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魂になった雲

毎朝、キッチンのテーブルの上にはこほーカップ
その上小さな雲にはが浮かんでいました。

これは、お母さんが入れるコーヒーの湯気でできた雲。
みんなはそれを「コーヒー雲」と呼んでいました。

コーヒー雲には、ちょっとした秘密がありました。

実は、この小さな雲には意識があったのです!

コーヒー雲は、窓の外に浮かぶ大きな雲たちを見るたびに

「あんな風に空を自由に飛びまわりたいな」とずっと思っていました。

ある日の午後、お母さんが掃除のために窓を開けました。

チャンス到来!

コーヒー雲は思い切って外へ飛び出しました。

「やった!これで僕は自由になった!」

最初に、コーヒー雲はハートの形になってみました。

「へへっ、かわいいでしょ?」

と得意げに空を漂っていると
突然ビュンッという音とともに飛行機が通過!

ハート型の雲は真っ二つに切られてしまいました。

「うわぁ!」

驚いたコーヒー雲は、バラバラになった自分を必死でかき集めます。

「よ〜し、もう一度がんばろう!」

と、再び一つの雲になりました。

風に乗って町の上を飛んでいくと、大きな観覧車が見えてきました。

「わぁ、すごい!」

コーヒー雲は観覧車のまわりをくるくると回り大喜び

そして遠くを見ると、向こうにヤドリギを見つけました。

「ちょっと休憩しよっかな」

コーヒー雲はヤドリギの根本にもたれかかりました。

休憩中、コーヒー雲は不思議な声を聞きました。

「やぁ、こんにちは!」

声の主は木の葉の上で羽を休めているトンボでした。

「わぁ、しゃべるトンボだ!」

コーヒー雲は驚きました。

トンボは言いました。

「君も珍しいね。コーヒーの雲なんて初めて見たよ。一緒に冒険しない?」

そして彼らは幻想的な花畑を飛び回り、楽しい時間を過ごしました。

暫くして

「ねえ、コーヒー雲…」

とトンボが言いました。

「君はもうすぐ雨になって地上に戻るんだね。寂しくなるよ」

その時です!

突然、コーヒー雲の中から何かが飛び出しました。

パーン!

という音とともに、コーヒー雲は光の粒となって空高く舞い上がったのです!

「わぁ!コーヒー雲が流れ星になった!」

トンボは驚いて叫びました。

実は、コーヒー雲は特別な存在だったのです。

たくさんの冒険を経て、コーヒー雲は魂を持つ星になったのでした。

その夜、町中の人々が空を見上げると、新しい星が輝いているのを発見しました。

家のキッチンでは
お母さんがコーヒーを入れながら

「あら、今日はコーヒーの香りがいつもより素敵ね」

とつぶやきました。

コーヒー雲は今も空で輝きながら、地上の友達を見守っています。

そして時々、トンボの友達に会いに地上に降りてくるのです。

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

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