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箸休め

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連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
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#物書き

「あの日タエ子が触れた紅花はここにあった―山形・高瀬の夏に染まる旅」

2023年7月 梅雨の明けきらない山形にて 念願の紅花畑へ降り立つ。 触れてみたくて手を伸ばす 硬くとげのある葉が、チクリと私の肌を刺激した。 「そうか、これがあの日タエ子が触れた紅花の生きた感触か・・・」 痛くて、嬉しかった この夏のはじまりに、私は一つ夢を叶えました―― 小学生の頃、スタジオジブリの映画「おもひでぽろぽろ」を見て、紅花を知った。見てみたいなあとぼーんやり思っていた。 いつか見てみたい。は、大人になりかけて、 見に行ってみたい。に、変わっていた。

「ひとつぶあるき」

こんばんは 焦っちゃだめ 一つずつ。 一度に沢山はできないから。手も二つしかないし、脳味噌なんて一個しかないの。 焦っちゃだめ。 沢山どころじゃないの、一度に一つずつしかできないの いいの、大丈夫。それでも一つは確実に出来てるってことだから 取り敢えずさくらんぼ食べるわ 凄く美味しいの はあ~ 今日も幸せだわ。 スーパーで売ってるさくらんぼにしては粒の大きな山形のさくらんぼに出会いました。いつか木箱に入ったさくらんぼを食べてみたいです。 いつもいちnote

「だから人間」

なんでこうなっちゃうんだろう。 何回同じ失敗と反省を繰り返すんだろう・・今年これで、何回目? ああもうやんなっちゃう。 自分が、嫌いだ。 となったと同時に、物凄く真面目に、 (真剣に執筆しよう、原稿がやばい、締め切りに間に合わん) と思いました。 だから私、今毎日真剣に執筆しています。仕事よりも真面目に取り組んでいます。書くことが本業なのです。現実逃避をやめて、一生懸命になっています。時々思い出して「うっ」となって等いないと言えば噓になりますが、そんな場合じゃないの

「あずきを炊いた、そんなGW」

 懐かしさからベビースターラーメンの4連パックを買った。今日は一番好きな、というよりこの味の為だけに買ったんだけど「鶏ガラしょうゆ味」を食べた。  夜。  Tシャツの胸ポケットにベビースターの欠片が三本入ってる・・  それに今気づいた。  子どもか    そんな他愛もない連休を過ごす私。  お休み二日目の昼、かねてより機会を伺っていた「あんこ」作りを実行した。小豆を炊くのはかんたん。あんこはすぐにできる。できるのだけど、中々作れずにいた。  春分を逃した。季節と共に楽

「すいー、すとんっ」

大人になって登ったら、滑り方忘れてました。すべり台。 春うらら~ なんて木々を見上げる間に四月が終わりました。日差しは随分穏やかに、花咲き誇る街道はみるみる内に新緑に染まりつつあります。風が嬉しい。そんなお昼。月が恋しい。そんな夜―― どなた様もこんにちは 月に一度の振り返りエッセイのお時間でございます。お付き合い頂ければ幸いです。 #ほろ酔い文学 と #私の作品紹介 で頂きました。 勤め先でカクテルを提案する機会がありまして。ふと思い浮かんだ空想を掌編に落とし込んでみま

「日和写真館」

春の陽気に誘われて、足を運んだ四月のよりみち。気ままに向けたカメラの向こうを、どうぞ。 けれどもまあ、花より団子。                           おわり

「竹の子とキャラメル」

 スーパーで竹の子を見つけた。でんと大きな竹の子が、今年はよく並ぶ。竹の子は好物だけれど、灰汁抜きをして調理する手間を割けない。作ればさぞ美味しいだろうと、生の竹の子を横目に立ち去る日々を暫し繰り返している。竹の子は大変美味しい、春を戴くに持って来いの山の恵みなのである。    むかしむかし、私が今よりもっと小さな小学生だった頃の話だ。  当時は両親が小さなレストランを経営していた。店の常連客に、きのこの先生と呼ばれる先生が居た。そのきのこの先生と私の家族とで、ある年の春

