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箸休め

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連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
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#今こんな気分

「かこつけて桜餅」

 おつかいの序に、ふと思い立ち久し振りで和菓子屋へ寄った。街中で綻ぶ花の蕾や気の早い桜を見かけるうち、「春」を思い出したのだ。 「春」といえば。その問いにはきっと、百人寄れば百通りの答えが返ってくるだろう。その時々の気分にも左右されるだろう。私は常から気候を意識してしまう人間だから、この頃は三寒四温の只中に居るな、と、まるで台風の目の中にでもいるかのような気分で日々を暮らしている。そうかと言って何ら不自由はなく、寧ろ風を楽しんでいる。雲の変化を楽しんでいる。  人対人に煩

「涙が出てる」

 歳を重ねる程に涙が出やすくなるというのは本当か――  それはさておき涙が出てる。「泣きそうになる」ことはまああるとして、それは実際には泣いてない。涙が出そうで出ない、もしくは、堪えられる位には目元が丈夫ということだろうか・・・ひねくれた言い回しをすれば、出そうだけど泣くほどではない状況だ。しかし今、私の目からは涙が出てる。出て来た。  最近寂しさか、物悲しさが募る余り涙が出る。なんてとっても人間らしい一面をひそかに畳の上で披露する夜更けもあるわたくしですが、たった今の涙

「春待つ時、万物は等しく寒さに身を竦める」

身の回りに於ける人とのかかわりの中で、色々と思う事があった。長らく長編小説の執筆に思考のほぼ全てを傾けていたから、頭の切り替えに、そして頭の体操になった。時々こうして人間らしい苦悩や煩悶を目の当たりすることで、自分も人間社会に生きる一部なんだなと思ったりする。 それは自分が決して悩まない人間という訳じゃないけども、元より与えられた命を生きているこの身であるから、心底悩んでいるようでいて、それを俯瞰する自分も自覚しているのである。 例えるならば、「人生」という船のオールを握

「こわれた」

偽物だった。 わたしがつかまえた月は偽物だった。 だから今日の夜空には月が煌々と輝いています。                           いち この月と、競演しようと思ってたのに・・・ 点と点は木星と金星。三日月と一緒に二月の夜空を彩っていました。

随筆「躍り出る雀」

 寒さに首を竦め、ストーブで指先を温めながら、小説の推敲の傍らでこんな日々を暮らしている。 「亀の読書」  出勤中の車内はできるだけ読書の時間に充てたい。だが新聞も読まねばならない上に、左から太陽がこれみよがしに温めてくるから眠気と戦う羽目になって中々一冊を読み終わらない。これは読書の時間というより、本を持つ時間なのだろうか。そんな馬鹿な真似をしているけどもページは確実に、はらり・・・はら、りと捲れている。今持っているのは先生の「虞美人草」だ。 「虞美人草」は愈々の終盤

「活動時間」

私の活動時間は一日19時間から20時間だ。その内ウルトラマンの3分に相当するところは大体3時間だ。 ウルトラマンの3分ってなんだよという方の為に補足すると、一日の活動時間の内で、ものすごく集中している時間、つまり、その日の自分が最も良いパフォーマンスをみせる時間の事である。 因みに本物のウルトラマン・・・本物のウルトラマンってなんだかよくわからないけれど、本物のウルトラマンの3分は、地球での活動可能時間だ。それ以上はプラズマなんとかが無くなるから戦えないんだって。 ウル

「暮らしと喜び」

 昨年後半、小さな綻びから傷が広がるように、上を向いても上を向いてもどん底に突き落とされる思いがして、挙句自分のミスも重なり出費は嵩むしで、一体何の試練がやって来たのかと思っていた。これはよっぽど大きな、例えば宝くじの一等に当選するような、どかんと大きな幸福でもやってくるんだなとか、そうでもなければ割に合わないものなと鬱屈した精神で考えていた。私に宝くじを買う習慣はない。  だが年の終わりに待ち設けた食事会があって、私は随分はしゃいでいたのだけど、そこで仕事関連の話をし

「今日とて霜」

 池の端にロープで小舟が繋がれて、それが波紋に押されるようにしては行きつ戻りつ浅瀬を揺蕩っている。池の淵の草は冬模様で枯れ草が目立つ。ただ侘しさはない。植物が順当に一度枯れ、また来る芽吹きの季節を待って静かに休んでいるだけに見える。  自然界の色にはおためごかしがないから好い。無理に出来上がった発色もなく、水に打たれれば水に打たれたように、日差しに晒されれば日差しに晒されたように、抜けたり息を吹き返したりとありのままに世界となじんでいるのがわが心に好ましい。霜柱を踏む。

「牛の代わりにちょっといいですか」

 ちょっといいですか。  牛乳って子どもの頃からさも当然の様に学校給食にも出てきますし、何だかどこの家の冷蔵庫にも常備されてる風で、いつの間にか我々の生活圏に浸透して久しいですけど、ちょっといいですか。横槍入れるようで、好きな方には異論反論さまざまある事は凡そ察しも付きます。けれど、ちょっといいですか。  牛乳って牛の乳ですよ。つまりですね、母牛が子牛を育てるために生み出したと思うんです。子牛のために。ですから、幾ら栄養価が高いからとか言い募ってもですね、我々人間の飲み物

「ケチャップの呪いと野菜に埋もれる三年生」

こんにちは、いちです。少しだけあなたの目と耳を傾けて頂けますか。それは八月の事。 わがやのケチャップに呪いがかけられたのです。 ツイッターで一足先に報告したところ、親切な御方が対処法と供養の仕方を教えて下さいました。おおきに、ありがとう。 それからー 人に貰った小トトロが野菜に埋もれたり巻かれたりしててその精巧な出来に舌を巻きました。最近のフィギュアの完成度って凄いんですね。因みに自分のはキャベツトトロです。 この猫は元・母の部屋(現・図書室)に飾られている猫。母のも

「月が笑う朝、僕のそばには花があった。もぐもぐと君と春」

おはよう あのね 大発見 月が夜明けに大地へ降りたら 隣でお花が潤んでた 心がぽっとなる だって君が笑ってくれたから 僕はいつの間にか 春がそばへ来てくれた事を知ったんだ ほら、春だよ ドーナツのお土産ってわくわくなんだって。 メロンパン、満月に食べた。 積まれると嬉しいホットケーキ。 和三盆のぷりん。 クッキー&クッキー お土産には優しさがぎゅっと詰まってる トマトソースでオムレツ。 滋味深い 春の麗しい色香  「先生とキャラメル」 「オーヘンリーとア