡単には防げませんでした。仮に見つけて急行しても、潜航して逃げられるか、船団から離れた隙をつかれて缶蹴りのように商船を攻撃されてしまいます。

また、1940年夏にフランスが降伏すると、ドイツのUボートは大西洋により近いフランスの基地を使うことができるようになり、攻撃頻度が倍増、さらにノルウェーやフランスの撤退作戦を支援したイギリスの駆逐艦は、ドイツの航空機による攻撃に対応できずに次々と沈められ、駆逐艦が足りなくなりました。そこでイギリスはどうしたか。以下、Wikipediaから引用します。

これらの状況下で1940年5月10日に首相となったチャーチルは、アメリカ大統領であるフランクリン・ルーズベルト宛に最初の手紙を書き、旧式駆逐艦の貸与を要請した。それは特定のニューファンドランド島、バミューダ諸島、西インド諸島にあるイギリス軍の基地を99年間の賃貸を引き替えに、駆逐艦基地協定 (Destroyers for Bases Agreement) を結び、50隻の旧式駆逐艦が貸与され、アメリカのイギリスとその連邦国への最初の加担となり、レンドリース法へとつながっていった。

ここで、アメリカの関与が始まります。アメリカは、古くはモンロー主義といって、欧州の争いごとには関与しない方針を貫いていました。第一次世界大戦には連合国側につきましたが、ウィルソン大統領は最後の最後まで中立を貫こうとしていました。

第二次世界大戦開戦にあっても、ルーズベルト大統領は「戦争をしない」と公約していて、今度こそ中立を守りたかったはずです。しかし、上記のような理由でまずは「駆逐艦の貸与」という形で間接的な支援が始まり、のちに戦争に必要なありとあらゆるものを「貸与」するレンドリース法が制定されました。そして最終的には、欧州で戦火が止んだ後も、太平洋を挟んで大日本帝国と戦争を続けることになるのはご存知の通りです。

つまり、アメリカが2度目の世界大戦に引きずり込まれていく、まさにその真っ只中がこの映画の舞台なのです。

英語の違いでわかる艦の国籍

映画では、アメリカ海軍の架空の駆逐艦「グレイハウンド」が、イギリス海軍の駆逐艦「イーグル」「ディッキー」「ハリー」と連携し、リバプールにあるイギリス軍港へ赴く、アメリカからの支援物資と兵員を満載した商船団の護衛を行います。

トム・ハンクスはアメリカ海軍所属の「グレイハウンド」の艦長役ですが、無線で前述のイギリス海軍駆逐艦の艦長たちと話をするときの、英語の発音の違いに注目して見てください。トム・ハンクス以外の艦長は、皆、パキパキのイギリス英語(つまり英語)の発音です。

まぁこれは1つの例ですが、時代背景を知った上で映画を見ると、このような細かい設定の違いに気がつくことができ、映画をより楽しむことができるでしょう。

参考:


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