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ありがとう、不器用な善人さん

去年一年間お世話になった精神科の先生がいる。

少しその人のことを思い出していた。

全くなんの前触れもなく退職されてしまったが、理由は知らない。

まずこれからの人生で関わることはない。

初診の印象こそ頼りになる先生だったけど、回を重ねるごとにどんどんボロが出ていくのが面白かった。

自分で言ったことも私が言ったことも忘れてしまう。

そもそも私の状況も状態も全然把握できていない。

それもまあそのはず、あの人は本当にたくさんの患者を抱えるパンク状態!

私が通ってる病院ではデイケアは終了してしまったがそれを把握してなく、診察時に私にデイケアを勧めてきたりする。

栗「デイケア終わってますよ」

先生「えっそうなの」

初診の時に飛び降り自殺レポの話をして、「うわ〜読みたい!」「面白そう!これは買いだね!」と言っていたが結局読む暇などなく、「読む」と言ったり「読まない」と言ったりしていた。

最終的には読んでくれた。

ありがとうございました。

先生はもともと内科医だった。

大きな病院に勤めていて、そこでたくさんの自殺未遂をした若者たちを見てきた経験がある。

それを踏まえて、私に
「あなたは、運が良かったんです」
と一言だけ言った。

なるほどね…なるほどね……運が良かったのは知ってる…!

他の、もっと感想はないのか!

あと
「ちゃんと自分が客観視できています」
と言ってた。

不満すぎて私から、
「面白かったですか?」
と聞いた。

「面白かったですよ」
と先生は言った。

ちなみに読む前は
「診察時間外で読むの!?お金もらえないのに!?5000円くらい貰えるなら読むけど!読むの大変だからA4の紙1枚にまとめてきてよ!」
とまくし立てる始末で、患者の前でそんなに動揺しないでほしい。

すぐに動揺が態度に出てしまい、機嫌のアップダウンもやはり表れる。

報告書を渡した時にめちゃくちゃ面倒くさそうな顔をしたりもする。

私が兄の家で、姪と甥と遊んでる写真を何度か見せていたら、何を思ったか
「あんまり通い詰めたりすると…兄の奥さんとトラブルになったりするから…女の人というのは二面性があるから…僕は実際にそういう現場を見た」
ということだった。

私が
「子どもたちと遊ぶのは楽しいけどすごく大変だ」
と言ったところ、
「それをやってるんですよ!兄の奥さんは!」
となった。

私が何に見えてんだこの人。

私は呼ばれた日にしか行ってねえよ!

今考えると、一連の言葉は全部私のためではなく、100%兄の奥さんのために言っている。

私の診察中に私以外の人間の心配をしている。

私も決していい患者だったとは言えない。

そもそもADHDを治療する意志がなく、社会復帰の意志もない。

そういうわけだから先生も私をピーターパンと呼んだわけだが、その時もやっぱりかなり動揺なさっていた。
「治したくないんでしょ!?ピーターパンじゃないですか!子供でいたがってる!親が死んだらどーすんだ!」
と言ってた…いいところもたくさんあるよ。

私が去年、ライブに行くことを目標に生きていた時、ライブから帰ってきた私は脱力してしまった。

そのことを相談したら先生は
「誰かがライブをやるのを待ってるんじゃなくて、能動的な目標を作りましょう」
とおっしゃった。

栗「わかりました!出版活動してるからそっちを頑張ります!」
となった数ヶ月後、いざ新刊が出てからそれを報告したが、先生は第一声で
「働く気はありますか?」
と言った。

「ありません」
と即答した私もダメなんだけど、あの時あのタイミングで、患者の頑張りを一言も褒めないでやや詰問気味に診察を始めるのはやはり、まずい…。

完全にミスってます先生。

(一応その日は「今日は患者がたくさんいるので診察時間があまり取れません」と前置きはしていた)

まあとっとと本題に入りたかったんだろう。

親が死んだら生きていけないのは事実だしね。

でもちゃんと飛び降り自殺レポ読んだ?

感性が鈍いんじゃねえの!?(←これぐらい思った)

先生は褒めるのが下手で、一刻も早く私にまともになって欲しくて、本当に善意の人だった。

でも超不器用だった。

医者にとっては…致命的な弱点だと思う…たぶん精神科医向いてない…。

そんなことだから急に消えるんじゃ…私と先生の相性もだけど、まずあの病院と先生の相性は最悪だったのかもしれない。

お元気で。

お世話になりました。

ありがとう、不器用な善人さん。

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