「とんとん拍子、その調子」

 すっかり春めいた日差しの中、あちらこちらで新芽が吹いて、世界は一息に色彩豊かになりました。  皆さまこんにちは 今年も桜が綺麗です。  待ち設けた楽しみがあると、月日の過ぎるのが早いと感じます。さて、毎月恒例のnoteからのお知らせを振り返るお時間です。投稿数は少なく、長編小説連載中でもありまして、お知らせは頂けないかもしれないと思っておりましたが、ちょっとだけお付き合い頂けますと幸いです。 #振り返りnote で頂きました。韻を踏んで遊んでいます。言葉はリズムです。な

「満開の桜を知らない、代わりに弱さを知る」

「切に自愛を祈る」  ・・・これは夏目先生が人に送った手紙の言葉だ。    頑張って下さいと言うよりも、活躍を願い励ますよりも、御自愛下さいと言うよりも、こんこんと祈るような優しさに満ちた言い回しだと思ったから、早速真似をした。自分が使うには背伸びだったかも知れないけれど、自分が知る以上に頑張っておられる方に、頑張れよりも似合う言葉を届けたいと思ったのだ。因みに自分は頑張ってと言われると頑張る人である。  未だ四月を迎える前だというのに、今年の桜は気が早い。否、桜の所為に

「ぐるりの春」

ラッパ水仙が見上げる空には、刷毛で伸ばしたようなすじ雲が広がっています。 三月の半ば、穏やかな晴れの日の一枚です。 毎年お世話をしていないのに、季節が来ればぽんと蕾をつけて、寒さの残る風に耐え、こうして陽気に花を咲かせては、我が家に春のはじまりを告げてくれます。今年はどうしたことでしょう、6つ子です。あんな土壌で、よくぞ沢山咲いたものだなあと思いましたけれど、そういえば去年、里芋を育てた土を入れ替えの為に敷地内のあちこちへほいほいかけて回った事を思い出しました。その効果な

「こわれた」

偽物だった。 わたしがつかまえた月は偽物だった。 だから今日の夜空には月が煌々と輝いています。                           いち この月と、競演しようと思ってたのに・・・ 点と点は木星と金星。三日月と一緒に二月の夜空を彩っていました。

随筆「躍り出る雀」

 寒さに首を竦め、ストーブで指先を温めながら、小説の推敲の傍らでこんな日々を暮らしている。 「亀の読書」  出勤中の車内はできるだけ読書の時間に充てたい。だが新聞も読まねばならない上に、左から太陽がこれみよがしに温めてくるから眠気と戦う羽目になって中々一冊を読み終わらない。これは読書の時間というより、本を持つ時間なのだろうか。そんな馬鹿な真似をしているけどもページは確実に、はらり・・・はら、りと捲れている。今持っているのは先生の「虞美人草」だ。 「虞美人草」は愈々の終盤

「要救助者発見!周囲の安全確認をして救助を開始します!!」

 自宅にいるときは近所の病院、または交番。職場なら近所の交番にある。  自分の居る場所から一番近いAED(自動体外式除細動器)の場所を、私は無意識に確認している。  数年前、AEDの使い方を教わりたくて、地域の公民館で開かれる救急救命講習に参加した事がある。救急救命講習と言えば学生時代、心臓マッサージや人工呼吸の方法を教わったものだが、随分昔のことで、人命救助の適切な処置方法も年々変わっている。AEDの普及もその内の一つかと思う。  そもそもAEDとは何か。簡単に言

「活動時間」

私の活動時間は一日19時間から20時間だ。その内ウルトラマンの3分に相当するところは大体3時間だ。 ウルトラマンの3分ってなんだよという方の為に補足すると、一日の活動時間の内で、ものすごく集中している時間、つまり、その日の自分が最も良いパフォーマンスをみせる時間の事である。 因みに本物のウルトラマン・・・本物のウルトラマンってなんだかよくわからないけれど、本物のウルトラマンの3分は、地球での活動可能時間だ。それ以上はプラズマなんとかが無くなるから戦えないんだって。 ウル