マガジンのカバー画像

箸休め

137
連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

「君の隣、枯葉舞う小道、今日も筆を執る」

 朝から風の強い日だった。夕べ月を隠した厚い雲は、一晩かけて町に深い秋を運ぶ雨を降らせた。気温が一息に下がると云う。窓からの風に吹かれては、夜空に想い馳せて、月を眺めて、あの人の平穏を願っていたけれど、もう空気が冷たくて、開け放しのままでは、おでこが冷たいってさ。  今日は手紙を書こう。  ランニングシューズへ足を入れて、玄関前でストレッチ。少し間が空いてしまったから、怪我の無い様にしよう。道の脇の、あのどんぐりはどうなったろうか。薄は、山萩の花は、まだあるだろうか。天気

「あの子どこの子、よい実り」

 寒露を迎え、朝晩だけはどうやら涼しい時節です。昼間との寒暖差がありますが、皆様いかがお過ごしですか。  いつものランニングコースにて。久しく散歩へ出掛けられず、刻々と移り行く季節を、ただ走り抜けて行くだけかと、首をきょろきょろ、足元ちらちら、目移りしておりましたが、道中面白い発見が続きます。これはどうでもカメラの出番です。今日のランニングはカメラ小僧バージョンで行いました。走っては止まって撮影。散歩のおじいさん、おばあさん、おはようございますの、会釈。果たして有酸素運動に

「御都合主義による本買い」

出会いは突然で、手に取れるは必然、我が心に響くは当然の導き。嗚呼本が読みたい。心置きなく広げたい。君はまあまあ頑張ったよ、これで本屋で出会えたとして、それはもう運命だよ、買えばいいよ。 そんな会議が自分集合体の内々で行われたらしく、気が付くと本屋へまんまと流れ着き、気が付くと読みたかった本に出会えていた。しかと手の内へ握り締めてレジへ向かった。 遡る事・・・まあ、忘れてしまったけれど、こんな風に出会った訳である。 先ず「高慢と偏見」を、もわりーさんのこちらの記事で知って

随筆「先生と命と読書」

 通勤の僅かな時間を読書に充てて久しい。それも新聞を読んだ後の事である。何しろ自室に籠ると直ぐに創作へ入りたがるので、本を広げる時間が自ずと限られてくる。それで昨年から定期的に通う歯医者の待ち合いであったり、たまに電車へ乗る機会があれば、寸暇を惜しんで本を開く。そうして自分の目はホームの足元と文字の隙間に落ちる。或いは天然自然と紙の狭間を行き来する。  こうして得た貴重な時間に開く本は大抵が先生と決まっている。先生と一口に、自分にとり然も当然の如く唯一人を示して得意に語って