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そして、会社に行けなくなった(エッセイ)


営業さんに、「適応障害」と診断されたという話をした。


そうしたら、心配してくれて、引き継ぎのことは気にしなくて良いと言ってもらった。

ただ、私は、もっと頑張らなければならなかったのではないかという思いが捨てきれない。


もしクリニックの人が、休職を強く勧めてこなかったら、診断書を出さなかったら。


私は続けよう、頑張ろうと思えたかもしれない。ちょうど父に相談したあと、クリニックに行ったので、相談した当初に頑張ろうと思ってた気持ちがへし折られてしまったような気分だった。


本当は、私はクリニックで認知療法とか、薬物療法を受けたいと思って、頑張ろうと思って行ったのに。

そんな思いが未だにある。ただ、強く休職を勧められた、その声に、診断書に、甘えてしまった。


今、後悔する気持ちと、開放されたという気持ちがある。

昨日、私は後悔でいっぱいだった。こんな中途半端でやめてしまってよいのか、私に仕事なんてあるのか、こんなんでまた会社で働けるのか。


どこに行ったって、嫌な上司の一人や二人いるでしょうし、同僚とうまくいかないこともあるでしょうし、後輩や部下に嫌われることもあるかもしれない。


私は、前の仕事を辞めたことも、今の仕事を一ヶ月で辞めてしまったことも、後悔している。


会社にいけなくなって、そのまま行かなくなるなんて、最悪のケースだ。

罪悪感でいっぱいで、それと同時に、なんでこんな職場に来てしまったのだろう、なんで嫌われてしまったのだろう、どこ行ってもうまくいかないのだろうか。


そんな気持ちでいっぱいだった。

やめれば、楽になると思っていた。でも、楽にはならなかった。


ただ、営業さんに行かなくて良いと言われたのに、会社に向かった。

そうして、私は、罵倒されるのを覚悟していた。


何しに来たんですか?

来なくていいって言われましたよね?

どうして来たんですか?


ただ、そんなことはなかった。上司は、最後まで優しかった。

先輩たちには無視されていたが、上司は身体をねぎらってくれた。


私は、引き継ぎ途中で会社にいけなくなったクズだ。一番最悪なやめ方をした。これからどうしよう。

ずっと、そう思っていた。昨日布団から出られず、行きたくないとなった日、やめると電話したら楽になると思っていた。


全然、楽になんてならなかった。苦しかった。なんで行くって言わなかったんだろうと、思った。


今からでも前職に戻りたい、いや、また時間を戻したい。そう思った。あの頃は良かった。なぜ頑張れなかったのだろう。そう、思って苦しかった。ずっとずっと。


夜、起きてしまい、このままでよいのか?と思った。このまま、寝たまま、何もかも営業さんに任せて、辞めてしまってよいのか?と。


それで会社に向かったのだ。怖かった。苦しかった。でも、このまま何も言わないまま辞めてしまう方が、余計に苦しかった。しんどかった。このままでは永遠に後悔する、そう思った。


勝手な行動をしたら、営業さんにも怒られるかもしれない、辞めたのだから会社に足を踏み入れるな、そう言われるかもしれない。


そう思っていた。でも、何も罵倒されず、何も言われず、ただ行けなくなって辞めるなんて、一生後悔すると思った。しんどかった。でも、会社に行くときは大丈夫だった。

行かないほうが、よほどしんどかった。家で苦しくて苦しくて仕方がなかった。こんな辞め方ってない、と思った。恨まれても良かった。蔑まれても良かった。

私は一生、この苦しみと向かい合わねばならないような気がしていたから。


会社についたとき、15分ほど前には着いていた。早めに来たせいか、あまり人はいなかった。


男性の先輩にまず会った。笑顔だった。大丈夫ですか?そう言われた。その人は、同じ部署だけどそんなに関わりはない人だった。でも、普通に接してくれたのが嬉しかった。

面接官の一人だったから、今更なんで来たのか?と言われるかと思っていたからだ。


もう一人の面接官だった上司とも、話をすることができた。その人は、はじめに書いたとおり、やはり優しかった。

ただ、後任が来るまで手伝えないかと言ったら、やはり駄目だった。

本当はもっとがんばれたんじゃないかと思っていると話したが、無理はしないほうが良いと言われた。


それは、そうだ。精神を病んだ人に追い打ちをかけるほど、ひどい会社ではなかっただけで、普段助けてくれるであろう人たちは、私のことを無視していた。

いや、完全に無視されていたわけではないが、LINEグループに入れてもらえなかったり、雑談に入れてもらえなかったり、迷惑そうな雰囲気を出したりする程度だった。


それでも、私には辛かった。派遣の割に前職よりも遥かにプレッシャーの大きい仕事、うまくいかない人間関係、憂鬱な毎日。


それらすべてをリセットしたかったのだ。本当に、なぜ頑張れなかったのかと、未だ自分を責める気持ちがある。


ただ、嫌われていると思っていた先輩方は会社におらず、話せなかったが、話せなくてよかったかもしれないと思った。

きっと、優しい言葉をかけてはくれなかっただろうから。そうして、自分をまた責めていただろうから。

 

貶されていいとも思った。むしろ貶されたいとも思った。


でも、やはり悪意に向き合うのは、怖い。今の私には、きっと耐えられなかっただろう。いなかったことに、正直心の底から、安堵していたのだ。


無視というのも、十分な悪意だと、私は思う。私は嫌われていたと思う。関わりのある人たちに嫌われるのは、やはり誰だって辛い。話さないと成り立たない仕事で、コミュニケーションが取れないと駄目なのに、うまく周りと迎合できず性格も暗い、そんな私には明らかに向いていなかった。


変わりたいと、思う。

もっと人に心を開いて、色々な話ができるようになりたい。


帰る直前、私の前任者でもうすぐ辞める予定の、優しかった先輩が追いかけてきてくれた。


もらったのは、小さな箱に入ったお菓子だった。私が来る保証もないのに、私は裏切ったのに、わざわざ用意してくれたのだろうか、そう思わせるような品だった。

もう、私は病気だから、本当は来ない予定だったのに。私が勝手に来ることを予想していたのだろうか、と思ってしまった。


その人も、教えてもらいつつ、苦労していたことが滲み出るような話し方をしていた。


「これ未だに覚えられてないんだよね…」

「難しいよね」

「この作業、もう二度とやりたくないんだよね(笑)」


物覚えが悪くて容量も悪い私に、根気強く教えてくれた。


中身は、書かない。なぜなら本当にあったことだからだ。私は、身バレは怖いし、できない。


私は、変われるだろうか。

上司も、追いかけてくれた先輩も、

「〇〇さんなら、もっと良い職場見つかるよ」

と言ってくださった。


私は、申し訳ないながらも、救われた。その言葉に、救われた。もう続けることはできなかったけれど、それでも。


救われたのだ。


もう仕事なんてないのではないか。

前職の上司にダメ元で相談してみようか。ずっとずっと、会社に向かう電車の中で、メッセージを送るか迷っていた。


ただ、無職になって2ヶ月過ぎた頃、もう後任は決まったとわざわざ連絡があったので、君の居場所はないという意味だったのだろう、と思う。

たとえ帰れたとしても、正社員には、もう戻れないだろう、とも思う。


一度私のように適応障害になった人間は、なかなか社会復帰も難しいと、思う。

今はコロナもある。仕事がなくなった人もたくさんいる。私だけじゃない。私は愚かだったと、今は思う。


ただ、少しずつ、少しずつ、復帰していければよいのではないか、と思う。


仕事が続けられない人は、生きづらい世の中だと思う。


正社員だから期待される、頑張らされる。

非正規社員だからやめさせられる、見下される。


みんな、仕事はキツイと思う。人間関係が悪ければ、なおさらだ。

私のように、うまく人間関係が築けない人間は、特に。


優しい、真面目。そう言われることが多かった私は、今、とても生きづらい。


優しくなくて、真面目でなくてよかった。

責任感が強くても嬉しくなかった。

適応障害になる人間は、責任感が強いらしい。完璧にやろうとして、周りにも気を遣って、頑張ろうとして壊れてしまう。そんな気がする。


でも、人生は絶望することなんて沢山あるだろう、と思う。


生きづらい人は、たくさんいるだろうと思う。


今は辛くても、明日はもっと良くなるかもしれない。

もっともっと自分に向いている仕事を探すしかない。


私は、高度な仕事は向いていないと思ったから、短期でも良いから、何か地道にコツコツできる仕事がしたいと思った。


自信をつけたい。人ともっと怖がらずに関われるようになりたい。


高度な仕事も、過度な期待も、私には、しんどかった。

だから、胸を張って言えるような仕事でなくても、給料が安くても、自分が頑張れるような仕事を見つけたい。


すぐに働けなくても良い、そう思うことにした。ブランクがあくことを、過度に恐れていたが、私は私だ。


人生、きっと、なるようになる。

また傷ついて立ち直れなくなるよりも、今はいろいろな人と話して、いろいろな経験を知って、前を向きたい。


障害をもとから持っているわけでなくても、人から迫害されやすい人はいると思う。弱い人は狙われやすい。私は、弱い。


だから、もっと、強くなりたいと思う。

人と関わるのを恐れていたから、会話にうまく入ることができなかったから、きっと無視されたのだと思う。


ブランクが空いても良いではないか。フリーターだって良いではないか。何歳だって良いではないか。


なにかスキルがあるふりをして、無理矢理正社員になっても、きっと苦しいと思う。辛いと思う。


自分が良ければ、それでよい。そう、思おう。辛ければやめても良い。今は辞めたことを後悔しているけれど、今度はもっとうまくやろうと思っている。


今は辛い。私には、なんのスキルもない。ただ、真面目に勉強してきた。新卒の会社は2年続けた。短いけれど。


それを、誇りに思いたい。自信を持ちたい。強くなりたい。


すぐに働けなくても、良い。

今これを読んでくれた貴方も、何かしらの悩みを抱えていると思う。


仕事は、休職できない人も多いと思う。辞めるしかできなかった、今の私のように。


でも頑張ったのだから、頑張って駄目だったのだから、やめたからといって、自分で自分を責めるのは、やめようと思う。

私を認めてあげられるのは私だけだ。自分から責められたら、本当にしんどくなってしまう。


定職に就ける人も、就けない人も、生きづらいこの世の中で、自分だけは、自分を素晴らしい人間だと思おう。


焦ってもうまくいかない。焦って自分をよく見せて面接を受け、仕事を始めても、辛くなるだけ。


私も自分が自分でいられる場所を見つけるから、何年かかっても見つけるから、だからみなさんも、どうか一人で悩むことがありませんように。















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